横浜開港資料館で、「カメラが撮らえた横浜─古写真にみる開港場とその周辺─」展を見る。
開港後のヨコハマを記録した貴重な写真は、これまでこの資料館の企画展でたびたび目にしており、今回はその認識を深める心で出かける。
異國に向けて港が開かれ、陸に揚がった異國人が生國を模した居を構へたことにより、ヨコハマはそこだけ異國が出現したやうな、不思議な情緒を醸し出す“異界”として、近代世界へ足を踏み出す。
そんな異界も関東大震災で消滅し、その後身も第二次大戦の空襲で破壊され、破壊した張本人たちによる接収を経て、開港以来の異國情緒をまだ微かに残しながら、御代の移った現代へとつながっていく──
その発端が、この企画展で再び紹介されてゐる、古写真のなかのヨコハマなのである。
しかしこの時代のヨコハマは、もはやほとんど遺ってゐない。
ヨコハマであって、横浜ではない。
都市の発展とは、同時に多くの“大切なもの”を棄てていくことでもある。
まう決して取り返せないそれらの上に、現代の我々が享受する利便性は成立してゐる──
そのことを、ここに改めて思ふ。