浜名史学

歴史や現実を鋭く見抜く眼力を養うためのブログ。読書をすすめ、時にまったくローカルな話題も入る摩訶不思議なブログ。

「生活保護だけはいや」

2023-02-11 20:55:36 | 社会

 『週刊金曜日』の「乱気流」で、いろいろな支援活動をしている雨宮処凛さんがその実態を短い文章で紹介している。新宿で行われている食品配布には行列ができていて、コロナ前と異なり600人をこえる人びとが並ぶのだという。それだけ生活に困窮している人が多いということだ。

 しかし、そのような人々に対する公助はほとんどないに等しい。雨宮さんは困窮した人びとに生活保護を受けることをすすめるのだが、「生活保護だけはイヤ」と言われるのだそうだ。

 そこで雨宮さんは、『学校では教えてくれない生活保護』(河出書房新社)という本を出版した。

 「学校では教えてくれない」とあるが、私は必ず教えていた。「現代社会」という教科で、労働基準法、生活保護については詳細に教えていた。一定の状況を設定して、その場合どうしたらよいかをきちんと説明し、覚えてもらうように試験にも詳しく出題した。

 生活保護については、自分が働いているときには税金を払っているのだから(今は働いていなくても消費税をとられる!)、自分が困ったときには国から援助してもらうのは当然だなどと説明していた。

 しかし一般的には、生活保護制度を活用することに、ためらいがあるようだ。雨宮さんもそういう体験を記している。そのためらいをどのようになくしていくのか。やはり権利意識が日本は希薄ということなのだろう。

 最近の物価上昇は、私の生活をも脅かしている。私はキャッシュで支払うことを原則としていることから、銀行からカネをおろしても、最近はすぐに消えてしまう。

 私ですらこうなのだから、家族を養う非正規の家庭ではとてもたいへんだろうと思う。

 生活保護を含めた公的扶助制度をより使いやすいように改革をしていく必要もある。

 統一教会党である自民党にはそうしたことに関心をもつ者はいないだろう。では野党はどうだろうか。最近の野党の動向をみていると、う~んと唸ってしまう。

 政治を変えなければ、と思うが、その主体がみつからない。

 

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驚くべき公務員の劣化

2023-02-11 17:24:31 | 社会

 これは重要。関東大震災の際、多くの朝鮮人、中国人が虐殺されたことは事実である。その事実を、東京都の職員が認めたくないようだ。自治体の公務員の劣化が露わになっている。みずからの出世のために、「上意」を忖度する劣化した人間が役所には群がっている。

朝鮮人虐殺「事実とすることに懸念」 メールに透けた都の〝本音〟

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「工場の門前で・・・」

2023-02-11 16:52:34 | 社会

 『週刊金曜日』の「政治時評」で、北海道新聞の記者・長谷川綾さんが「「工場の中に憲法を」名物オルグの至言」を書いている。

 札幌地域労組の鈴木一さんは組合を結成させるベテランだとのこと。その鈴木さんが『小さな労働組合 勝つためのコツ』という本を出したとのこと。その鈴木さんの口癖は「工場の門前で憲法は立ち止まる。けれども労働者が声をあげれば、工場の中に憲法は入る」だそうだ。

 この「工場の門前・・」はかつて聞いたことがある。熊沢誠さんが『民主主義は工場の門前で立ちすくむ』という本を出版している。

 実際工場では、ほぼどこでも民主主義はない。かつては闘う労働組合があり、組合によって工場内に民主主義を維持していた。しかし、使用者はそうした労働組合を毛嫌いし、労働者の一部をたきつけて第二組合を結成させ、労働者を分断してきた。そうした第二組合結成に力を貸したのが、かつての同盟である。彼らは、富士政治大学などで学び、使用者と連携して労働者の力を抑えてきた。

 その同盟が主導してできたのが連合である。その会長が自民党と連携することは当然のことである。同盟が使用者と連携して労働者を分断してきたように、連合は統一教会党=自民党と連携し、労働組合を親睦会として、あるいは労働者管理の組織として生かし、権利などを主張しない組織として利用したいのである。

