「工芸の力 - 21世紀の展望」 東京国立近代美術館・工芸館

東京国立近代美術館・工芸館千代田区北の丸公園1-1
「開館30周年記念展2 - 工芸の力 21世紀の展望 - 」
2007/12/14-2008/2/17



新しい「工芸」の在り方を模索します。開館30周年記念展の第二弾は、三輪壽雪や前田昭博らより、現代アートでもお馴染みの須田悦弘、北川宏人らまでの集う幅広い展覧会でした。

須田といえばかのひっそりと佇む木彫ですが、今回、それを探す難易度はやや高めです。展示されているのは「葉」や「枝」、それに「雑草」など、全て最新作による計9点の小ぶりな木彫ですが、それらがいつもの如く、あたかも隠されているかのように散らばっています。(厳密に言えば『展示室2』以降です。)もちろん、展示リストを見てしまうと場所が分かってしまうわけですが、まずはそれを見ないで須田の木彫を探し歩くのも面白いのではないでしょうか。ヒントは「外から風に吹かれてやって来た枯葉。」とでもしておきたいと思います。かの小さな木彫がそれぞれの場所に置かれることによって、工芸館全体が須田のインスタレーションと化しているかのような気分も味わうことが出来ました。ひらりと舞い降りたような「葉」の一枚を見るだけでも、それを見つける喜びと、その高いクオリティに改めて感銘させられるというものです。期待を裏切ることはありません。

どこかSF的な感覚さえ呼ぶ、北川宏人の人物像(上段、ちらし画像の彫像です。)もまた非常に充実しています。遠目からでは木彫のようにも見えますが、実際はテラコッタにアクリルの彩色を施したものでした。異様とも言えるほどやせ細った体に、鮮やかでポップな服を纏う人物は、その面長の顔に大きく見開かれた目の印象と相まってか、今風と言うよりも、どこか近未来の人間をタイムスリップさせてこの場に呼んで来たような雰囲気さえ漂わせています。それにノミの跡のようにして覆う無数のテクスチャも味わい深いものです。テラコッタの素材感を確かに残しておく、そのリアル過ぎない表現にまた面白さがありそうです。

 

陶芸家の二名、三輪壽雪、前田昭博の作品にも見入ります。三輪の茶碗に見る白い釉薬は、ちょうどザラメとも牡丹雪とも言えるような趣です。また前田の壺は、その透き通るような白さと、面的でかつ卵のようなフォルムが、まさに洗練された美をたたえていました。今にも花を咲かせようとする蕾み、とも言えるのではないでしょうか。内部に何か力を溜め込んでいるような、言わば逞しい造形を見る作品です。



その他にも、まるでホイップクリームがほら貝のような曲線を描くオブジェ、猪倉高志の「立体の水」シリーズと、しなやかなガラスが花などを象る高見澤英子の作品などが心にとまりました。またキャプションとして、各作家の「言葉」が掲示されているのも好印象です。作り手の今を感じることが出来ます。

来年2月17日までのロングランの展覧会です。これはおすすめです。(12/22)

*関連エントリ
「開館30周年記念展1 - 工芸館30年のあゆみ」 東京国立近代美術館・工芸館
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