「日本美術『今』展」 日本橋三越本店ギャラリー

日本橋三越本店新館7階ギャラリー(中央区日本橋室町1-4-1
「東京藝術大学創立120周年記念企画 日本美術『今』展」
10/16-28



ついでにと言ってしまうのは失礼ですが、近くの三井で極上の陶磁を楽しんだ帰りに寄ってみました。日本橋の三越で開催中の「日本美術の『今』展」です。芸大の創立120周年企画とのことで、現、旧教授陣99名による最新作(一部、近作。)が一堂に会しています。ちなみに会場は、新館7階ギャラリー他、同フロア2つの特設スペースを含む計3カ所です。三越の展覧会としては過去最大級の規模かもしれません。

展示作品は日本画、油画、彫刻、工芸と幅広く揃っていますが、私の趣向の問題なのか、特に前者二つに惹かれるものがありました。まずはじめの日本画では、斉藤典彦の「かのおか」を挙げたいと思います。一見、木彫を思わせるような厚みのある紙を支持体に、淡い白や桃色の顔料が滲み出すように美しく広がっています。薄暗い照明にはやや映えない部分もありましたが、雲の谷間をのぞくような光景には魅入るものがありました。(ちなみに展示の最初に登場したのは、やはり平山郁夫でした。出品作家でも最大サイズと思われる超大作、計二点が出品されています。)



李禹煥の最新作「対話」(2007)も展示されています。お馴染みの白よりグレーへのグラデーションを見せるストロークが、画面中心よりやや外れた場所にて静かに鎮座していました。周囲の空気を変化させる力もある李の作品(実際にも彼の作品はこの展示で明らかな異彩を放っています。)を置くにはともかく会場が狭過ぎますが、既知の作家による親しみのある作品を見る奇妙な安心感を覚えることも出来ます。また既知といえば、つい先日、写美の個展を見て非常に感銘した鈴木理策の「SAKURA」も出品されていました。これも李同様、単独で展示されても今ひとつ魅力が浮き上がりませんが、逆に彼らが作品を通して稀有なインスタレーションを実現しているということを再確認出来ると言えるのかもしれません。



工芸、彫刻では、現学長の宮田亮平の「陰陽二行」に見る、摩訶不思議とも言えるような面白さが印象的でしたが、その他に記憶に残る作品が殆どありませんでした。ただ、前田宏智の花器におけるシャープな感覚には味わい深いものがあります。丁寧な仕事を思わせる磨き抜かれた処理も見事だと思いました。



ポストカード、図版、グッズ等、物販コーナーが、あたかも一催事の如く非常に充実していました。中村政人の「7-ELEVEN」のミニオブジェでもあれば購入したかもしれません。

今月28日まで開催されています。(10/21)
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