僕はびわ湖のカイツブリ

滋賀県の風景・野鳥・蝶・花などの自然をメインに何でもありです。
“男のためのガーデニング”改め

ササユリを求めて繖山に登る!

2024-06-27 06:30:30 | 御朱印蒐集・仏像・磐座・巨樹・古墳・滝・登山
 ササユリは日本特産のユリ科の植物で、10~15cmの大きな花を咲かせ、葉は笹のように見えることからその名の由来になっているといいます。
花期は6月初旬から下旬にかけてとなりますが、近年ササユリは減少してきていると言われます。

森林の伐採がされなくなり光が当たらなくなって苗の成長に影響しているといいますが、鹿が増えて保護していても鹿の食害にあうことも多いといいます。
繖山には鹿はいないようですので鹿の食害はないものの、人が花を摘んだり、根っこから掘り起こして持ち帰る人もいるとのことで保護している人を悩ましているとか。



ササユリは安土町側の「近江風土記の丘」から繖山の山頂手前の辺り、地獄越から雨宮龍神社の辺りにありそうだと当たりを付ける。
北腰越から繖山山頂を目指すものの、30℃を超える猛暑日の上に、無風で湿度が高く、吹き出す汗に心が折れ、繖山山頂までのピストンに予定変更。

このコースには西国三十三観音霊場の石仏が祀られた「石仏の道」があり、番外札所・結願の華厳寺から始まり、霊場を第一番まで遡っていきます。
道は途中で繖山の山頂方向と桑実寺方向に分岐し、第二十六番の一乗寺より番号の若い札所は桑実寺への道に続いて行きます。



登り始めてすぐの所にある鳥居には2躰の「子授け地蔵」が祀られており、後方には「海上安全」と彫られた石の祠があります。
麓には西の湖があり、かつては内湖が広がっていたと想像されますので、湖上(海上)の安全を祈念したのではないでしょうか。





石仏は西国三十三観音霊場の石仏以外の仏もあります。
大きく立派な石仏は三尊石仏を祀り、光背には7躰の化仏を造られた年代などは分かりませんが、立派な石仏です。



当方の西国三十三観音巡礼は札所32寺と番外札所3寺を巡礼を済ましましたが、第27番札所の圓教寺だけが未参拝となっています。
予定していた時にコロナが蔓延して見送ったままになっており、いまだ結願出来ていませんので、取り合えず石仏にだけお参りする。



繖山に登る道は複数ありますが、どこも木段が続いて距離以上にしんどく感じ、歩きながら花を探すのが気休めになります。
最初に見つけた花はオカトラノオで、ちょっとした群生になっていました。



白い5弁花の花はノイバラでしょうか。(違うような気もする)
見分けるポイントが分かると同定出来るようになるのですが、ポイントが分からないと誤った同定をしてしまいますね。



数は少なかったものの、これも季節の花のコアジサイが咲いていました。
同じ季節でも山が違うと開花のスピードがかなり違うのが興味深いところです。



登山道の途中からササユリを見かけるようになり、この日の時点では満開もしくはいくつか蕾のものがあり、ちょうど見頃という感じでした。
最初に出会ったのは白いササユリで、ササユリは支柱で固定されていましたので誰かお世話されている方がおられるようです。



このルート上のササユリはシロバナが多かったのですが、薄ピンクの花もあります。
まだ蕾ながらも赤味のあるものがありましたので、咲けばピンク色の花を咲かせるのかと思います。



ササユリのトリオは花盛りの三姉妹のように見えます。
このトリオが咲いていた場所には群生のようにササユリがいくつも咲いていました。



ここまでいくつもの木段を登ってきましたが、山頂が近づくと木段の傾斜がきつくなり、汗が吹き出してきます。
頬をつたった汗が道に落ちるのが分かるようなサウナ状態でしたので、登るのは山頂までとし、その先の地獄越~雨宮龍神社への縦走は諦めることにします。



つい2週間前にもやってきた繖山の山頂(433m)に到着。
岩の上に腰かけてやっと休憩です。



タッチしないけど三角点もパチリ!
1時間足らずで山頂まで来れる山ですが、猛暑日の低山の暑さはこれからの季節は難敵ですね。



山頂を少し下ったところに景色の広がっている場所がありました。
眼下には西の湖、その手間には安土山があり、西の湖の奥には八幡山や長命寺山。
湖東側の山の蔭になって霞んでいますので琵琶湖は見えませんが、奥にある高い山脈は武奈ヶ岳など比良の山々でしょう。



