◇ミッドサマー
171分のディレクターズカット版を観てしまったことにめちゃくちゃ後悔したわ。アリ・アスターのデビュー作を観てないからなんともいえないけど、才能あるんか?っていいたくなるくらい辛かったぞ。
まあ、シンメトリックな構図がキューブリックを思い出させるし、ただならぬ雰囲気は『シャイニング』を思い出させる。けど、窓の外の雪の中に浮かぶ最初のメインタイトルは、字が小さすぎて読めない。フローレンス・ピューの実家の家族が双極性障害で無理心中したことでその心的障害を抱えたまま、ジャック・レイナーやウィル・ポールターたち大学仲間の下宿に行きスウェーデンに誘われるんだけど、この出だしまで長い。
ただ、大学の仲間の下宿で家族を亡くした話をされ、変にきれいなトイレに入って泣き出したなとおもったらスウェーデンに向かう機内のトイレだったとかなんてのは、まあまあすてきな繋ぎだった。それと、ピューたち5人の乗り込んだ車が途中でドローン撮影で天地が逆転して、ヘルシングビレッジに入ったところで天地が元に戻るってのもよかった。なるほどここが世界の分かれ目なのねって感じの展開はちょっぴり才能を感じさせた。
薬とマッシュルーム茶でトリップしたときの風景が加齢黄斑変性のとさほど変わらないのは愛嬌だけどね。
あ、ちょっとハイキー気味に撮られた画は北欧の夏っぽく、なんとなく『ビレッジ』を思い出させるな。
けど、物語全体は異様な退屈さなんだけど、妙な緊張感が続いてて異世界を見学してるみたいな気分にもなる。だるまさんが転んだ的な女王選びのゲームのさまを見てるうちに藤子・F・不二雄の短編も思い出したけどね。
わからないのは、おそらくこの夏至の村は自給自足で、外から血を得て近親相姦を無くしてきたんだろうけど、文化がまるで入ってこないわけでもないのになんで中世的な暮らしをしてるのかってことだ。アーミッシュの村のような現実味もなくて、なんか生殖ばかりが前面に出てくる。
異常な処女の貫通式もそうで、それを見守りながら歌をうたっている女たちが、自分の乳房を揉みしだきながら声をあげてゆくのは伝統的変態儀式といっていいんだろうけどね。
ま、期待したほどの出来映えじゃなかったな。雰囲気だけ伝わってきた分、残念だわ。