「元伯宗旦と樂茶碗」 樂美術館

樂美術館京都市上京区油小路中立売上ル
「元伯宗旦と樂茶碗」
9/11-12/16

京町家風のこじんまりした建物で見る樂焼の味わいは格別です。樂美術館で開催中の「元伯宗旦と樂茶碗」展へ行ってきました。



恥ずかしながら茶の素養がないので存じませんでしたが、元伯宗旦とは利休の子孫とも伝えられる、千家三代目を継いだ茶人です。侘茶に徹し、「乞食宗旦」とも言われるほど清貧な生活を送りました。そんな彼と樂との関係は、長次郎、そして道入に深いものがあります。長次郎茶碗の書付けを行い、道入の「ノンコウ」という名称も、宗旦より送られた花入れの銘によっているのだそうです。展示では主に、宗旦の書付けのある長次郎の樂が紹介されていました。



まずちらしの表紙も飾った長次郎の赤樂、「銘聖」に引き込まれます。薄茶色に灯る赤樂独特な温かみと、胴を少しくねらせるようにして動きを与える様子がとても魅力的です。造形にどこかバランスを崩してしまうような危うさをも感じさせる作品でした。

樂では一番好きな道入からは、数少ない宗旦の書付けによる「無一」が展示されています。すくっと立ち上がるような軽やかな形と、さらっとかけられたような黒光りする釉薬の組み合わせがモダンです。この遊び心もたまりません。



宗旦が樂家にあてた器のいわゆる注文書も見逃せません。上に挙げた軸の作品では、側面が少しおり曲がったような、やや歪とも言える形の器が宗旦の筆にて描かれています。これは利休後に流行した器の様式も反映していて、例えばこの時代に隆盛した織部の影響も見ることが出来るのだそうです。

いわゆる常設展示にあたるのでしょうか。入口先すぐの展示室では、長次郎から当代の吉左衛門までの樂がずらりと揃っています。畳を敷き、ちょうど胸の下あたりの高さのケースに入れて器を並べているのは観賞にも最適でした。樂のためだけの空間だからこそなし得る展示だと思います。

「楽焼創成 楽ってなんだろう/楽吉左衛門/淡交社」

12月16日までの開催です。(10/26)
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