浜名史学

歴史や現実を鋭く見抜く眼力を養うためのブログ。読書をすすめ、時にまったくローカルな話題も入る摩訶不思議なブログ。

『取り返しのつかないものを、取り返すために』(岩波ブックレット)

2011-07-17 19:41:11 | 日記
 発刊されたばかりである。「節電」により少し暗い電車の中で読んだ本だ。よい本である。500円+悪税だからそんなに高くはない。

 内容は、内橋克人の「不安社会をつくる」、なだいなだの「靖国合祀と憲法」、大江健三郎「九条を文学の言葉として」、小森陽一「井上ひさしさんの言葉」の4つ、いずれも講演の記録である。話し言葉がそのまま活字化されているので、とても読みやすい。

 作家で劇作家である故井上ひさしさんを偲んでの講演の数々、しかしその内容は大震災を真正面に据えて知的刺激に満ちたものだ。

 内橋さんの講演は、主に原発に焦点を絞っているが、そのなかで様々な論点を提示する。まずデンマークなどと比較した日本の惨状。日本のメディアは、外国の情報をあまり報道しないので、日本と異なる国民尊重の事実を知り、日本政治の貧困に唖然とする。

 そして「不安社会」についての説明。その特色として「私たちの社会では、経済的な変動、あるいは社会的な変動がおこると、そのしわ寄せはかならず、社会的弱者のもとに集中してい」るということ。本当にその通りである。社会的弱者の姿は、日常生活のなかでは余り目にすることはない。しかし少し目をこらすと見えるのだが、多くの国民は見ない。「どこまでいっても日本人というのは、当事者になってみないとわからないものなのか」という井上ひさしの嘆きが記される。
 私も思う、日本人の多くはいろいろな事実が知らされても、想像力をたくましくしないので、実際に当事者になってはじめて気づく、しかし、直面したことだけ知らされるが、そのことが過ぎ去れば忘れてしまう。問題を解決すべきものとして自らの俎上にのせようとしない。

 なぜならそこには「頂点同調主義」(故哲学者・久野収のことば)があるからだ。「“てっぺん”、お上のいうことにすべて合わせていく、同調していく、みずから好んで、ということです。お上に逆らって社会的排除を受けるのが、怖い。私たち日本人は、律儀で、忍耐強く、義理堅く、きわめて礼儀正しい。今回も、災害にあたって、そうした評価を海外で受けたというような報道がなされています。もちろんそれは美徳です。美徳ではあるけれども、そのことのなかの、なにが問題なのか。頂点、つまり支配層、上層、丘紙の言うがままに「同調」していって、結果において「てっぺん」が間違いを犯せば、国民みんなが間違う。異議を唱えることができません。これを頂点同調主義ーてっぺんに同調して生きるーと呼ぶのです」。

 今回の放射能の汚染でも、お上がいうから安全だ、」などという人が多いようだ。お上がやることを疑う、お上がやることに抵抗する・・・そういう精神が今求められている。

 今静岡で歌川国芳展をやっているが、江戸時代の歌川も天保の改革に対して抵抗している。抵抗や批判こそが、政治や社会、芸術でも文学でも、進歩をもたらすのである。

 大江の「九条を文学の言葉として」も、知的で刺激的だ。「人間は悲しい気持ちで考えると真面目になる」は、現今のテレビ番組を想起すればよくわかる。権力の保持者たちは、バカ番組を垂れ流して、人間を悲しくさせない、真面目にさせない、そのようにしている。

 小森は、井上ひさしの『吉里吉里人』(新潮文庫)から、すばらしい文章を引用している。これも読むべき小説だ。

 さて、この本の中で大江が井上ひさしの『日本語教室』(新潮新書)から何カ所か引用している。それがよかったので購入して読んでみた。簡単に読めておもしろかった。日本語に関する知識を少し得ることができた。

 暑さを忘れる本であった。
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金、カネ、かね・・・・・・

2011-07-17 19:23:28 | 日記
 原発にいつもまとわりついているのは、カネだ。

 玄海原発を立地させている玄海町、原発立地自治体に湯水のごとく投入されるカネを、無駄遣いする。この『佐賀新聞』の記事にある町道整備事業。総事業費は20億円近く。そのうち15億円余が国からだ。原発はこういう無駄遣いを誘発する。このようにカネが入るので町はこんなものにカネを投入するのであるが、この無駄遣いに町は4億円以上を投入する。無駄な道路をつくらなかったら、町はこの4億円あまりを福祉などにつかうことも可能だ。こういうカネのつかい方をなくさなければならない。

 "プルサーマル交付金” 町道整備資金、相場の10倍

 東松浦郡玄海町が玄海原発のプルサーマル受け入れに伴う核燃料サイクル交付金を活用し、本年度から着手した町道整備事業に疑問の声が上がっている。延長1・8キロで、総事業費は約20億円。町道の整備費は1キロ1億円が相場といわれ、通常の10倍に相当する。将来的には唐津市内を通って西九州自動車道に直結し、住民の避難道としても活用する計画だが、市側には西九州道へのアクセス整備の予定はなく、玄海町の構想に困惑している。

 核燃料サイクル交付金は国から支給された60億円のうち、玄海町に30億円、県と隣接の唐津市に各15億円が配分された。

 同町が整備を計画しているのは町道長倉-藤平線で、2003年に完成した農業用の藤ノ平ダムの管理道路(幅6・5メートル)を幅7メートルに拡幅、歩道も設置する。整備区間は1・8キロ、総事業費は概算19億5500万円。このうち15億2500万円が同交付金で、15年度の完成を目指す。

 町道整備は工事が容易なら1メートル当たり10万円前後で済むというが、「ダムに隣接した道路の整備で制約が多く、山を削るなど費用がかさむ」と町財政企画課は説明する。

 将来は現在建設中の西九州道北波多インターチェンジ(唐津市)と直結、産業用道路や災害時の避難道路として活用する構想。しかし、そのためには隣接する唐津市が少なくとも6キロ近く延長整備する必要がある。

 市道路河川課は「玄海町から打診はなく、当面改修する計画もない。避難道とはいえ、付近に集落はなく、市が整備する必要性は見い出せない」と困惑気味。町は県の支援を期待して県道昇格を働き掛けているが、県道路課は「新たな県道昇格は考えていない」としており、今のところ見通しは立っていない。

 同交付金は「地域振興につながる新規事業」が条件。自治体の使途はいきおい“ハコもの”に傾斜しがち。玄海町は既に薬草研究所と次世代エネルギーパーク整備に活用しており、町財政企画課は「新たな観光拠点ができる以上、アクセス整備は欠かせない」と強調。一方で、住民からは「交通量も少ないのに、今のままで十分。国から流れてくる大金を無理して使っている印象をぬぐえない」と疑問の声も漏れてくる。


http://www.saga-s.co.jp/news/saga.0.1993535.article.html

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