◎マギー(2015年 アメリカ 95分)
原題 Maggie
監督 ヘンリー・ホブソン
◎シュワルツェネッガーのゾンビ映画
とくれば、誰もが愛する娘を守るために片っ端からゾンビを打ちのめす物語を想像する。
もちろん、ぼくもそうだ。
ところが、そうじゃなかった。シュワルツェネッガーはどこにでもいる中年のおじさんで、ちょっとばかり筋肉質みたいだけれどもずんぐりむっくりで、超人的な肉体を誇っていたり、戦えば敵なしとかいった風には見えない。いや、実際、前妻とその娘とは別れ、郊外で後妻と幼子ふたりと暮らす農夫でしかない。この親父が、地上にゾンビがはびこってしまった中、もう2週間も行方不明になってる娘を探しに町に出かけ、やがて娘を見つけたもののすでにゾンビに噛みつかれてその菌に感染してしまっていて、もはや手遅れの状態になってるという悲劇を迎える。こうなると一般人のシュワルツェネッガーにはなにもできず、ただ苦渋を浮かべながら郊外へ連れて帰り、やがてゾンビになってしまう娘を助ける方法はないのかと悩み、結局のところ、隔離施設へ入れることもできず、娘のゾンビ化は止まらず、しかも自分の友人の警官の息子はゾンビとなって施設に収容され、自分もまたライフルで娘を撃ち殺すか、はたまた施設で使われる安楽死させる注射を打つかどちらかだという選択を迫られることになるんだ。もちろん、娘がみずから命を絶つという選択もあるし、シュワルツェネッガーがみずから娘に腕を差し出して噛みつかせて自分もまたゾンビとなっていくという選択だってある。けど、どれも悲劇的な結末しかない。希望はどこにもないのだ。
辛い物語だね。
ここで誰もがおもうことは、たぶん、このゾンビ化する菌は要するに狂犬病みたいなものじゃないの?ってことだ。老いの目立ち始めたシュワルツェネッガーはよくある難病物の父親役を演じてるだけなんじゃないの?と。もちろん、そうだ。けど、そうだといってしまっては元も子もない。ただ、不治の病の物語を真正面から作ったところでそれはさすがにシュワルツェネッガーの物語ではないし、どうせなら、ゾンビ物の方が僕としてはしっくりくる。
なんだか、ニコラス・ケイジもそうだし、スタローンもそうで、みんな、年相応の老け役をやるようになってきたんだね。時の流れというのは悲しいね。筋肉が売り物だったヒーローが渋みのある老人役を演じるようになるというのは、うん、僕自身、もうそんな年になってきたんだな~っていう感慨すら抱いてしまう。
とはいえ、アビゲイル・ブレスリンもなかなか熱演してるし、メイクもけっこう効いてるし、ぼくとしてはシュワルツェネッガーの新境地とかいうのではなく、単純に父と娘の悲しいゾンビ物語として受け取った。