下山して脇道を安土城考古博物館に向かって歩いていると、タイサンボクの大きな群生地があり、沢山の大きな花を咲かせていました。
最初はホオノキかと思いましたが、花は「タイサンボク」といい、モクレン科の常緑高木で北米南東部原産でアメリカ合衆国東南部を象徴する花木だといいます。



今の季節は街角や家の庭などでもアジサイの花が咲いているのを見かけますが、次は蓮や睡蓮やヒツジグサなど水辺の花がにぎやかになってくるのでしょう。
ホオノキやタイサンボクの大きな花を見ていると、蓮の大きな花を連想してしまいますね。


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小倉 宗 個展「禿カムロ KAMURO」~ギャラリーからころ~

2024-06-23 19:30:30 | アート・ライブ・読書
 小倉 宗さんから個展のポストカードを送って頂いておりましたので、大阪は高槻市にある「ギャラリーからころ」へ作品を見に訪れました。
小倉さんの作品を見るのは昨秋に開催されたアート・イン・ナガハマ(通称AIN)以来のことですから約8カ月ぶり。
また、AINで最初に小倉さんの存在を知ったのは2007年のことですから、17年来のファンになります。

これまで10数枚の絵画と4枚の銅版画と絵本の「じゃんけん戦争: あっちの国こっちの国」を所有していますが、欲しくなる作品が次々と生み出されてくるので終わらない。
あっそうそう!小倉さん直筆の当方の似顔絵なんていうウルトラ・レアな絵もありますよ。



これまでも個展の情報を入手することがありましたが、如何せん遠くでの開催が多くて中々行けないのですが、高槻市くらいならと足を延ばしました。
ビルの1Fにある「ギャラリーからころ」へ一歩足を踏み入れると、四方に色彩豊かな小倉作品が展示され、オグラ・ワールドが広がる。
会場内では大きな黒い犬がウロウロと歩いていて、ギャラリーだけどアットホーム感もあります。



入って右側の壁には8枚の絵が展示され、ユミンや卑弥呼や鳥、大津絵をモチーフにした絵が並びます。
昔の小倉さんの作品にあった怖い感じや尖がった感じの絵はすっかり消えて、穏やかで優しく愛情に溢れた作品が並びます。



入口の対面の壁には2枚の絵が展示されていて、テーマになっている「鳥」はこの何年かよく見る題材で、「禿」は最近の題材のようです。
断片的にしか見てはいませんが、かれこれ17年も同じ作家さんの絵を見ていると、色使いや描きたい絵の変遷が何となくだけど分かるような気がします。



ギャラリースペースの左側お壁には、大津絵の鬼の念仏が2枚と赤い鶏冠の鶏の絵が2枚。
特に一番右の絵は伊藤若冲の鶏図を意識したかのような大きな作品で目を引きます。



入口側の壁には5点(写真は4点)の絵が並び、それぞれテーマは違うようです。
禿・ペンダント・ペア・(ギター)などが登場しますが、時刻はいつもルナティックな三日月の出る夜です。



「まどろみ」という絵はネットで見た時に“愛情と優しさに満ちた絵”だなぁと魅力を感じていた絵で、やっと実物を見ることが出来ました。
オグラ・オレンジを背景に空にはクレセント ムーン。まどろむ2人はまるで母親が小さな子供と優しい時間を過ごしているかのようです。



「禿ユミン」は遊女見習いの童女が花魁になったような絵です。
今回の個展では花魁の姿をしたユミンや女性の絵が他にもありました。
個展のタイトルが「禿カムロ KAMURO」ですので、「禿」が新しいテーマになってきたようですね。



若冲を連想させる大作「ふたり」は真っ赤な鶏冠に雄雌で色分けされた羽色が綺麗です。
背景のグラディエーションが鶏の派手さを引き立たせていますね。



「ギャラリーからころ」に「ぶらっくほーる」という絵本が売ってあり、文が霰雫 霙(あらずくみぞれ)さん、絵が小倉宗さんですのでさっそく購入しました。
霰雫 霙さんの文は、稲垣足穂の世界観を思い起こさせる言葉が並び、タルホの宇宙的感性とでも呼べるようなファンタジー世界が描かれます。
夜のレストランにやって来た男が水晶や月や星の飲み物や料理を平らげていく独特の別世界観です。



