オランとは人のこと、ウータンとは森のこと。オランウータンは森の人の意味。
「オランータンに会いに行かない?」
そんな誘いにつられて、軽い気持ちでマレーシアまで出かけたのが、今回の旅の始まりでした。特別にオラウータンに興味があったわけでも、オランウータンが好きだったわけでもないのですが、人間に最も近い動物と言われる大型類人猿のオランウータが、どんどん絶滅してしまって、今では東南アジアのボルネオ島とスマトラ島にしか生息していないことを知り、この機会を逃したら絶対に彼らと出会うことはないだろうと思ったのでした。
保護区の中のオランウータンです。担当の人が食事の合図をするとどこからともなく集まってきます。
オランウータンは、深い森の広がる熱帯雨林(ジャングル)の中で暮らす森の住民です。高さ70メートルを超える巨木の樹冠が彼らの生活空間で、そこで暮らすオランウータンと出会うためには、数日をかけて深いジャングルに入り、ツリークライミングで彼らの棲む高い樹冠に登り、そこで彼らと出会える日まで何日間か待つ、それが大自然の住民との出会いの本当の礼儀です。
ところが、近年、大規模に森を伐採してアブラヤシ等を生産するプランテーションが進みました。その結果、森は100年前の10分の1に減ってしまい、そのためにオランウータンの母親の育児放棄が始まり、森林伐採によって母親とはぐれた孤児のオランウータンが後をたたなくなったそうです。保護センターがうまれたのは、そいいった背景があったからでした。
最初の保護ステージの中、ロープで遊ぶ子供のオランウータン
コタキナバル・リゾートの シャングリラ・ ホテルが私たちの宿泊地。そこからバスで45分ほど行ったところに、ジャングリラリゾートというものがあり、そこの森の奥まったところに「オランウータン保護センター」がありました。そこで手続きをして森の中で入っていくと、サンダカンにある公の保護センター「セピロウ・オランウータン・リハビリテーションセンター」と共同して、サバ州の孤児になった子供のオランウータンを保護しているという森の一角に行きつきます。 自然の森に近い状況の中で子供のオランウータンを飼育し、再び森に返す活動の第1ステージです。成長の段階に応じて森の深度を増して、3段階を経て本当の自然の中に返す仕組みになっているとのことでした。それにしても、大変な労力と月日を要する仕事です。
見学場所はその第1ステージ。そのしぐさの愛らしさは人間のこどものそれと同じです。この貴重な生き物を失うことは、人類にとっても大きな損失にちがいないと思えてきます。人類の叡智が求められます。
*ちなみに、プランテーションとは、大規模な工場生産様式を取り入れて、広大な農地に大規模な資本を投入して、単一作物を大量に栽培する生産方式のことで、マレーシアでは サトウキビ カカオ アブラヤシ ゴムなどが,こうした方法で生産されている。日本はそれらを大量に消費する消費国である。世界中の珍しい食べ物が日常的に手に入日本の食卓の背景には、そうした事情が隠されていることを知らなくてはいけないと思う。