秋の宝石ー2 イワシャジン
イワシャジンを見ると、私は、なぜか高貴でうつくしい女人を想い浮かべるのです。
そう思い込むまでにはいくつかの理由があって、
その第一が、源氏物語に登場する「むらさきの君」です。
やんちゃで利発な少女「若むらさき」が、知的で美しい女性「むらさきの君」成長していく、
その象徴を「むらさき色」に感じていました。
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もう一つ、こちらは万葉集、有名な 額田王と大海人皇子 の相聞歌、
あかねさす むらさき野いき 標野ゆき 野守はみずや 君が袖ふる
むらさきの にほえる妹を 憎くあらば 人妻ゆえに 恋ひめやも
この歌の壮大なシチュエーションを、
紫色の花の咲く野に馬を走らせる大海人皇子が、走りながら白い衣の袖をひらりと振って
額田王に合図を送っている、とロマンチックに想像していたのです。
あかねさす紫野も 茜色(赤むらさき色) の花の咲く野と思っていたのです。
ところが、後になって「紫草」の花は白い花だと知ってがっかり、困惑したのでした。
貴人の秘めたる恋の色は、やっぱり「むらさき」でなけらばいけません。
亡き母の 晴れの日の色 イワシャジン