 今やあるべき労働組合は風前の灯である。「労働戦線の統一」という良さげなスローガンに丸めこまれた総評の社会党幹部たち。そして連合が結成されるとき、自分たちの勢力を集めて労働者を引き裂いて組織を結成させた共産党。その結果、自治労と自治労連、日教組と全教・・・というように、連合系の組合と共産党系の組合が並び立ち、前者は闘わなくなり、後者は組織人員が減少することとなった。もちろん、労働運動の停滞は、支配層と支配層におべっかをつかう第二組合がつくりだしたものだが、それにのった社会党、共産党の罪も大きいと私は考えている。

 このような状況下、北海道では小さいながらも労働組合が150以上結成されたという。すでに私は働いていないし、労働運動にタッチすることもないので読むことはないが、現役の労働者は読んで勉強すべきではないかと思う。出版社は寿郎社だとのこと。

 

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【本】平野千果子『人種主義の歴史』(岩波新書)

2023-02-11 13:43:03 | 

 良書である。新書というボリュームであるにもかかわらず、内容は専門書である。古今東西の文献を渉猟して、「人種主義」を歴史的に跡づけ、そして現代の問題へと書き進む。

 おそらくこの本を書くために、著者は膨大な時間をつかったであろうと思う。

 専門的でもあり、また一般的でもあるこの本は、人種というものを考える最適なテキストとなるであろう。

 とても勉強になった。今まで見たことがある語彙、たとえば「コーカサス人種」などというものがどのような経緯でつくられてきたかなど、不確かなものを安定した知識として定位してくれた。

 本書の素晴らしさを書き綴るのは容易ではない。それほど多岐にわたる論点を文献にもとづいて、きちんと論じているので、実際に手に取って読んでいただきたいと思う。

 終章「再生産される人種主義」には、現在の差別問題を考えるに際しての有益なことが記されている。差別問題がやっかいなのは、こういうことがあるからだ。 

今日では多くの人が種々の差別に関心をもち、それらをなくそうと積極的に行動しないまでも、差別のない世界を望んでいる。しかしこの問題の困難は、無意識のうちに、場合によってはむしろ善意のうちに、人種主義に加担してしまう場合もあること、しかもそれが日常レベルで多く起こることではないだろうか。(241)

 差別意識というのは、人びとの中で、日々生まれては消え、消えては生まれる。それは仕方がないことである。しかしだからこそ、その差別を差別として謙虚に認め、差別はいけないことであると認識し、生きていく上での教訓としていかなければならないのである。

人種主義はマクロな世界の情勢と絡みつつ、個々のミクロなレベルで異なる反応を引き起こし形を変えながら、身近なところで再生産され続けている。(241)

 問題は、否定すべき差別(人種主義)を、公的権力が認めないことである。あるいはそれは差別であると糾弾しなければならないのである。しかしわが国では、公的権力に関わる者たちが、平然と差別を黙認し、さらには差別を助長するという事態をつくっている。わが国の差別は、公的権力が強化しているように思う。

 

 

 

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差別をしたい統一教会党=自民党

2023-02-11 08:37:47 | 政治

 統一教会党である自由民主党は、「差別は許されない」ということばが気に入らないようだ。ということは、彼らは差別をする、差別したがる政党であるということだ。

自民修正模索、立民はけん制 LGBT法案、「差別」文言が焦点

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テレビドラマ「エルピス」

2023-02-10 21:49:43 | メディア

 関西テレビで10回にわたって放映されたドラマ・エルピスを一挙にみた。韓流のドラマ張りの緊張感と真実に対する燃えるような情熱を感じた。それと同時に、権力を掌握している者どもが、真実を隠し、罪をなすりつけ、そして邪魔者を消し去るという野蛮な姿も描かれていた。