小倉さんの絵は「じゃんけん戦争: あっちの国こっちの国」の頃のスタイルの絵で描かれている感じです。
霰雫 霙さんの文がとても良く、霰雫さんの文と小倉さんの絵の相乗効果で別世界への扉が開かれます。



「禿カムロ KAMURO」展は四方全てに絵が展示された明るい雰囲気のギャラリーで、今回の展示作品は色合いが明るい作品が多かったことあって華やかな個展でした。
個展で展示された作品のうち、どの作品が秋のアート・イン・ナガハマで見られるでしょうか?楽しみですね。
尚、「ギャラリーからころ」では7/14~20に開催される『もちよってん♡わたしの好きな○○〇♡』にも小倉さんの作品が出展されるそうです。


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山門水源の森でササユリが咲き誇る!

2024-06-21 07:22:22 | 御朱印蒐集・仏像・磐座・巨樹・古墳・滝・登山
 ササユリの花期が始まり、今年はどこへササユリを見に行こうか迷ってしまう季節がやってきました。
昨年は複数の山でササユリに遭遇することが出来ましたが、今年は確実にササユリに出会える場所として「山門水源の森」を訪れることにしました。

山門水源の森では最初に入山届代わりの来訪者名簿に記帳して説明を聞きますが、驚いたのは熊出没注意の看板と定点カメラのリアルな熊の出没写真でした。
入口にある事務所では熊鈴が売られていましたので、熊に会ったらどうしようと少し心配になるものの、来客者が多いので熊は出てこないだろうと思うことにする。
また、コースが3時間コース、3.5時間コースと長く、ちょっとした散策コースと想像していたのとは大違いだったのも事前の調査不足。



「やまかど森の楽舎」という事務所の周辺は花盛りとなっており、この日歩いた「四季の森コース」の前半部はササユリとコアジサイが多かった。
コース入口には大きく育ったヤマボウシがあり、白い花を付けています。
ヤマボウシは道中に何本か見かけますが、大きく育った木が多かったですね。



薄ピンクの花被片をしたササユリをまず最初にパチリ!
横に写っている虫は何でしょう?同定できませんがジョウカイボンの仲間のようにも見えます。



白いササユリが2輪並んで咲いています。
ササユリは大きめの花を咲かすにも関わらず茎が非常に細く、よくあの細さで支えられるなと思います。



コアジサイも青っぽい花と白い花がありますが、青い花の方に魅かれてしまいます。
コアジサイはあちこちで咲いていて、見たこともないような大きな群生地もあり、山門水源の森の自然の豊かさに驚きます。



道はアップダウンが多く、時には木段を登ったり、九十九折の道やトラバース道もあります。
後で気が付いたのですが、もらったパンフレットには“軽登山以上の装備で入山してください。”の注意書きがありました。



最初は沢道を進むことになり、水音が響く中、清流の涼しい風が気持ち良い。
これだけ自然に恵まれた場所ですが、ウグイスの声は聞こえていたものの、他の野鳥の声はあまり聞き取れなかった。
早朝から来ていれば野鳥にも出会えたかもしれませんね。



あれっ?ここは赤坂山の堰堤を越えた所なの?と思えるような沢道です。
山門水源の森の道は、軽く歩ける散策道でなくてほとんど登山道でした。



沢道で見つけた花は、紫色の小さな花を付けたタツナソウ。(だと思う)
他にも小さな花を咲かしている植物はあったものの、小さいのと日陰だったこともあってピントが合わず撮れませんでした。



コアジサイは今度は白い花で。
今の季節に山登りすると、よく見かける花で標高の違いで開花状態が違っていたりするのも山歩きの楽しさのひとつです。



ササユリも咲いていましたよ。
左が薄ピンクで、右が白。どっちの花色が好きですか?



