都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「秋の彩り」 山種美術館
山種美術館(千代田区三番町2 三番町KSビル1階)
「秋の彩り」
11/17-12/24
遅ればせながらの秋を満喫しました。紅葉、名月など、秋をテーマとする山種美術館の名品展です。
秋の味覚と言えば柿ですが、速水御舟の「柿」(1923)は趣深い作品です。墨も滲む土色をした背景にそっと置かれているのは、仄かな朱色の交じる葉を残した柿の木の一片でした。熟れ過ぎたのか、少し黒ずんでもいる柿は、もう食べ頃を過ぎ、このまま朽ち果てて行くかのような儚さをも感じさせています。また御舟ならではの精緻な描写、例えば非常にリアルな枝の立体感、もしくは色遣いなども充実していました。見入ります。
カラリスト平八郎より秋の色をモダンに配した佳作が登場しています。それがこの「彩秋」(1943)です。リズミカルににゅっと突き出したすすきの穂の先には、まさに秋を彩る色、朱や茶色などをした葉が何枚も垂れ下がっています。また一部、青や緑などを用いて、秋色との鮮やかなコントラストを描いているのも見事でした。しっとりとした背景の白にも良く映えています。
抱一が4点も出ていたとは知りません。金地に抱一一流の流麗な秋草の舞う山種ご自慢の「秋草鶉図」(19世紀)も魅力溢れる作品ですが、今回特に興味深かったのは、「菊小禽」(1824-29)と「飛雪白鷺」(1823-28)でした。これは現在確認されている4種(掛幅装)の「十二ヶ月花鳥図」と同一シリーズ、つまりは全幅こそ揃っていないものの、おそらくは十二点あったとされる通称「綾瀬賛」5点のうちの2つだそうです。この綾瀬賛は現在、細見、フリーア美術館、バークコレクションに各1点づつ、そしてここ山種に2点の計5点が所蔵されているわけですが、その両者がともに並んで紹介されていました。ちなみに前者の菊は9月、また後者の鷺は11月の部分にあたります。菊は尚蔵館、及び畠山の作(菊が湾曲していない部分は異なっています。)と、また菊はプライス、そして出光本に似ている(但し下部の白鷺が綾瀬賛のみ一羽です。)とも言えそうです。その差異を見比べて見るのも面白いかもしれません。
展覧会は明日までの開催です。また次回は来年一月より、冬を通り越しての「春のめざめ」展が予定されています。(12/22)
「秋の彩り」
11/17-12/24
遅ればせながらの秋を満喫しました。紅葉、名月など、秋をテーマとする山種美術館の名品展です。
秋の味覚と言えば柿ですが、速水御舟の「柿」(1923)は趣深い作品です。墨も滲む土色をした背景にそっと置かれているのは、仄かな朱色の交じる葉を残した柿の木の一片でした。熟れ過ぎたのか、少し黒ずんでもいる柿は、もう食べ頃を過ぎ、このまま朽ち果てて行くかのような儚さをも感じさせています。また御舟ならではの精緻な描写、例えば非常にリアルな枝の立体感、もしくは色遣いなども充実していました。見入ります。
カラリスト平八郎より秋の色をモダンに配した佳作が登場しています。それがこの「彩秋」(1943)です。リズミカルににゅっと突き出したすすきの穂の先には、まさに秋を彩る色、朱や茶色などをした葉が何枚も垂れ下がっています。また一部、青や緑などを用いて、秋色との鮮やかなコントラストを描いているのも見事でした。しっとりとした背景の白にも良く映えています。
抱一が4点も出ていたとは知りません。金地に抱一一流の流麗な秋草の舞う山種ご自慢の「秋草鶉図」(19世紀)も魅力溢れる作品ですが、今回特に興味深かったのは、「菊小禽」(1824-29)と「飛雪白鷺」(1823-28)でした。これは現在確認されている4種(掛幅装)の「十二ヶ月花鳥図」と同一シリーズ、つまりは全幅こそ揃っていないものの、おそらくは十二点あったとされる通称「綾瀬賛」5点のうちの2つだそうです。この綾瀬賛は現在、細見、フリーア美術館、バークコレクションに各1点づつ、そしてここ山種に2点の計5点が所蔵されているわけですが、その両者がともに並んで紹介されていました。ちなみに前者の菊は9月、また後者の鷺は11月の部分にあたります。菊は尚蔵館、及び畠山の作(菊が湾曲していない部分は異なっています。)と、また菊はプライス、そして出光本に似ている(但し下部の白鷺が綾瀬賛のみ一羽です。)とも言えそうです。その差異を見比べて見るのも面白いかもしれません。
展覧会は明日までの開催です。また次回は来年一月より、冬を通り越しての「春のめざめ」展が予定されています。(12/22)
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