 韓流を見慣れている者としては、ベッドシーンなんかはなくてもよかったのではないかと思った。なくてもまったく話の展開には無関係。

 とにかくテレビ局に勤める若い社員が、しゃにむに真実を追求し、何度も挫折しかかりながら、それでも燃えるような正義感を貫き通したことに感動した。

 そして多くの社員がここでも「事なかれ主義」の前に真実を見ないという姿が描かれていた。

 そして最後は、悪事が暴かれ、真実が明らかになる。

 テレビに不信感を持つ私としては、フジテレビ系の関西テレビがこのような番組を放映したことに驚くと同時に、なかなか頑張っているじゃないか、テレビも見捨てた者じゃないなあと感じ入った次第である。

【追記】このインタビューがおもしろい。

「リスクが高い」とどこからも断られた…ドラマ『エルピス』が実現に至るまで 

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官僚たちのしぐさ

2023-02-10 09:34:39 | 政治

 中央省庁、地方自治体の役人たち、何処も同じであるが、かれらの特徴は、上意下達を素直に受け容れる、出世ばかりを考えている、問題があっても知らぬ顔をする「事なかれ主義」である。

 彼らの視野には、国民、市民は入っていない。操作対象でしかない。

 さて、昨日『週刊金曜日』が届いた。特集は「3・11から12年」である。2011年3月は、私が早期退職した年である。あまっていた年次有給休暇をとりながら自宅でパソコンと向き合っていたときに、大きな横揺れがあり、すぐに戸外へと避難した。その時のことは鮮明である。

 さてそれから12年。原発政策を推進してきた統一教会=自民党と創価学会=公明党による政権は、原発を推進する方針を明言した。電力業界も、原発が動かないと電気料金はあがるだけだと庶民を苦しめ、原発回帰へとやっきとなっている。

 同誌には、満田夏花さんの「原発回帰説明会」の模様が報じられている。説明する経産省官僚は長々と、予定を超過する説明を行う。その後の質疑応答時間を短縮するためである。そして質疑が始まると、厳しい質問の数々にはまともに応えず、発言を平気で遮る。

 政府や自治体が行う説明会も、ほとんど同じである。説明会を開いて国民、市民からの意見を聴取するという気持ちはさらさらなく、とにかく説明会を開いたぞというアリバイ工作にすぎない。

 行政は一旦決めたことは、とにかく推し進める。そのための「有識者会議」であり、説明会なのだ。

 こういう輩が、中央省庁や県庁、市町村役場にはたくさんいる。

 こういう輩を放逐して、どうしたら国民・市民のための行政へと転化できるのか、真剣に考えなければならない。

 国民・市民が、宗教政権を担う自民党、公明党に投票している限り、そうしたことは不可能である。

 政治家、行政、業界など、利権がまとわりついている現状がある。それが日本を泥船化し沈没へと向かっている。利権にあずかる者たちは、できうる限りいまのうちにカネを儲けておこうと躍起となっている。

 泥船から先に落とされていくのは、国民・市民である。もう半分落とされかかっているではないか。

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ウクライナ戦争についての処方箋

2023-02-09 09:01:01 | 国際

 『世界』3月号の特集の一つは、「世界史の試練 ウクライナ戦争」である。エカテリーナ・シュリマンへのインタビュー、池田嘉郎・宇山智彦・浜由樹子の座談会、塩川伸明へのインタビューが掲載されている。ここに名前のある日本人は、いずれもロシア史などの研究者である。

 座談会は、しかし得るものは少ない。そこでなるほどと思った箇所は、「社会関係の主たる要素は、対等な者同士の契約関係ではなく、強い者が弱い者を従えるという服従関係であるという観念」をロシアが有し、それが「対外政策に影響している」と池田は指摘するのだが、しかしそれは別にロシアだけではなく、国際関係はそういうあり方であり続けてきた、というのが私の見たてである。したがって、それはロシア独自の観念ではないと、私は思う。また宇山は、ロシアの侵略の「正当化のレトリックは、ドイツよりもむしろ大日本帝国に似ている」というが、それには賛同する。また池田は、「プーチン政権が全体として排他的ロシア・ナショナリズムによって作動している」と指摘するが、これもまた指摘するまでもないことである。読者としては、その先の議論が欲しいのだが、それがこの座談会にはない。

