あっという間に二月です。
日差しが少しずつ長くなって、近くの山の木々の間からこぼれてくる光は、もう春のそれです。
暖かな冬でしたが、それでもさすがに草花は茶色に枯れて、庭はすっかり休眠状態でした。
二月の声を聴いて、一番に名乗り出たのは、今年もやっぱり白いクリスマスローズでした。
無垢な白い美しい花です。
花たちを見ていたら、ヘッセの手紙を思い出しました。
詩人が、もしかしたら明日にも破壊されるかもしれない世界の真っただ中で、
自分の語彙を苦労して拾い集め、選び出して並べることは、
アネモネやプリムラや、今いたるところで成長している草花がしていることと全く同じことです。
明日にも破壊されるかもしれない世界の真っただ中で、
花たちは念入りにその葉や、五弁あるいは四弁あるいは七弁の花びらや、
なめらかな、あるいはギザギザの花びらを、すべて精確にできるかぎり美しく形づくっているのです。
(息子マルティーン宛 1940年4月) (ヘルマンヘッセ・庭仕事の愉しみより)
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木も草も花も虫も、懸命に生きている者たちの命の営みは、心を切なく動かすのです。