「魅惑の17-19世紀フランス絵画展」 損保ジャパン東郷青児美術館 5/3

損保ジャパン東郷青児美術館(新宿区西新宿)
「南仏モンペリエ ファーブル美術館所蔵 魅惑の17-19世紀フランス絵画展」
4/23~7/15

こんにちは。

新宿の東郷青児美術館で「魅惑の17-19世紀フランス絵画展」を見てきました。

メインはやはりクールベの作品でしょうか。日本初公開という「出会い、こんにちはクールベさん」が一番目立つところに展示されています。あまりにもストレートなタイトルなので、見る前の期待感が殆ど湧きませんが、実際に拝見すると予想以上に素晴らしい作品です。光がたっぷり取り込まれたカンヴァスの中に、クールベ本人を含めた男性が三名。機嫌の良さそうな犬がアクセントとなっています。大木を前にして挨拶を交わしているのでしょうか。木の影が三人の後方へ長く伸びている様も印象的です。日常の一コマを堂々とした歴史画のような表現で描いた作品とのことですが、確かに見応えはありました。

カミーユ・ロクプサンの「海景、人物のいる浜辺」は、陽の光が燦々と降り注ぐ美しい海岸が印象的な作品です。太陽の光が、絶え間なく打ち寄せる波にたっぷり反射しているせいか、カンヴァス全体が明るさで満ち溢れています。幸福感が漂います。また、同じ風景画では、コローの「朝、霧の効果」も素晴らしい作品だと思いました。高台から見下ろした雄大な景色は一面の朝霧で覆われています。水墨画のような繊細で動きのあるタッチが、全体を淡い基調で整えて美しさを引き出しています。ぼやけるようにして薄く見える画面右側の大きな木の表現も良いと思いました。

幻想的で詩的な世界を見せてくれたのはカリエールの作品です。「髪を結う女性」と「マルグリット・カリエールの肖像」は、二点とも人物画ですが、霞がかかったような独特の表現が夢の世界へと誘ってくれます。ただ、これらは幻想的で恍惚とするだけの作品ではありません。その向こう側にある苦悩や絶望などの感情も投影してくるような作品です。その辺もカリエールの味わいなのでしょうか。こういう作品はとても惹き込まれます。

肉感的で温かみのある表現が美しいグルーズの「両手を合わせた少女」や、色とりどりの点描で世界を鮮やかに描き出したロジェの「通称ロールの道」も印象に残りました。また、マティスやドラクロワの描いた比較的マイナーな作品も展示されています。じっくり立ち止まって鑑賞したくなるものと、殆ど素通りしてしまう作品に二分されるようにも思いましたが、隠れた名画探しの趣きも感じられる穴場的な展覧会でした。
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