 また塩川のインタビューで私がしるしをつけたのはここである。

 戦争を仕掛けた側と仕掛けられた側は、どっちもどっちではないのは当然です。ですから、あの戦争を始めたことそのものに対する責任は、プーチンのロシアにあるとしか言いようがないでしょう。他方、そこに至る経緯とか、背景事情とかについては、もう少し幅広く考える必要があって、特定の人、あるいは特定の国を悪者と決めつけただけでは、事態の深い理解に到達しないのではないかと思います。

 その通りである。私が、ロシアとウクライナについて、ウクライナが悪だとするなら、ロシアは極悪だということと同じである。しかしいまだに、ロシアを非難せずにウクライナだけを非難する言説があるので、あえてこの個所を紹介した次第である。この塩川の指摘の後段は、その通りであって、なぜこうした侵攻をロシアが行ったのか、その背景にはいろいろな事情が存在することは言うまでもないことだ。その「事態の深い理解」に到達するためには、いろいろな資料がでてくるはずの「戦後」をまたなければならない。

 だからどうしたら、この戦争をストップできるか、という提言がなされる必要があるのだが、それはまったくない。残念なことだ。高名なロシア研究者の言説がここに掲載されているのだが、しかしそうした処方箋がない。

 もちろん私にもない。ただ、ウクライナから避難した人びとに何らかの手助けになればと、私は国連難民高等弁務官事務所に少額ではあるが送金をしている。国家に対して大きな不信を持つ私は、ロシア国家やウクライナ国家にカネを送るということはありえない。しかしそうした国家のなかに生きる庶民には心から同情するからである。

 

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役所のDNA

2023-02-08 21:41:09 | 政治

 役所の公務員の特徴。

 まず第一は、おのれの出世のために上意下達に素直にしたがう。

 第二は、できるだけ問題が起きないように、事なかれ主義を徹底する。

 第三は、自分の仕事をできるだけ増やさないようにする。

 第四は、しかし役所の予算はできるだけとろうとする。

 そうした公務員の特性が、熱海の土石流などの事態を招いた。県も市も、静岡市も同じ。浜松市も、である。

「職員が現場に来ないので違反と分かっていたが」熱海土石流の5倍の量も行政止められず…“大規模盛り土”で業者の親子逮捕

 

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日本共産党のこと

2023-02-08 17:54:53 | 社会

 有田芳生さんのTwitterには、共産党員の松竹さんが除名とされたことに関する異見が並んでいる。

 有田さんも共産党から除名か除籍か知らないけれども、自らの意思ではなく共産党の意思により共産党から離れた。

 地域で共産党といっしょに市民運動をしていると、いろいろなことがわかってくる。私の狭い経験から記すけれども、日本共産党全体がそうであるということではない。

 まず、共産党の組織で「出世」する人は、組織内部で共産党から給料を得ている人であることだ。「大衆闘争」担当という人も、市民運動を経験したことはなく、組織内部の分担でそういう部署の担当になったにすぎない。だから、思想や考え方が異なる人と、どうやって運動をつくっていくのかという視点はなく、共産党の方針を押しつけてくることが多い。

 ところが、今まで運動に参加した人びとは、会議の中で意思の一致をつくりながら運動をしてきたのだから、共産党の方針をそのまま受け容れることはない。そうなると、共産党はどうするか。その運動から離れて、自分たちの方針通りに運動できるように、共産党系の団体や個人を糾合して新たな組織をつくる。

 しかしそうした組織を共産党は多数抱えているから、その組織は消えていく。

 とにかく、共産党は運動の主導権を握りたがる。主導権が握れないと判断すると前述のように別組織をつくるか、あるいは阻害となっている人間を排除する。その背後には、自分たちが絶対的に正しいのだという強い意志がある。

