兵庫縣の神戸市立博物館の特別展「Colorful JAPAN 幕末・明治手彩色写真への旅」を觀る。
幕末・明治の激動ニッポンにもたらされた“冩真”と云ふ文明は、やがてニッポン人からも優れた冩真技師が誕生するが、この時の冩真にはまだ、色彩と云ふものがなかった。
開國間もないJAPANの風景と文化を目の當たりにした異國人たちの、その美しい印象をより實際に近い形で本國へ持ち帰りたいとの欲求に應へるべく、技師たちはモノクロ画像に繪の具で色を付けた冩真を作り上げ、それぞれの冩真館から賣り出した──
(※案内チラシより)
實景へ別に手で彩色したこれらニッポン風景は、ニッポン人ならではの繊細な仕事ぶりから、総天然色版とは全く異なる、ある意味もふひとつのニッポンを生み出し、神秘的に彩られたその東洋の國は、ニッポン人である私ですらも、異邦人になったかのやうな錯覺に陥らせる。
(※同)
しかしそこに映ってゐるのは、確かに私が生まれるはるか昔のニッポンであり、私はその後のニッポンに生まれてゐるのだ。
(※同)
これほどまでに美し“かった”國に!
私は、かうした美しくも妖しいもふひとつの世界を生み出せた人々のあとに生きてゐることを、誇りに思ふ。