神奈川縣立歴史博物館の特別展「仮面絢爛」を觀る。
中世の日本では、ホトケの有難さを衆庶へ視覺的によく分からせて廣めるため、地獄に堕ちて鬼の責苦に遭ふ亡者を觀世音菩薩が現れて救ふ筋立ての寸劇がよく行はれ、その際に使用された菩薩の尊顔を象った面や、惡鬼の面が各地の寺院に傳存してゐるが、
(※「菩薩面」)
現在ではそのほとんどの藝能が廢絶し、遺された面たちはかつて佛法行事が權力者階級の示威行為に利用された時代のあったことを、令和現在(いま)の私たちへその形相の奥から語りかける。
さうして寺院藝能から民俗藝能へと變容した假面劇は、やがて舞樂面であった“陵王”が雨乞い神事に転用される例も生まれ、
(※舞樂面「陵王」)
そのために頭部の獣類がウサギの耳に削り直される例も現れるなど、民衆のしたたかとも云へる應用力を面白く觀る。