迦陵頻伽──ことだまのこゑ

手猿樂師•嵐悳江が見た浮世を気ままに語る。

白い負域。

2019-05-15 17:01:57 | 浮世見聞記
面会者として、町外れの大病院を訪ねる。


一階ロビーは外来患者で混雑しており、ここがこの町でいちばんの繁華街ではないかと思ふ。




それぞれの抱へる人生が、色濃く剥き出しにされて、それがそのまま病ひの根源となる──


本當の薬は、どこにあるのだらう……?



先輩に補助されながら手順を追ふ、見習ひらしき若い看護師の白くて細い腕に、

いづれ自分も老爺になったら、今はまだ生まれてもいない人に命を恃むことになるのだらうか──

と考へ、ひどく心許ない気分になった。



そして、ふと医者嫌ひだった伯父たちのことを思った。




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