◇グランド・ジョー(2013年 アメリカ 117分)
原題 JOE
監督 デヴィッド・ゴードン・グリーン
◇ニコラス・ケイジのいちばん地味な作品
なんじゃないかっておもえるくらい、前半の単調なつまらなさといったらない。それが後半なんとか持ち直して佳境へ到るのはたぶんニコラス・ケイジあってこそなんだろね。これが無名の役者だったら、もう堪えられなかったんじゃないかと。
いやまあ唐突に始まるアル中でDVの極みのような父親と、どえらく一本気な息子との会話からしてそうだ。とてもニコラス・ケイジ主演の映画の出だしとはおもえないくらいじめじめした中途半端な幕開けだ。くわえて、ニコラス・ケイジの仕事といえば、違法伐採のとりまとめ役で、さらに前科者だってんだからこれはもう陰惨な物語以外の何物でもない。実際、そうだった。
たしかに、自分のどうしようもない人生の中で、もしも荒くれの若いときに道をはずしていなかったら別な人生だったんだろうなと反省したとき、自分を頼りにしている15歳の少年が現れて、その少年の父親がどうしようもない飲んだくれで、少年の稼いだ金を殴りつけてむしり取っては酒や煙草にし、さらには実の娘つまり少年の妹まで暴力をふるって車の中で売春させる野郎だと知ったとき、この子を守るのが自分の最後の使命だとおもうのは当然のことだろう。往年のニコラス・ケイジだったらもうすこし格好いいけじめのつけ方があったのかもしれないけど、もう腹の出かかった今、最後のちからをふりしぼって数発の銃撃をおこなって刺し違えるくらいしかできなくなってるんだと自覚するのは辛いね。
うん、こうしておもいなおすと、ニコラス・ケイジ物の中では演技が中心だったのかもしれないね。