 市民にとっていろいろな課題があっても、私は共産党とは一緒にやれないという意見である。それは今までの経験からだされたものである。共産党は、市民が抱える課題を解決することよりも、いつもみずからの組織を上に置く。

 今回の除名問題、いろいろな意見がネット上で交わされているが、処分を下した者たちは、ふつうの人びとと交流しない組織人だと推測する。市民感覚とズレていることを自覚できない人たちだ。

 

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統一教会、洗脳の歴史

2023-02-08 17:11:17 | 社会

 BBC制作のビデオ。

統一教会の歴史と洗脳

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この人、統一教会系だろう

2023-02-08 17:05:43 | 社会

三浦瑠麗氏 統一教会との関係を釈明も過去発言との“矛盾”に総ツッコミ

 この人の発言や、夫君の代理人弁護士が統一教会バリバリの福本某であるのなら、統一教会と関係ないというのは信じられない。統一教会系だからシンゾウにも好かれ、メディアでもコメンテーターとして重用されるのだろう。

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日本の政治は狂っている

2023-02-08 08:22:23 | 政治

 テレビは視聴率稼ぎのために、本来しっかりとした報道をすべきなのに、視聴率が取れない案件だと判断すれば一回限りで続報はない。しかし視聴率がとれそうだと判断すれば、何度でも同じ映像を駆使してひたすら取り上げ続ける。したがって、テレビの報道だけをみていれば、政治社会のほんとうの動きはつかめない。

 また新聞も、とりわけ全国紙、政権寄りの報道姿勢が強くなっている。また新聞記事は長い記事ではなく、短い。『東京新聞』の「こちら特報部」の記事は長いが、ほとんどの記事は短い。

 となると、政治社会の動きをつかむためには、雑誌や書籍に頼らざるを得ない。

 私は『選択』、『週刊金曜日』、『世界』を購読しているが、それらから知ったり学んだりすることが多い。

 昨日届いた『世界』。小田切徳美「新しい「農山村たたみ論」 「国土の多極集住論」の検討」を読んだ。農山村は過疎化し、人口減少が進んでいる。そうしたところに居住する人びとを集めて居住させ、農林業をしたければ通えばいいじゃないか、という「多極集住論」が政府内で議論されているという。そのほうが財政支出が効率的になる、というわけだ。読んでいて、それはほとんど無理であろう、というのが、私の感触である。農山村に居住する人びとには、そういう発想はない。田畑の近くにある住居で生活して、すぐ近くにある田畑に通うという習慣は先祖代々続けられてきたことだ。そういう生活を、机上の空論で「片づけてしまう」という政策は、無理である。農山村を畳んでしまうという発想を、日本の官僚や「有識者」といわれる農業をしたことのない者たちが提言するということに、農業問題の専門家である小田切が斬り込んでいる。

 また次の文は、「農業集落調査「廃止運動」の教訓」(戸石七生)である。農林省は、五年ごとに行われている「農業集落調査」を廃止しようとしているというのだ。その顛末が書かれている。

 私の周囲でも、田畑が埋め立てられ、運送業者の輸送拠点がつくられ、また点々と新しい住居が建てられたりしている。しかしまだまだ農地は残っている。私自身も日々農作業に従事している。

 ちなみに私は農村部を抱えた自治体の歴史の編さんに従事してきた。そのとき、農林省が行う調査結果は重要な資料であった。それなしにはきちんとした歴史を描くことはできないほどだ。

 そうした重要な統計調査を、農林省は廃止しようとしている。

 なんてこった。

 安倍晋三という政治家が首相となってから、統計の改竄が頻発し、統計への信頼がなくなってきたことをいいことに、政府自体が統計調査をやめようというのだから、世も末である。

 統計が整備されているということこそ、国家への信頼、それも国内だけではなく、国際的な信用を獲得する手段である。

 官僚たちの振る舞いは、もう絶望的なまでの水準に来ている。政治家がどうしようもないからこそ、その下で行政を担う官僚たちも劣化しているのだ。

 そうした実態を知るためには、やはり雑誌は必要だ。もちろん、調査報道を行う新聞も、である。調査報道をしない新聞は、テレビと同様に、もういらない。

 

