日焼けジジイの顔は１０円玉？

午後の某駅発・営業所前ターミナル行き…　バスを乗り場に着けると、老若男女…　否、老々男女１０名ほどが乗ってきた。そして、最後に乗ったお爺さんから「ちゃんとシートベルトしなかんぞ！」と言われてしまったのである。

いつ頃からか…　バス運転席のシートベルトも、普通車のような肩と腰（左右）の３点式になったけれど、古いバスのシートベルトは腰だけの２点式で…　黒っぽいズボンの上に掛かっている黒っぽいシートベルトは見にくく、お爺さんは「肩からのベルトが見当たらない＝シートベルトをしていない」と思ったのだろう。

そこで私が腰のシートベルトをつまみ上げながら「してますよ」と答えたのだが…　そのジジイは「あぁ、そっか。悪かったな」の一言もなく…　知らん顔して車内観覧席の方へ歩いて行き、その真ん中に座ったのである。私は、車内ミラー越しにジジイをジィ～ッと見ていたのだが、ジジイは決して私と目を合わせようとしなかった…

スラッとした体型で背は高め、日焼けなのか何なのか思いっ切り色黒で、白いズボンに白いポロシャツ…　そう、少年野球の監督のような雰囲気で…　そのジジイは、よく“お役所”へ行く人が利用するバス停で降りて行った。さて、肝心の顔の方はというと…　あれだけジィ～～～ッと見ていたにもかかわらず、私のボケ脳の中では、すでにジジイの顔が“茶色い１０円玉”になっているのである。

なぜならば、夜の☆☆駅行きで…　ある乗客が１０００円札で運賃を支払ったところ…　運賃箱に見慣れない“１０”という赤い数字が点灯したのである。そう、運賃箱が「お～い！　釣り銭用の１０円玉がなくなったぞぉ～！」と教えてくれたのだ。そこからの私は「どうか、釣り銭を必要とする現金払いの乗客が現れませんように！」と祈りながら運転していた。幸い、その後に２人がちょうど２１０円を入れた時点で“１０”という数字は消えた。

考えてみれば、運賃２１０円の１０円を持っていない人には、必ず４枚ずつの１０円玉が釣り銭として出されるわけで…　僅か５人で２０枚の１０円玉がなくなるのである。今日の私のバスでは、６～７人が１０円玉４枚を含む釣り銭を手にしており…　今日が「たまたま」ならばいいけれど…　今後も、運行途中で“１０円玉不足”となることがあるかもしれない。

そうなると…　一人の運転士である私が、何十枚もの１０円玉を持ち歩かなきゃいけないのだろうか…？？？　そして“１０”が点灯する度に、１０円玉を１００円玉に両替するとか…？？？　いやいや、そこまでしなくても…　でもでも、その方が安心だろう…　ジャラジャラ、カバンが重くなるよなぁ…　とか言いながら、我が家の貯金箱の中から１０円玉を探す私であった…