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☆=☆☆☆☆☆
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▽=☆

キャロル

2016年02月28日 13時36分56秒 | 洋画2015年

 ☆キャロル(2015年 アメリカ 118分)

 原題 Carol

 監督 トッド・ヘインズ

 

 ☆エチュード10の3ホ長調

 つまり別れの曲なんだけど、これがものすごく好い。ジョー・スタッフォードが歌ってて、当時のタイトルは『No Other Love』だとか。実は、これ、気がつかなかった。この挿入歌、えらく盛り上げるな~ってくらいにおもってて、でも聞いたことあるのはなんでなんだろう、とかって感じだった。ところが、映画を観終わってから、あ、別れの曲じゃん、てな感じだ。まいっちゃうな、まじに。

 で、なんでそこまで魅せられちゃうのかっていえば、リアリズムなのかもしれないね。監督のトッド・ヘインズは前にも『エデンより彼方で』で1950年代のアメリカを再現してみせたように、ほんと、細かいところまで気がついてる。まあそれと、なんでこんなに高慢で威厳があるのに寂しげで物欲しげなんだよケイト・ブランシェット、とか、なんでこんなに純粋で可憐なのに野暮ったくて強情で命懸けなんだよルーニー・マーラ、とかって感じだ。ほんと、このふたりの微妙な演技にはまいっちゃうわ。とくに粉雪の舞う中、ケイト・ブランシェットをカメラでそっと撮っていくルーニー・マーラのおもいつめた場面なんざ、これはたまりませんな。レズビアンの映画なんだけど、これはそういう同性愛だとかなんだとかをこえた大人の悲しくも純粋な恋愛譚なんだよね。

 ちなみに、なんでこのまるで対照的なふたりが恋してそれをまるで不倫でもしているかのようにひたすら隠そうとして最後には逃避行まで仕出かしちゃうのは、当時、アメリカでは同性愛は違法だったかららしい。よくは知らないんだけど、なるほど、そういうことなら、こういうふうに切羽詰まった感じはわからないじゃないな~と。

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