都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「鳥獣戯画がやってきた!」 サントリー美術館
サントリー美術館(港区赤坂9-7-4 東京ミッドタウン・ガーデンサイド)
「鳥獣戯画がやってきた! - 国宝『鳥獣人物戯画絵巻』の全貌 - 」
11/3-12/16(前期:11/3-26 後期:11/28-12/16)
前後期の両方とも見に行ってきました。鳥獣戯画をはじめ、それに関連する墨画や御伽草子などが公開されています。サントリー美術館の「鳥獣戯画がやってきた!」展です。
まず表題の鳥獣戯画をさて置き、今回、私が一番面白く思えたのは御伽草子の「鼠草子絵巻」(室町時代)でした。そもそもわざわざ二度、乃木坂まで行ったのも、この可愛らしくユーモアに溢れた鼠草子を全巻見たいがためとも言えるかもしれません。ともかくは鼠と人間が結婚して家庭を築くというストーリーからして惹き付けられるものがありますが、それがバレれて「破局」するのはまだしも、その後、失意で出家した鼠が途中に出会った猫と意気投合して、猫型の瓦のある社で祈るというくだりはもはや滑稽の極みです。また、絵巻のどこをとっても生き生きとした鼠の描写にも目が奪われましたが、権頭鼠が立派な衣装に身を纏い、何とも嬉しそうにニヤケタ顔で婚礼を挙げるシーンと、バレた後に見せる意気消沈する様子の落差には、どこか男の悲哀すら感じてしまいました。それに、人間の格好をした鼠からただの野鼠になってしまうというくだりも演出効果に長けています。結局、上辺だけ取り繕っても真を語らなければ何一つうまくいかない、と言う警句を見ているような気さえしました。
「鳥獣人物戯画画巻」は一度の展示替えを挟んでの全巻展示です。甲、乙、丙、丁と揃う中で、圧倒的に興味深いのはやはり甲巻でした。可愛らしいとするよりも「化け兎」とも称せるような不気味な動物人間たちが大はしゃぎする様子が描かれています。また「怪獣・珍獣系」の乙巻、動物から人間へと姿の変わる「変身系」の丙巻、そしてもはや「脱力系」の丁巻などもそれぞれに見所があります。ただ丁巻の描写だけは、他と全くと言って良いほど異なっています。展示では断簡等も示し、鳥獣戯画画巻の全体像を詳らかにする試みもなされていましたが、そもそも年代も作者も異なるであろう4つの画巻を、何故一つの作品として見ているのかは今ひとつ分かりませんでした。
「勝絵絵巻」や「放屁合戦絵巻」などを余すことなく展示していたのには好感が持てます。鳥獣戯画におけるパズルも、このショッキングな作品を前にしては影が薄いかもしれません。
画巻の展示ということで行列もつながっていましたが、それほどストレスなく楽しむことが出来ました。明日、16日まで開催されています。(11/17、12/8)
「鳥獣戯画がやってきた! - 国宝『鳥獣人物戯画絵巻』の全貌 - 」
11/3-12/16(前期:11/3-26 後期:11/28-12/16)
前後期の両方とも見に行ってきました。鳥獣戯画をはじめ、それに関連する墨画や御伽草子などが公開されています。サントリー美術館の「鳥獣戯画がやってきた!」展です。
まず表題の鳥獣戯画をさて置き、今回、私が一番面白く思えたのは御伽草子の「鼠草子絵巻」(室町時代)でした。そもそもわざわざ二度、乃木坂まで行ったのも、この可愛らしくユーモアに溢れた鼠草子を全巻見たいがためとも言えるかもしれません。ともかくは鼠と人間が結婚して家庭を築くというストーリーからして惹き付けられるものがありますが、それがバレれて「破局」するのはまだしも、その後、失意で出家した鼠が途中に出会った猫と意気投合して、猫型の瓦のある社で祈るというくだりはもはや滑稽の極みです。また、絵巻のどこをとっても生き生きとした鼠の描写にも目が奪われましたが、権頭鼠が立派な衣装に身を纏い、何とも嬉しそうにニヤケタ顔で婚礼を挙げるシーンと、バレた後に見せる意気消沈する様子の落差には、どこか男の悲哀すら感じてしまいました。それに、人間の格好をした鼠からただの野鼠になってしまうというくだりも演出効果に長けています。結局、上辺だけ取り繕っても真を語らなければ何一つうまくいかない、と言う警句を見ているような気さえしました。
「鳥獣人物戯画画巻」は一度の展示替えを挟んでの全巻展示です。甲、乙、丙、丁と揃う中で、圧倒的に興味深いのはやはり甲巻でした。可愛らしいとするよりも「化け兎」とも称せるような不気味な動物人間たちが大はしゃぎする様子が描かれています。また「怪獣・珍獣系」の乙巻、動物から人間へと姿の変わる「変身系」の丙巻、そしてもはや「脱力系」の丁巻などもそれぞれに見所があります。ただ丁巻の描写だけは、他と全くと言って良いほど異なっています。展示では断簡等も示し、鳥獣戯画画巻の全体像を詳らかにする試みもなされていましたが、そもそも年代も作者も異なるであろう4つの画巻を、何故一つの作品として見ているのかは今ひとつ分かりませんでした。
「勝絵絵巻」や「放屁合戦絵巻」などを余すことなく展示していたのには好感が持てます。鳥獣戯画におけるパズルも、このショッキングな作品を前にしては影が薄いかもしれません。
画巻の展示ということで行列もつながっていましたが、それほどストレスなく楽しむことが出来ました。明日、16日まで開催されています。(11/17、12/8)
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