迦陵頻伽──ことだまのこゑ

手猿樂師•嵐悳江が見た浮世を気ままに語る。

聲の雲路をしるべにて。

2019-05-13 21:56:29 | 浮世見聞記
その世界がまだ夢の國だった頃、道しるべになるだらうと信じて手に入れた記録を、かつては処分も考へた資料の山から、やうやう見つけ出す。現在では決して逢へない藝が、そこには記録されてゐる。己れのそのときの気分で、記録媒体としての価値は上がったり下がったりするが、しかし記録されてゐる藝そのものは、けっして揺らぐものではない。人間が下す評価なんてものは、結局ニンゲンの自分勝手な尺度でしかない。その世界が夢の . . . 本文を読む
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親に孝あるゆゑにより。

2019-05-12 20:49:46 | 浮世見聞記
久しぶりに、両親に会ひに行く。「母の日」と重なったのは偶然だが、それも日頃の親不孝を償へ、といふ天の思召しか。私の人生を、いつも無条件に支ゑてくれるのは、いつも親である。そんな身近のありがたさに、いつだって気が付かない不孝は、子の因果か。プレゼントに、ぴったりの物を見つけた。いよいよ、孝養を尽くせとの思召しなるらん。覚むると思へば 泉はそのまま尽きせぬ宿こそ めでたけれ。 . . . 本文を読む
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御印の御姿。

2019-05-11 11:07:44 | 浮世見聞記
御朱印をめぐる数々のトラブルにつひて、ラジオ番組で或るコメンテーターが、「いまではタダのスタンプラリーになってゐる」と喝破してゐたが、本當にさうだな、と思ふ。もともとは粛々といただくものであったはずの御朱印が、何者かがエンターテイメントとしてけしかけてから、ただのポイント集めと同等の、俗臭漂ふイヤな印象がいっぺんに付ひてしまった。煽る者がゐて、煽られるがまま何の考へもなく、すぐに乗せられる有象無象 . . . 本文を読む
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てつみちがゆく──玉電デハ80形

2019-05-10 18:46:46 | 鐵路
三軒茶屋のキャロットタワー三階にある生活工房ギャラリーにて、「祝!世田谷線50周年 世田谷線にのって展」を見る。かつて、渋谷~二子玉川園を約40から50分かけて結んでゐた、東急の路面電車“玉電”。ちょうど五十年前の今日にあたる昭和44年5月10日に玉電は廃止となったが、三軒茶屋から分岐する支線だった下高井戸線は、全区間が道路上を走行しない専用軌道であることが幸いして存続 . . . 本文を読む
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節穴で 前よし 横よし 後ろよし。

2019-05-09 09:23:51 | 浮世見聞記
江州で、園児二人の命を奪った中年の女ドライバー曰く、「前をよく見ていなかった」私は運転免許証を持っていないので、道では運転者を傍観する立場だが、実際に上の言葉そのままの輩を、よく見かける。よく、といふことは、つまりそれだけナニも考へていないでハンドルを握ってゐる者が多い、といふことだ。もっとはっきり言へば、前回の記事と同じ表現だが、『アタマを使っていない』といふことだ。免許を返上しなければならない . . . 本文を読む
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出無精の釈明。

2019-05-08 19:56:24 | 浮世見聞記
数十年前の学生時代、日本の傳統藝能に興味を抱き始めた頃に録り溜めてゐた猿楽のVHSテープを、久しぶりに引っ張り出す。幸い、画質も音質もほとんど劣化していない。そこに映ってゐるのは、シテ方、ワキ方、囃子方、地謡方、その総てが最高の布陣で演じられゐる舞台。いまは亡き演者も、そこでは健在だ。近日、能楽堂へ出かけるつもりだったが、その懐かしい映像を見ているうちにすっかり満腹になり、その予定をやめる。さうい . . . 本文を読む
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よって普段のごとし。

2019-05-07 10:44:42 | 浮世見聞記
ミカドの年齢的問題による人事異動、それに連動した改元──ただそれだけの話しに、有象無象は「メデタイ、メデタイ」と、所詮なんの考へもなく浮かれ立ち、出て来なくてもよいのにゾロゾロと、休み呆けのうろたへ眼で棲家を這ひ出して、暑気に当てられ昏迷する間抜けさよ──知ったかぶりは知ったやうな面相(かほ)をして、無闇矢鱈と“明日”を論ずれど、もとより案ずるにァ及ばねぇ。「なァに、おめぇなんざァその時代(とき) . . . 本文を読む
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