ミカドの年齢的問題による人事異動、それに連動した改元──
ただそれだけの話しに、
有象無象は「メデタイ、メデタイ」と、
所詮なんの考へもなく浮かれ立ち、
出て来なくてもよいのにゾロゾロと、
休み呆けのうろたへ眼で棲家を這ひ出して、
暑気に当てられ昏迷する間抜けさよ──
知ったかぶりは知ったやうな面相(かほ)をして、
無闇矢鱈と“明日”を論ずれど、
もとより案ずるにァ及ばねぇ。
「なァに、おめぇなんざァその時代(とき)まで、生きてちゃいねぇやな」──
そんな無駄に長いだけの乱痴気連休もやっと終息し、街は常の流れとなり──善し悪しはさておき──、やうやう人心地つく。
これだけ異國と異人にかぶれた當世に、いまさら「日本らしい文化」云々など、白々しいばかりの空言なり。
私はもちろんこの御代に何ら気持ちは無く、
いつもの道を、
いつもの通りに、
今日も歩くだけのことである。
駅の構内に、燕が巣をつくる。
五月になれば、必ず訪れる福の神。
人間が作為した浮世を超越した存在。
自然の常に、人間の思惑などなんら意味を為さない。
それを知る幸せにあやかる嬉しさよ。