迦陵頻伽──ことだまのこゑ

手猿樂師•嵐悳江が見た浮世を気ままに語る。

修羅の幻惑。

2019-05-14 19:46:10 | 浮世見聞記
京マチ子さんの訃報を知る。




数十年前、祖母の家のテレビで見た映画「羅生門」が、京マチ子さんを目にした最初だ。


なんて綺麗な女性(ひと)だらう!──


そのときの強烈な印象は、その後この映画を名画座などのリバイバル上映で何度観ても、変はることがなかった。


それだけに、「羅生門」と云ふと世評は彼女には殆ど触れず、判で捺したやうに三船敏郎ばかりを絶賛することが、私は大ひに不満だった。

無駄にセリフをがなり立てて、うるさいだけではないか──

その印象も、現在(いま)なほ変はらない。



私が少年時代を過ごした街の映画館が、五十年余りの歴史に幕を閉じることになった際のサヨナラ上映会でもこの作品が選ばれ、私は二度足を運んだ。



上の写真はその時のチラシの一部だが、京マチ子さんにはさうした思ひ出もある。



「地獄門」や「黒蜥蜴」など、その後も名画座で全盛期の作品をいくつか観てゐるが、やはり大の男を圧倒し、そして幻惑させる激情をおっとりとした少女の面差しの裏に隠す若妻役を好演した「羅生門」こそが、



私にとっての京マチ子さんの“代表作”だ。





合掌。





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