「小倉遊亀展」 三越日本橋本店ギャラリー 5/21

三越日本橋本店新館7階ギャラリー(中央区日本橋室町)
「小倉遊亀展 -生誕110年記念- 」
5/17~29

日本橋の三越で開催中の「小倉遊亀展」へ行ってきました。

以前、小倉遊亀の「浴女その一」の魅力について拙い記事を書きました。今回の展覧会では残念ながらその出品はありませんが、人物画から静物画までの幅広い小倉の画業を体験できます。見所の多い展覧会でした。

彼女の作品の中で特に惹かれたのは、可愛らしい梅が描かれた作品でした。「紅梅白壷」(1971年)は、首の長い端正な形の白壷に、淡いピンク色をした梅が差された味わい深い作品です。背景の灰色と青色の対比、また、壷の白色と梅の赤やピンク色の対比がメリハリを生みます。柔らかな優しげなタッチで仄かに色が滲みだす作品であるのに、確固とした存在感を得られるのは、その辺の色遣いによるものかもしれません。どの梅にもハッキリと雄しべと雌しべが描かれていて、今にも花開かんとするつぼみの膨らみにも魅せられました。

瑞々しさいっぱいの美味しそうな葡萄が描かれているのは、「古九谷鉢葡萄」(1975年)です。二房のぶどうはマスカットと巨峰でしょうか。一つ一つの実の色が全て微妙に異なっていて、リアリティーを感じさせます。また、ぶどうの受け皿となっている鉢(「古九谷焼」というのでしょうか。)も、ぶどうに勝るとも劣らない美しい質感を持っています。彼女は、この作品以外にも多くの壷を描いていますが、描かれた年代によって雰囲気が異なり、それぞれに別々の魅力が感じられました。チケットの表紙にもなっている「花三題(脇)」(1985年)も、艶の押さえられた素朴な味わいの壷が、差されている花の美しさを引き出します。「梅」と「壷」。彼女の筆がこの二つにかかると、断然魅力的な作品を生み出すようです。

キャプションには、描かれた年と彼女の年齢が描かれています。年齢と作品の関係を安易に結びつける見方もどうかとは思いますが、100歳を超えてから描かれた作品を前にした時には言葉を失いました。私には想像を絶する創作の世界です。驚異的でした。

小倉の作品からは、自然や人間に対しての温かい眼差しが感じられます。29日までの開催です。
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