「メルティング・ポイント」 東京オペラシティアートギャラリー

東京オペラシティアートギャラリー新宿区西新宿3-20-2
「メルティング・ポイント」
7/21-10/14

オペラシティらしい、空間を大胆に使ったインスタレーションが展開されていましたが、全体的に見るとかなり希求力に欠けていたと思います。開催中の「メルティング・ポイント」へ行ってきました。



さて、まずはこの「メルティング・ポイント」という聞き慣れない言葉は何なのかということですが、これは「融点」、つまりは「異なるものが同時に存在する場所であり、作品が空間や人に作用し、変化していく様子を象徴的に表した」(チラシより。)という意味で使われた言葉なのだそうです。となると、三名の作家による、各々異なった表現の「融点」を探ってみたくなるところでしたが、今回の展示からその要素を見るのは大変に困難でした。むしろあれこれ考えるより、クレジットされている三名、ジム・ランビー、渋谷清道、エルネスト・ネトの単なるグループ展と捉えれば、そう違和感なく見ることが出来たと思います。少なくとも、肩肘凝らず、それこそ『作品が人に作用する』ような体感的に味わえる展示であったのは事実でした。



目当てのネトのインスタレーション、「それは地平で起るできごと、庭」(2001/2007)が今ひとつ物足りなかったのも、この展覧会をあまり楽しめなかった要素の一つだったかもしれません。二層にわたる布状の巨大なレイヤーに、何やら洞窟のような空間をつくっていたのはいつものことでしたが、今回はネトの作品に特徴的な嗅覚と触覚に訴えかける部分がまるでありませんでした。確かに宙に吊るされたレイヤーの間の穴へ首や顔を出して、あちこち見回してみるのも悪くありませんが、もっと大きく包み込まれるような場で、例えばレイヤーを通す淡い光などを全身で感じてみることにこそネトの作品の醍醐味があるのではないでしょうか。相当のスペースを用いた展示ではありましたが、その割にはやや大味な印象が否めませんでした。(ちなみに上の画像はチラシよりとったものですが、展示作品とは全く異なります。)



個々の作品としては、紙製の装飾的なドローイング風オブジェを手がける渋谷清道に一番見応えがあったと思います。率直に申し上げると、靴を脱いであがり、巨大な壁にて遮られているまるで迷路のような展示空間にそれほどの魅力は感じませんでしたが、円やアラベスク、それに雪の結晶のような真っ白なペーパークラフトは、ペンキやアクリルの絵具の質感とも相まって、さながら一個の精巧な刺繍を見るような深い味わいがありました。出来れば、今度はこの作品だけ個別に見てみたいと思うほどです。

同時開催中の収蔵品展は、本展とは打って変わっての重厚な日本画の連続でした。どちらかと言えばそちらの方が充実していたかもしれません。

今月14日までの開催です。(10/6)
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