東京・渋谷松涛美術館で開催中のロベルト・クートラス展に行ってきました。
写真は展覧会のポスターです。一枚の絵画のように見えますが、実は12×6センチの携帯のカバーくらいの大きさのカードに描かれた作品で構成されています。
展覧会の作品の多くが、小さなカードなのですが、油絵の具を厚塗りした上にユニークな顔や植物や動物や模様が描かれ、塗り重ねられられ削られ汚され、不思議な世界を生み出しています。しかも、この小さなカードが集まった時に、まるで詩人の言葉の集積のように、深い味わいのある世界が作り出されるのも不思議です。
貧しさと孤独との戦いの中で描かれたという作品群ですが、その根底にあるやさしさ暖かさのようなものが感じられる、素敵な展覧会でした。
ロベール・クートラスは、亡くなるまでのおよそ17年間、カルト(carte)というカード画の制作に没頭しました。縦12cm×横6cm程に切り抜いたボール紙に、油絵具で、人の顔をした蝶やうさぎ、足の間から顔を覗かせてこちらを見ている人、暗号のような文字など、彼の心の中にある物語を毎夜描き、それらを「Mes Nuits(僕の夜)」と呼んでいました。
「クートラスはロマネスク時代の存在なんだよ。今の時代はこうした孤独な夢想者、天才的な職人そして心底からの詩人なんか見向きもしない。われわれの時代は、詩人たちを必要としていない。」と彼の友人は語ったそうですが、きっと今もわずかに存在している、“アナーキーで哲学的で、内気で孤独な冒険者たち”のために・・・(引用)、とこの企画者は企画の意図を語っています。
3月15日まで東京渋谷松濤美術館
入場無料といのもうれしいです。