迦陵頻伽──ことだまのこゑ

手猿樂師•嵐悳江が見た浮世を気ままに語る。

木と緑が彩る開港場。

2019-05-28 16:23:19 | 浮世見聞記


横浜開港資料館で、「カメラが撮らえた横浜─古写真にみる開港場とその周辺─」展を見る。


開港後のヨコハマを記録した貴重な写真は、これまでこの資料館の企画展でたびたび目にしており、今回はその認識を深める心で出かける。


異國に向けて港が開かれ、陸に揚がった異國人が生國を模した居を構へたことにより、ヨコハマはそこだけ異國が出現したやうな、不思議な情緒を醸し出す“異界”として、近代世界へ足を踏み出す。

そんな異界も関東大震災で消滅し、その後身も第二次大戦の空襲で破壊され、破壊した張本人たちによる接収を経て、開港以来の異國情緒をまだ微かに残しながら、御代の移った現代へとつながっていく──


その発端が、この企画展で再び紹介されてゐる、古写真のなかのヨコハマなのである。


しかしこの時代のヨコハマは、もはやほとんど遺ってゐない。


ヨコハマであって、横浜ではない。



都市の発展とは、同時に多くの“大切なもの”を棄てていくことでもある。


まう決して取り返せないそれらの上に、現代の我々が享受する利便性は成立してゐる──


そのことを、ここに改めて思ふ。




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