ニガナも黄色い小さな花を咲かせています。
花に詳しい人なら、もっといろいろな花を見つけられるのでしょうけど、まぁ花の経験と知識の習得はこれからですね。



コースは沢道コースから湿原コースに入ると、山と湿原の自然に囲まれた場所に圧倒されてしまいます。
見える山が何という山か分からないものの、もう少し北にある深坂峠を越えると福井県ですから、県境近くに位置するのかと思います。



山門湿原に沿って歩く道は木道になっており、木道がなければ歩くのを躊躇われるような道なので整備されているのはありがたい。
この辺りまではササユリに鹿除けネットが張られていて、ササユリは保全されているが、この先は鹿の食害でササユリはまばらになる。



南分岐に辿り着き、フルコースになる「ブナの森コース」へ進むか、「四季の森コース」に進むか迷うが、花がなくなってきたので四季の森へと進みます。
四季の森コースは同じ山でもこれだけ植生が違うのかと驚くほど花は見かけず、アップダウンの道が続きます。



道中、ひたすら探していたのはギンリョウソウで、すくっと立ち上がったギンリョウソウは見つけられなかったものの、2カ所でギンリョウソウを発見。
ギンリョウソウは光合成はやめてしまい、菌類から栄養を奪って生きていて(菌従属栄養植物)、その姿から別名ユウレイタケと呼ばれます。



よく写真などで見るギンリョウソウは複数のギンリョウソウが茎を立てている姿が多いですが、これらは倒れたような姿です。
とないえ、枯葉に埋もれそうになっている中から2つ見つけることの出来たのは運が良かった。



山門水源の森で子供の頃によく遊んだという人に聞いた話では、夏に昆虫採集に行くとカブトムシがバケツ一杯取れたとのこと。
見た昆虫の中で唯一撮れたのはヒョウモンエダシャク(多分)で、白黒の豹紋と後翅の淡黄色の綺麗なシャクガの仲間です。



では、ここからはこの日の目的だったササユリ特集です。
ササユリの咲く山はいくつか見ましたが、山門水源の森のササユリの数の多さには驚くばかりでした。



花色も濃いのやら白いのやら中間的なのやらですが、色の濃い順に並べました。
最初はピンクの濃いやつ、次に中間的な薄いピンク、最後は白花のササユリです。

↓ ピンクの濃いササユリ


↓ 中間的な色合いのササユリ


↓ 白いササユリ


ササユリは花の状態のいいもの、花期が終わりかけているもの、まだ蕾でこれから開花しようとしている奴などありました。
数が圧倒的に多かったので、今シーズン分のササユリを堪能しつつも、別の山でササユリに出会ったらまた嬉しくなるのでしょうね。
おまけは山門水源の森の近くにある「雨下り(あめさがり)の滝」です。10mほどの滝なので通り過ぎてしまうような滝です。




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黒河峠から三国山の山頂へ~サラサドウダンにやっと会えた!~

2024-06-15 15:30:30 | 御朱印蒐集・仏像・磐座・巨樹・古墳・滝・登山
 山と渓谷社により「花の百名山」に選ばれていて「花の山」として人気の高い赤坂山では5月中旬から6月中旬にかけてドウダンツツジの季節になります。
山系には紅色の花が釣鐘のように咲くベニドウダンと、基部が淡黄色で先端が淡紅色で縦に紅色の筋が入るサラサドウダンが咲きます。

赤坂山の麓にあるマキノ高原の「温泉さらさ」はサラサドウダンに因んで名前が付けられるほど当地に根付いた花です。
実際のところ、赤坂山にはベニドウダンは沢山咲いているものの、サラサドウダンは三国山の方に多く群生しています。



三国山方面には赤坂山の山頂から明王の禿を経由して行くことになりますが、ピストンだとかなり距離があります。
そこで今回は黒河峠から三国山に登ってサラサドウダンを探しに訪れました。



黒河峠は県道533号線から林道に入り、舗装道が途切れる辺りに車を停めて、登山口まで林道を歩いて行きます。
黒河林道には熊出没の情報があり、地元の方に聞いてみたら“会ったことあるけど熊の方が逃げていったよ。”と逞しいのやら、恐れ知らずなのやら。

林道を約30分歩き切ると、登山口のある黒河峠(標高567m)へ到着。
ここにはトイレ施設がありますが、マキノ高原側の登山者のにぎわいと比べると登山者は少なめの印象を受けます。



林道では偶然出会った地元の方といろいろ話しながら歩きましたので、単調な未舗装林道も退屈することなく登れました。
その方が登山口からもう少し一緒に行くと言って下さいましたので、登山開始の頃は2人での登山となりました。



道の両端の草が被ってしまっている道をしばらく登ると、細く使われていないような未舗装の林道に出ます。
林道を横切ったところにある次の登山口から登山再開となり、ここで地元の方とはお別れします。



