Creator's Blog,record of the Designer's thinking

フィールドワークの映像、ドローイングとマーケティング手法を用いた小説、エッセイで、撮り、描き、書いてます。

番外編531. 下地そして契機

2022年02月25日 | field work

 

 SLに興味を持っていた鉄ちゃんを無理矢理誘い出し、「えっ、電車ーー!」と嘲笑されながら地味な1日の旅だった。もちろん私の関心につきあってくれた鉄ちゃんのつきあいの良さと忍耐力に敬意を払って・・・。

 しかし私なりに、湘南海岸の風景や地図でみつけた箱根登山鉄道のスイッチバックをこの眼でみたかったという考えた末の提案だった。

 今では既にSLはおろかブルートレインもなく、湘南電車は既に4世代目の車両が走っている。

 当時東海道本線で既に旧型車両で廃止目前の80系の湘南電車で出かけられたのはラッキーだった。一般的な呼称である湘南電車は、緑とオレンジというカラーリングで登場し、当時の黒や茶系ばかりの鉄道の世界で始めてデザインを意識させる存在だった。それがデザインの世界に進む私の出発点だったのかもしれない。

 鉄ちゃんに2タイプあり、鉄道が好きだから撮影に行くタイプと、写真が好きでさしあたりの被写体として鉄道、という場合がある。私の場合は後者だった。だから私の関心は、鉄道から街やランドスケープへ広がっていった。もちろんその後、写真自体も卒業しデザインの世界へ進んでいった。だから写真は、絵具や絵筆同様に表現ツールの 1つであるという認識は今も続いている。

 当時一緒に1日撮影につきあってくれた鉄ちゃんは、オリンパスペンFを持参していた。あの小さなボディのフォルムは、今思いだしても大変お洒落だった。ペンという名前に好感をもっている理由である。プロダクトデザインへ関心を持つ下地だった。

 私は親父からのお下がり機材を抱えながら、そんなカメラ見たことないよと周囲から軽蔑の目線を感じつつ、それにしては頑張って撮っていた頃。クラシックというテイストに関心を持つには早すぎる、新しいものが支持されるひたすら前に進んでゆく時代だった。

 私には、鉄道という身近な存在を通じて社会へ眼を広げる契機だった。

 

江浦、箱根1969年

Canon6L,50mm/f1.4,Tri-X400 

コメント
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