Creator's Blog,record of the Designer's thinking

フィールドワークの映像、ドローイングとマーケティング手法を用いた小説、エッセイで、撮り、描き、書いてます。

番外編532. 行商人列車

2022年02月26日 | field work

 

 

 金のない高校生だから、北海道までC62を撮りに行くなんてことはできない。精々最安運賃の両国駅へでかけるのが精一杯だった。

 ある時ホームから見える機関車の転車台が気になっていた。あそこから撮ってみたい。だが入れるだろうか?、そういえば佐倉の機関庫も鉄ちゃん達と訪れたとき入れた。地元の人たちが通路代わりにつかっていた。そんな経験を思いだし、ならばいってみよう。型式プレートが外された廃車同然のSLがあれば、都会の中でみたこともないアングルが沢山あるではないか。SLの入替風景だって撮れる。すごい場所だ。そうやって両国始発のSLが牽引する客車まで撮り終えた。やったぜ。

 そのとき背後から「おいっ!!、お前!!、何やってんだ!!!、どこから入ったんだ!!!! 、ここは入れないぞ出て行け!!!!!!」と鉄道員に怒鳴られ、何か始末書でも書かされた上に高校へ通知されるかと足は震えたが、出口までつれていかされ放免された。やはり都会の駅だ、田舎とは違う。国鉄時代の話である。

 こうした風景も、今は東京へ向かう総武快速線の線路敷きとなり存在しない。今考えれば、怒鳴られて無罪放免してくれた鉄道員に感謝している。もちろん今の鉄道で、こんな事は先ず不可能だ。昔の時間の流れがゆっくりしていた頃だかろこそ撮れた風景だろう。

 SLが牽引する列車は千葉からやってくる。朝両国駅へ到着し人の背丈ほどの大きな荷物を背負って行商人達がやってくる。そして東京都内に散らばり千葉の新鮮な生鮮産品を直接家庭に届けていたのである。私も実家の近くで行商人達をよく見かけた。そして夕方両国駅から帰るのである。そんな1往復だけSLが牽引する列車があったのである。行商人達の列車といってよい。

 今はそんな列車も、行商人達もいなくなり、物流システムによって私達の生活が存在している。奇しくも今日は昭和の226事件があった日だ。寒い中では、過去を振り返りながら春を待つのだろうか。

 さて3回の過去画像をアップさせて気づいたのは、モノクロネガのデュープだから解像感は高くないないはずだが、当時の印画紙プリント並みの画質だ。それは最近のPhotoshopの能力による。このソフトもここまで進化してきたかと思わせるような画像づくりである。

 

東京・両国1969年

Canon6L,50mm/f1.4,Neopan-SS

コメント
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