四月です。庭の樹々がいっせいに笑い、花々が歌い始めました。
庭の山法師です。芽吹いたと思ったらあっという間に新緑に輝いています。
山法師の下では、十二単がぐっと背をもたげて、紫色に模様を描いています。
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木の芽ぶきと紫色の花を見ていたら、平安時代の「襲(かさね)の色目」を思い出しました。
襲(かさね)の色目とは、何枚かの衣装を重ねて着る時の配色のルールのようなもので、その一つに萌黄色と紫色があるのです。
平安時代、高貴な女性の正装は十二単でした。十二の色を美しく襲るのです。
その襲(かさね)の配色の基本にあるのが、季節ごとに咲き競う花や木の芽の色合いでした。それを衣装や調度・和歌や手紙の中に細やかに表現ることが、雅な女性の教養として問われたのです。その文化の基調は自然風土の美を尊ぶ精神でした。自然の中で移ろい行く草木や花の彩を捉え細やかに表現すること、それが「和の文化」だったのです。その表現の難しさは、昔、国語の教科書で習った和歌や手紙文でご存じと思いますが、色についても、その名称や種類は、今とは桁違いに多いのです。
雅な文化の豊かさには驚かされます。が、よく考えてみると、私たちの血の中には知らぬ間にそんな美の意識が入りこんでいるらしく、ほら、こんな風に庭に咲く花や木の色あいをみて感動してしまう・・・のです。
まさおなる空よりしだれさくらかな 安富風生
(こちらはピンクとブルーの襲の色目?)