「狩野尚信生誕400周年記念特別展 後期」 二条城・展示収蔵館

二条城・展示収蔵館(京都市中京区二条通堀川西入二条城町541
「狩野尚信生誕400周年記念特別展 後期」
9/29-11/25



やや手狭な収蔵館で開催中のミニ企画展(展示作品数全6点。)です。主に、狩野尚信の描いた城内の黒書院障壁画が展示されています。

そもそも二条城の障壁画を制作したのは、徳川家の庇護をうけた江戸狩野の探幽一派です。当然ながら、その弟尚信も障壁画を手がけることになります。今回紹介されているのは黒書院四の間の「菊図」と「秋草扇面散図」、そして三の間の襖絵「松図」、それに杉戸の「花籠図」でした。「花籠図」では胡粉を立体的に配して菊などを描く一方、細やかな編目まで浮き出る籠が実に精緻に表されています。ここはガラスケース、そしてその上での停止線越しの観賞になるので、単眼鏡などでじっくりと味わいたいところです。(ガラスケースがあるならもう少し間近で見せていただきたいと思いました。)

襖絵の「松図」にも興味深いものがありました。通常、二条城の松は徳川の繁栄の永続を願う意味合いのもの、つまりは常緑の松が描かれていますが、尚信のそれはうっすらと雪も冠り、四季の色合いも感じさせる叙情的な作品へと仕上がっています。基本的に黒書院障壁画は、他の建物に比べて大和絵の雰囲気が強く出ているそうですが、その最たるものとしてこの「松図」が挙げられるのではないでしょうか。画面下方に並ぶ松もどことなく控えめです。力強さはありません。

「秋草扇面散図」の扇面に一点、あまり見られないモチーフが描かれていました。それが「花いかだ」と呼ばれるものです。深い青みに浮かぶ何艘ものいかだの上に、いくつかの花が置かれています。おそらくは曲水の宴等々で遊ばれた光景かと思われますが、その風雅な味わいはなかなか魅力的です。ちなみにこの作品には山水画、花鳥画など計10面の扇面が流されていました。

尚信の障壁画と並んで展示されているのが、元は姫宮御殿の上段、中段に描かれていた「武蔵野図」、及び「竜田風俗図」です。これらは二条城が離宮として使われていた明治から昭和初期に御所から移され、おそらく貼り直されたものだと推定されています。「竜田風俗図」は純然なる大和絵です。竜田川にて紅葉狩りをする人々の様子が細やかに描かれています。また「武蔵野図」は大地に靡く秋草に雲霞、そして月が幻想的な出で立ちで示されたお馴染みの構図です。空が不気味に青く照る中、満月がどこか神々しい様で雲霞の這う秋草へと沈んでいます。作者は狩野永伯です。(竜田図は狩野宮内という人物ですが、その素性は殆ど分かっていません。)彼ははじめ京狩野の流れを汲む絵師として活躍していましたが、のちに江戸狩野家の門下に入ったとも考えられているそうです。



入城料(600円)の他に、収蔵館入場料として100円がかかります。お城見学のついでにでも見るのが良いのかもしれません。城はそれなりに混雑していましたが、ここ収蔵館はとても空いていました。

11月25日までの開催です。(10/26)
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