「印象派とエコール・ド・パリ展」 日本橋三越本店ギャラリー

日本橋三越本店新館7階ギャラリー(中央区日本橋室町1-4-1
「印象派とエコール・ド・パリ展」
10/2-14(会期終了)

定評のある吉野石膏のコレクションとくれば、見応えがあるのも当然かもしれません。日本橋の三越にて先日まで開催されていた「印象派とエコール・ド・パリ展」へ行ってきました。



こう言ってしまうのは失礼かもしれませんが、ともかくデパートの名画展とは思えないほど充実した内容で驚かされます。印象派以前のクールベよりはじまりピサロ、シスレー、モネ、ヴラマンク、マルケ、シャガール、ピカソ、ユトリロ、ビュフェと、まさに王道のラインナップ(約75点)で名画を見る喜びに浸ることが出来ました。特に、展示室の一角を占めるかのように並んでいたシャガール(14点)とルノワール(8点)、そしてモネ(7点)が質量ともに優れていたと思います。それこそちらしの表紙にも掲載されている、ルノワールの「シュザンヌ・アダンの肖像」からして魅力十分です。豊かなブロンドの髪をふくよかに垂らした女性が、澄んだ青い瞳を大きく開いてこちらを見つめています。ぼんやりとしたオレンジ色彩の海より浮かび上がる、その穏やかな表情に釘付けになりました。吸い込まれてしまうような美しさをたたえています。



惹かれた作品を挙げていきます。まずは、波や静物等の力強いタッチでお馴染みのクールベから、印象深い女性を描いた肖像画、「ジョーの肖像」です。どこか気怠く、退廃の雰囲気も感じさせる女性が一人、鏡に見入っている姿を捉えていますが、そのモチーフ自体に「虚栄」の意味が込められてもいるのだそうです。赤らんだ頬とそのたくし上げる髪の重量感などが見事に描かれています。国内のコレクションでこれほど充実したクールベの肖像画を他に知りません。



大好きなシスレーは3点ほど出ていましたが、その中ではとりわけ晩年の「モレのポプラ並木」(1888)が魅力的です。燦々と降り注ぐ陽光に包まれた川辺の光景を、ほぼ点描による木立を中心に鮮やかに描いています。また空の抜けるようなブルーと川の色と、木立、もしくは草地のグリーンが、ともに後景、前景と対比的に置かれているのも印象に残りました。当地の風や光を感じるような臨場感にも溢れた作品です。



ヴラマンクの、通称「セザンヌの時代」と呼ばれる時期に描かれた「風景」(1911)も面白い作品です。いわゆるヴラマンクに見る激しいタッチは比較的影を潜め、その力強い色彩分割にセザンヌの画風を見ることが出来ます。また画中に登場するローマ時代の水道橋は、セザンヌも好んで描いたモチーフだそうです。ちなみにセザンヌでは、一点出ていた「サン=タンリ村から見たマルセイユ湾」が絶品でした。この水色はセザンヌ以外にまず表せない色だと思います。(上の画像はセザンヌです。)



抽象好きにとっては嬉しいカンディンスキーにも佳品が出ていました。また、それまでの流れからすると違和感さえ感じるビュフェの「椅子の上の静物」(1958)は強烈な印象を与える作品です。神経質にも見える執拗な線描によって象られた椅子や瓶には、ビュフェに独特な寂寥感が漂っていました。絵そのものとしては、印象派の優れた作品に及ばない部分もあるかもしれませんが、この展示で私が一番心打たれたものを挙げるとしたらまぎれもなくこれです。

普段、これらの作品は、寄託先の山形美術館にて公開されているそうです。一度、現地でも拝見出来ればと思いました。(10/13)
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