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トゥモロー・ワールド

2021年12月06日 22時37分21秒 | 洋画2006年

 ☆トゥモロー・ワールド(2006年 イギリス、アメリカ 109分)

 原題 Children of Men 人類の子供たち

 staff 原作/P・D・ジェイムズ『人類の子供たち』 監督/アルフォンソ・キュアロン

     脚本/アルフォンソ・キュアロン、ティモシー・J・セクストン 音楽/ジョン・タヴナー   

     美術/ジェフリー・カークランド、ジム・クレイ 撮影/エマニュエル・ルベツキ

 cast クライヴ・オーウェン ジュリアン・ムーア マイケル・ケイン クレア=ホープ・アシティー

 

 ☆ありえないだろ、この長回し!

 とおもいきや、これ、複数のカットを恐るべきCGの技術で合成されたものなのね。

 最初見たときは、こんなに長い長回しは無理だって、10分ちかくあるんじゃない?

 とびっくりこき、驚嘆すべき長回しではないかとおもったんだけど、どうやら、イギリスのVFX制作会社がCG合成をしたらしい。

「ハリー・ポッター」や「007」や「バットマン」とかのシリーズを担当してるとか。

 でも、ふ~ん、そうなのか~ではすまされないくらい、すごかった。

 びっくりこいた場面は4つ。

 最初が、クライヴ・オーウェンが珈琲を買ってカフェから出てきたときの大爆発。すんごい爆風と黒煙がカフェから飛び出すわ、向かいのビルのガラスが一気にこなごなになるわ、あれよと見る間に町は大惨事。いや~すごかった。

 次が、クライヴ・オーウェンとジュリアン・ムーアの乗り込んだ車が銃撃されるとき、カメラはずっと車内にあって、途中から車外に出るんだけど、カメラマンのいる場所がないじゃん、まさかずっと吊るしてたとかあり?なんてことを考えても、どうやって撮ったのかまるでわからなかった。口から飛ばしたピンポン玉を口で受けるなんてのは、いくらなんでもCGだよね?とかいうことくらいはわかったけど、燃え盛る車が斜面から飛び出してきてからパトカーに停められるまで、延々1カット。車輛と群衆と車内の演技と、いったいどれだけリハーサルしたんだろと頭を抱えた。

 その次が、めちゃくちゃ寒そうな廃墟の小汚いマットの上で、人類の子を出産する場面。なんだよ、この息の白さとかおもってたら、いきなり出産が始まるし、臍の緒ついてるし。息も赤ん坊もまさかCGとかって、ないよね?とかおもいながらも、まじに演技の途中で生まれるはずもないしと眼を疑った。

 さらに、戦車まで投入される中、バス中の襲撃やビルを駈け上る一連の戦闘シーン。銃撃やら動物の群れやら血しぶきやら砲撃やらはCGだとしても、長すぎるよね。とかっておもってたら、なんと、みんな複数のカットを繋いで、CGをがんがん入れてるとか。

 メイキングを見るまで信じられなかったけど、たしかにそうだった。

 すごいわ~。

 けど、嬉しくなるのはそれだけじゃなくて、キング・クリムゾンの「クリムゾン・キングの宮殿」が使われていたこともそうだけど、そのすぐあと、バタシーパーク発電所とおぼしきビルの空に、ピンクの豚が飛んでるんだよ~。ピンク・フロイドの「アニマルズ」じゃん。だけじゃなくて、ショスタコーヴィチの『交響曲第10番』やマーラーの『亡き子をしのぶ歌』とか、なんてまあ見事な劇伴音楽の数々。

 とはいうものの、ぼくは、文学も音楽も美術も、およそ文化芸術に関して恥ずかしいくらい知識がなく、クリムゾンやフロイドだって、大学の2年生になってようやく知った。それまではプログレのプの字もわからず、いまもよくわかっていないけど、大学の同級生に聞かされるまで、なんのことやらちんぷんかんぷんだった。フォークからニューミュージックに変わっていく時代を田舎で過ごしたぼくにとって、クリムゾンやフロイドは、カルチャーショックに近いものがあった。そんなこともあって、遅ればせながらレコードも買い、CDの時代になってからも、せっせと買い揃えた。ぼくにとって、大学生活の大切な欠片のような音楽になった。なのに、引っ越しをくりかえすたびに、いつのまにやら処分しちゃったけど。

 その友達とも、歩いて5分くらいの町内に住んでいながら、いまでは業種も違うし、30年ちかくもふたりきりで会ったことはない。けど、大学時代に音楽を教えてくれたことのお礼はちゃんといわなきゃいけないなと、ときおり、こういう映画を見るとおもいだしたりするんだよね。

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