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知床半島の早春、淡黄灰緑色調のオショロコマの棲む滝壺が消えた。
20XX年5月12日。
川は細かな砂礫混じりの雪解け水で相当に増水して笹濁りになっている。
この知床半島羅臼側にある流程の短い渓流には昨年秋には海からすぐのところに大きな深い滝壺があった。
昨年秋の大雨で土砂が堆積しその滝壺が埋まってしまった。
昨年までの深い滝壺にはオショロコマの大群がいたのだが、浅くなってしまった滝壺に今日は魚影がなかった。
その少し下流に小高い砂防ダムがあり海側からの魚類の遡上は絶望的だ。
そのダムから河口までの間は普段オショロコマはいないのだが今日は何故か魚影があった。
滝壺に棲んでいた群れが全部ダム下まで流され落ちたのか、それとも海から遡上してきたのかどちらかであろう。
いずれにしてもこの渓流のオショロコマの生息環境があっという間に大きく変化してしまったことは明白だ。
寒い。海から冷たい強風が吹きつけ、体感温度は既に零度以下だ。一方、水温5℃の川の水中のほうが暖かい。
そうはいっても撮影のため水中に入れた手は、ずーんと痛みを伴うしびれがきて、やがて感覚が麻痺して何も感じなくなってしまった。
魚は次々にかかるがこのまま撮影を続ければ低体温症に陥ることは何度も経験している。体の震えが止まらなくなってきたので、そろそろ危険かな。今日はこのくらいにして撮影を中止した。
この渓流独特の淡灰黄緑色調の淡いくすんだ色調のオショロコマ。赤点紋理は細かく体色が明るいせいか鮮やかさがない。腹部、ヒレは淡いオレンジに着色するが色調は薄い。成熟した♂は緑色調を帯びる傾向がある。
オショロコマたちは手早く水中で撮影してすべて丁寧にリリースした。
さて、何万年もかけて出来た深い滝壺が大雨で流れてきた土砂であっと言う間に埋まってしまったのは、近年すぐ下流に作られた砂防ダムの効果であろう。
しかし50年から100年もすれば、この砂防ダムも寿命で崩壊するか、底抜けするか、埋まってしまうか、いずれにしてもやがて砂防ダムとしては機能しなくなるだろう。
そのとき、滝壺の土砂は再び海へと流出し、また深い滝壺とオショロコマの大群が復活するのだろうか。
それとも、その前に地球温暖化が進んで知床のオショロコマは消えてしまっているのだろうか。
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