☆黄金のアデーレ 名画の帰還(2015年 アメリカ、イギリス 109分)
原題 Woman in Gold
監督 サイモン・カーティス
☆松方コレクションはどうなるんだ!
実にハリウッドらしい裁判劇で、ナチスが略奪した名画までも裁判によって決着がつけられるというのはなるほど国際間のわだかまりをおもえばより良い方法なのかもしれないね。ヘレン・ミレンの演じるマリア・アルトマンの叔母さんがクリムトのモデルになっていたことから、その名画はいったい誰の所有なのかといった裁判なんだけど、ただ、そもそもマリアの叔母アデーレがクリムトに頼んで絵を描いてもらったのか、それともクリムトが絵を描く際のモデルとなってほしいとアデーレに頼んだのかで、誰の所有物なのかってことは変わってくるんだろうけどね。
どうやらこの場合は、もともとアデーレの所有していた肖像画だったようだから、それをベルベデーレ美術館が保持し続けたいとおもうのはちょっとばかり納得できない。だからアルトマン家の所有なんだけどそれを常設展示することを条件に返還されるというのはまあわかる。ただその後、別な人物ロナルド・ローダーの所有となっていくのがどうもね~っていう気もしないではない。なにせ、オークションで落札された際の価格は1億3500万ドルっていうんだから。
ただまあ、マリア・アルトマンの過去の清算っていうかトラウマの払拭と、それに手を貸した青二才弁護士の人間的な成長譚という捉え方をすれば、これはこれで充分に楽しめる。
映画の感想としてはそれでいいんだけど、ぼくら日本人はちょっとそうはいかない。小説『天国の門』にあるように松方コレクションがあるからだ。現在、ルーブル美術館にあるフランスに残されていた松方コレクションについてはいったいどうしてくれるんだって、そんなふうにおもうんだよね。