都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「梅原龍三郎 晩年の造形と所蔵品」 渋谷区立松濤美術館 5/15

「梅原龍三郎 晩年の造形と所蔵品」
4/5~5/15(会期終了)
こんにちは。
「日経おとなのOFF」を読んで気になっていた渋谷の松濤美術館へ行ってきました。洋画家の梅原龍三郎の晩年を中心とした作品と、彼の愛蔵した美術品を紹介する展覧会です。会期最終日の駆け込みでした。
梅原の作品は、何回か竹橋の近代美術館で拝見したことがあります。この展覧会でも竹橋から持ってきた作品が多く並んでいました。失礼ながら、普段はあまり注意して拝見したことのない方だったのですが、こうしてまとまって見るとやはり印象に残ってきます。タッチは、太い線を基調としながらも、決して塗りたくったような強引さはありません。どちらかと言えば、そっと撫でるかのようにカンヴァスへ油絵具を置いているようです。一見、剛胆な作風に見えますが、実際はなかなか繊細で、幽玄な雰囲気すら感じられると思いました。西洋画の移入に努めた梅原ですが、彼の関心は中国や日本の伝統的な芸術品にも多大に払われています。ルノワールの影響云々だけでは語れない芸術世界があったようです。
この展覧会で最も良かった点は、梅原の作品と、そのモデルとなった美術品が同じスペースに展示されていることです。二点を見比べることで、彼が対象物をどのような視点で置き換えたのかが理解しやすくなっていたと思います。ギリシャの古美術品から日本の屏風画、それにイタリアの古い壷…。古今東西の遺物を、先ほども書いた彼独特のタッチで表します。これは面白く見ることができました。
興味深いのは、自画像の作品に多く見られた、金板の上に絵の具を載せて描いている作品です。金の持つ眩しい光沢感と、絵の具のしっとりとした味わいはあまり相容れないように思いましたが、日本の屏風画で使用されている金箔の美しさを見ると、両者のつながりを朧げに感じました。不思議な感覚です。
松濤美術館へは初めて行きました。道路から奥まった場所にある目立たないエントランスは、花崗岩で覆われた質感もあってか、何やら洞窟へ宝探しにでも行くような気分になります。非常に個性的です。内部も、塔のような筒型の構造で、中央部分は噴水が印象的な大きな吹き抜けとなっています。階段の曲線と照明も美しく、エレベーターを使って移動するのが勿体ないくらいです。また、喫茶室が展示室と一体になっているのには驚かされました。作品保護の観点から見れば問題がありそうですが、作品に囲まれながらコーヒーを楽しむのは贅沢な一時です。備え付けのソファもふかふかでした。
渋谷の喧噪とは別世界の静寂を得られる美術館です。また面白そうな展覧会があれば是非行きたいと思いました。
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