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アールブリュット展やボーダレス・アートのいくつかのイベントや展覧会で魲万里絵さんの絵を見る機会があり、その独自の世界観の絵や言葉に興味を持っていました。
現在、近江八幡市のボーダレス・アートミュージアムNO-MAで美術館所有の魲万里絵コレクションと近作の展覧会が開催されています。
企画展などで数名のアーティストの展覧会の時だと魲さんの作品は数点以下の展示になりますが、今回は個展ですので全館(2階建ての昭和初期の民家を改築した美術館)が魲万里絵さんの作品で埋め尽くされています。
展覧会の構成は4部構成で初期の作品から近作まで、魲万里絵さんの作品を掘り下げるようにその軌跡が分かる内容となっています。
<chapter1> 『制作の軌跡2007~2016』
絵を描き始めた2007年から2016年までの制作の軌跡をたどるように作品が展示されています。
NO-MA美術館のHPには作品の軌跡は『誰の心の中にもあるのかもしれない衝動や本音を、包み隠さず表現してきた歴史ともいえる』と紹介文があります。
(ポストカード:[無題]2008)
<chapter2> 『人を拵える』
『人を拵える(こしらえる)』と題されたchapter2は何とぬいぐるみの人形です。
人形を作るようになったのは、近所のスーパーで見切り品のぬいぐるみの本が売られていたのを見つけたのがきっかけで、「自らが描き出す人すらも人形になり得るのだと感じて」人形を作るようになったと書かれていました。
画像はありませんが、独特の絵に登場する人のようなものが、ぬいぐるみで作られた作品となっていました。
(ポストカード:[否、否、否定]2010)
<chapter3> 『絵のタイトル』
魲万里絵さんは絵とともに興味深いのは絵に付けられたタイトルに使われる言葉です。
絶妙の言葉の感性だと思っていたのですが、本人は偶然聞いた言葉をはめているだけで「タイトルと絵は直接つながりはない」とされています。
chapter3に展示された作品には『メメント・モリ』を付けたタイトルの絵が並んでいます。
メメント・モリとはラテン語で「死を想え」や「死を忘れるな」といった死生観を現す言葉なんですが、魲さんにかかると...
「愛を問うメメント・モリ」、「善人の振りのメメント・モリ」、「浮沈メメント・モリ」、「メメント・モリが来たら頭を隠せ」、「メメント盛」となる。
「メメント盛」なんて言葉を使える人がいるんだよ!
(ポストカード:[浮沈メメントモリ]2009)
(ポストカード:[崩れていしまえばいいのに]2011)
<chapter4> 『遠くて近い私の風景』
「頭の中ははっきり四角い空間じゃないから、頭の中をそのままというわけにはいかないので、それに近い感じで...」
「本心や衝動に密接した『近く』にある『風景』かもしれない。とコメントが書かれています。
(ポストカード:[ヒトノアシモトスクウヤツ]2010)
魲さんはスケッチブックに描いた作品が多いのですが、中には【『ヒトノアシモトスクウヤツ』⇒製図図面の青焼き】、【『絶対正義』⇒朝日新聞】、【『存在の間違い』⇒ベットの敷板】、なんて作品がありました。
ところで、会場の一角には「ぬり絵ワークショップ」が設けられていて魲万里絵さんの絵を下書きとしてぬり絵が出来るようになっていました。
NO-MAには子供連れの方も来られますが、子供たちにボーダーなどありませんから、自由に描いたぬり絵の展示がありましたよ。(画像はもらって帰った下書き)
魲万里絵さんの作品はグロテスクで暴力的・猥雑なものが多いのですが、作品から発せられるエネルギーのようなものを強く感じます。
また絵のタイトルに見られるような日常を揶揄するような言葉感覚の痛快さからしても、特殊でカルトなアーテストとは思うことはできません。
「本心や衝動に密接した『近く』にある『風景』」という表現が一番近いのかもしれませんね。