関西見聞紀行顛末記(Vol.1) 2007-10

京博の永徳に合わせて、金曜からの一泊二日で関西の美術館・博物館を廻ってきました。気のきいた旅行記など書けるものでもありませんが、拙い写真とともに歩いた箇所をだらだらと綴っていきたいと思います。お付き合い下されば幸いです。



朝の京都駅です。新幹線で9時半頃に到着しました。もちろんそのまますぐ永徳へという手もありましたが、この日の京博は夜間開館で夜8時まで開いています。観賞はそちらへ廻すことにして、まずは博物館界隈にある智積院、養源院の、等伯、宗達の絵を見に行くことにしました。超満員のバスで京都駅から東山七条へ、早くもひっきりなしに人がゲートをくぐる博物館を横目に、三十三間堂の脇を少し入ります。そこが養源院です。



宗達の象図や唐獅子と言えば高名な作品です。てっきりそれなりの人で賑わっているのかと思いきや、境内には誰もいませんでした。拝観は随分とご丁寧なガイド付きです。受付の方と一緒にカセットのアナウンスをききながら、まさに目と鼻の先にある杉戸絵を眺めることが出来ます。それにしてもガラスケースの中にあるとはいえ、現在も元あった杉戸のままに置いているとはさすが京都です。残念ながら作品の状態はあまり良くないようですが、それでも宗達の迫力ある筆を楽しむのには十分の環境でした。ちなみに唐獅子は来年、修復も兼ね、東博へ貸し出しする予定もあるそうです。





養源院は伏見城から移築して建てられたお寺です。自害して果てたという鳥居元忠の血の跡も残っているという廊下に生々しい歴史を感じながら、今度は歩いて智積院へと向いました。智積院は、ちょうど養源院と東山通を挟んだ反対側にあり、ゆっくり歩いても10分とかかりません。広大な境内に立ち並ぶお庭や金堂などの拝観は今回はパスして、そそくさと収蔵庫で公開中の等伯の楓図を見ました。こちらは温度、湿度の厳重管理された作品です。板の間をぐるりと取り囲むように襖絵が並んでいます。華々しい巨木の舞いは圧巻です。期待通りの見事な作品でした。





等伯の次は狩野派です。七条通を鴨川方向へ歩き、美術館のチケットなどの前売券を販売している本屋をひやかしながら、七条→三条京阪→東西線のコースで二条城へと進みます。ここはさすがに京都でも随一の観光地というだけあって、修学旅行生の団体などで賑わっていました。そう言えば私も中に入ったのは、いつかの遠足以来かもしれません。目当ては収蔵館にある狩野尚信の黒書院障壁画です。収蔵館は立派なお城の割には随分と小さな場所でしたが、城内の障壁画は殆どが複製とのことで本物を見るにはここへ行くしかないのでしょう。ちなみに尚信と合わせて、御所の大広間より移された「武蔵野図」なども展示されています。これらは、二条城が離宮として使われていた、明治から昭和前期に持ち込まれたものだそうです。



お城を出ると分厚い雲より雨が落ちてきましたが、今度は目の前の堀川通を上がるバスに乗って中立売へと進み、バス停より5分ほどの楽美術館へと歩きました。ここは以前、三井で楽焼の展示を見て以来、どうしても行きたかった場所です。京町家の趣きある建物が出迎えてくれました。それにしても居心地の良い美術館です。入口での丁寧なご挨拶や、清掃も行き届いた館内、または随所の生け花や小さなお庭をのぞむ休憩スペースなど、まさしくもてなしの心を感じさせます。楽焼の静けさがそのまま体現した空間とでもいえるかもしれません。耳に入るのは屋根を激しく打つ雨の音だけでした。この上ない環境です。





雨が全くやまず、むしろ雷も交じって激しくなって来たのには難儀しましたが、今度は楽美術館より、ちょうど烏丸通を今出川を軸にして反対側にある相国寺へと進みます。土砂降りの御所の横を通りながら、約20分から25分程度の道のりです。靴の中も濡れた頃にようやく相国寺に到着。展示は禅関連のものでしたが、目当てでもあった等伯の見事な屏風絵二点、または天目茶碗に探幽と、想像以上に充実した内容で驚きました。そして常設と化した若冲の葡萄や月夜芭蕉図など、かの重要な鹿苑寺障壁画二点もガラガラの環境で見ることが可能です。これから京都へお出かけの方は相国寺の展示も入れてみては如何でしょう。これはおすすめ出来ます。



時計を見るともう2時を過ぎていたのでこの近辺で軽く食事を済ませ、今出川より地下鉄にて御池乗換え東山下車、そして疎水の傍を歩いて今度は細見美術館へと向いました。琳派好きにはそれこそ聖地のような場所でもありますが、入ったのは今回が初めてです。チケットのかわりのシールを胸に貼り、洞窟の迷路のような不思議な建物の中を雪佳に魅せられながら歩き回ります。こちらは比較的さらっと見られる内容かもしれません。雪佳は改めてデザイナーだと思い入りながら会場をあとにしました。



この時点で時間は午後4時半を廻っています。そろそろ永徳です。バスで二条から七条へと下り、美術館の入口にある昔懐かしいからふね屋で少し休んだ後、期待を胸に特別展会場へと向いました。既に雨はほぼ小康状態でしたが、おそらくはあいにくの天候のせいもあったのでしょう。入場待ちなどの列も一切なく、平日の夕方以降ということを考えてもそれほど混雑していませんでした。例えばいつかの上野のオルセー展などの殺人的な混雑に比べればはるかにスムーズです。(但し、会場中盤に展示されている洛中洛外図の前だけは別です。最前列で見るための列が出来ていますが殆ど進みません。辛抱強く待つか、少し無理矢理気味に見るしかありませんでした。)結局、閉館の8時まで、会場内を行き来しながら思いっきり楽しみました。





さすがにこの時間になると開いている美術館もありませんが、等伯の重文も展示されている高台寺のライトアップはまだやっているというので少しのぞいてみることにしました。バスで安井へ行き、少し坂を上がってお寺に着いたのは8時半頃だったでしょうか。等伯の障壁画は遠くて殆ど見えず、(しかも保存状態に問題もありそうです。)この界隈のお寺にありがちな商売気が強過ぎるのには幻滅しましたが、縁台に腰掛けてしばしぼんやりとライトを追っかけるのは悪くありません。ちなみにここは夜にも関わらずかなり賑わっていました。観光スポットなのでしょう。

宿は五条にとっていましたが、最後にもう一歩きということで夜道をとぼとぼと川の方へと降りていきました。本当に長々としたエントリになってしまいましたが、2日目に行った奈良の正倉院展などは次回「Vol.2」へ廻したいと思います。

*一日目の旅程
養源院(宗達、象図・唐獅子図)→智積院(等伯、楓図)→二条城収蔵館(狩野尚信生誕400周年展)→楽美術館→相国寺承天閣美術館(相国寺の禅林文化展)→細見美術館・雪佳→京博・永徳→高台寺

*関連エントリ
関西見聞紀行顛末記(Vol.2) 2007-10
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