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いいんじゃないですか

2023-02-08 08:22:23 | 社会

連合・芳野会長が自民党大会に出席へ 政権と距離縮める狙いか

 このニュースで色々な意見が出されると思うが、これでいいんじゃないか、と思う。「連合」の成立とは、この方向に労働組合をもっていくためであったのだから。労使協調というか、使用者の支配下にあることを当然視する労働組合、それは「連合」成立前は「同盟」といっていたが、「同盟」は使用者、つまり資本家と仲よくしながら、おこぼれで賃金をあげてもらうという姿勢であった。「連合」はその「同盟」が主導権をにぎるなかで成立したものだ。

 最終的には、統一教会=自民党を支える労働者の組織となるだろうと、私は予想していた。

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ウクライナ侵攻

2023-02-06 20:16:09 | 近現代史

 ロシアのウクライナ侵攻に関して、ウクライナだけを批判して、ロシアを批判しないという言説がある。

 私は、ロシア=プーチン政権は極悪であり、またウクライナ=ゼレンスキー政権は悪であると両者を批判している。どちらも悪であるが、ウクライナに侵攻し、ウクライナの庶民を殺傷し、生活の場を破壊するロシアの悪の方が大きいと思い、極悪と表現している。

 ウクライナには統一教会もあれば、ネオナチもいる。だからといって、ウクライナの庶民の生活を破壊する権利は、ロシアにはない。

 ロシアのウクライナ侵攻は、アメリカのイラク攻撃、アフガン攻撃(アフガンにはソ連も侵攻した)その他、数々の侵略を重ねてきたアメリカと同様に大いに批判されるべきである。

 ロシアのウクライナ侵攻は、戦後の国際秩序の根幹を揺るがす大事件であり、日本の軍拡への急速な動きも、このウクライナ侵攻により加速化されたといってもよいだろう。

 ロシアがかつてソビエト社会主義連邦だった、つまり「社会主義国」であったということを想起してロシアを批判しないという集団もあるようだ。

 確かにソ連は「社会主義」を標榜していたが、しかしそれは決して人びとが望んでいたものではなかった。

 今日、書庫から『幻のロシア絵本 1920-30年代』という図録を引っ張り出してきた。その冒頭には、「革命を経た1920-30年代のソヴィエト(ロシア)では、新しい国づくりに燃える若い画家、詩人たちがこぞって絵本の制作に携わり、未来を担う子どもたちに大きな夢を託していました」と書かれている。ロシア革命前後のロシア・アヴァンギャルドを背景にして、芸術家たちの自由な発想が花開いた時期が、確かにあった。ロシア革命は、夢であり希望であった時期が、確かにあった。

 しかしそうした自由かつ創造的な動きは、ソヴィエト権力が確立するにつれて弱くなり、そして抹殺され、社会主義リアリズムというイデオロギーが芸術家たちに押しつけられた。

 そうしたソヴィエト権力がソ連という国家の舵を取るのであるが、それは権力を掌握している者たちだけに特権を与え、それ以外の者は手段化されていき、コミンテルンという組織も「社会主義の祖国」であるソヴィエトを擁護するためだけのものとされた。

 そこには、ソヴィエト権力に関わる者たちの独善によりすべてが運営されていった。だから、、日本との関わりでいえば、1945年の東アジアにおけるソ連軍の蛮行が出現したのである。

 ソヴィエト権力とつながるプーチン政権は、したがって善であるわけがない。それはアメリカという「帝国」が、政権がどうであろうとも、ろくでもない独善にまみれた国家であることと同じである。

 いかなる国家権力も批判にさらされなければならない。それが歴史の中からくみとる教訓である。

 私は、ウクライナ侵攻に関して、ロシアを批判しない言説が流布することに驚きを隠せない。

 

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