2つ目の登山口の入口にはヤマボウシが咲いていて、花のお迎えです。
ここまでの林道にはコアジサイが咲いていましたが、登山道へ入ると標高が高くなってまだコアジサイは咲いておらず、高さによる花期の違いを実感します。



道は急勾配の道はほぼないものの、やや狭めの道が崖沿いに続きますので足元注意が必要かな。
そして道に木の枝が被っている場所が多く、身長高めの当方は3回頭をぶつける羽目となってしまいました。



山頂までの登山道で唯一あった鎖場です。
足を掛けるように岩が削られていますので、鎖を使って楽々と登れます。



景色が見渡せる広場のような所もあって、野坂山地の山々が一望出来ます。
晴れたり曇ったりの繰り返しの転機でしたので見渡せる範囲は狭いですが、もう少し標高の高い場所まで登ると琵琶湖がよく見えるようになります。
正面の山は乗鞍岳(滋賀)で一番手前のピークが黒河峠の辺りでしょうか。



岩場の後方には斜めに割れ目が入った巨石があり、高さと幅が約5mほどあるので写真で見るより大きく感じます。
この岩は「アザラシ岩」と呼ばれているようで、見ようによっては目と鼻の孔と空いた口のように見えないことはないですね。



いままで山登りをしてきた中で見たことがなかったのが湿原の木道です・
三国山湿原と呼ばれる場所にはよく整備された木道が設置されており、この辺りには初夏にキンコウカの花が咲くそうです。



ちなみにこの木道の終点近くにはサラサドウダンの巨樹があります。
根元から何本も枝分かれして広がっており、花も沢山付けていました。



三国山が近くなってきたのが分かるのが、木段が増えて急登を登るようになった頃。
黒河峠(林道)からここまでそれほど急な道はありませんでしたが、ここからの約400mは最後のひと踏ん張りになります。
直前の分岐は三国山と明王の禿に分かれていましたので、この分岐で赤坂山への道と三国山への道に分かれる。



そして三国山山頂の標高876.3mに到着です。
赤坂山より約50mほど高く、寒風と比べても30m近く高いので、野坂山地系の山で当方が登ったことのある山の中では最高峰です。



山頂部はあまり広くはないけど座れる石があるのが助かります。
三等三角点、点名:三国が横にあって、ノータッチで写真のみ撮影。



もう少しすっきりとした天気だとよかったのですが、クリアーな空だったら伊吹山や琵琶湖がはっきりと見えたことでしょう。
では、これから下山して途中で見つけた何ヶ所かで咲いていたサラサドウダンを見ながら下山しましょう。



赤坂山~明王の禿、黒河峠~三国山にはベニドウダンがあちこちに生えていますが、サラサドウダンは三国山の登山道に多いように感じました。
これまでに見たドウダンツツジはおそらくベニドウダンと思われるものが大半で、これぞサラサドウダンと言えるものは少なかったと思います。

ベニドウダンは紅色のもの、薄い紅色のものがあり、見る方の期待値がサラサドウダンに傾いているので同定に迷いがありました。
しかし、今回はこれぞサラサドウダンと言い切れる花に沢山出会えて、一年越しの希望が叶いました。



サラサドウダンには先端部の紅色が強いものと全体に白っぽいものがあり、どちらの色目も味わいが深い。
今まで見ていたベニドウダンとは見かけも異なれば、大きさも違いサラサドウダンの方が大きく、先端部が開いていて明らかに形が違う。



ベニドウダンやサラサドウダンが多くなってきた登山道では当方も含めて偶然に出会った3組4人で盛り上がりながらの花探しです。
最初はベニドウダンばかりでしたが、最初のサラサドウダンを見つけると次々に見つかり、“サラサだ!サラサだ!”とはしゃぐのは大人気ないけどね。



同じサラサドウダンでも一番紅が濃いと感じたやつです。
ちょうど時期も良かったのでしょう、落下した花弁も僅かにありましたが、どの枝にも鈴なりのサラサドウダンが吊り下がっていました。





木の本数としてはベニドウダンの方が多いのに撮らないと“扱いが悪いぞ!”とベニさんに怒られてしまいそうなのでパチリです。
ベニドウダンにも紅色が強いのとピンク系のベニドウダンがあるようですね。





サラサドウダンを満喫!登山を満喫!と相成り、気分は爽快でした。
この山域は北に乗鞍岳、南に大谷山があり、少し位置関係が掴めてきましたので、高島トレイルの分割コース歩いてみるのもありかもしれませんね。


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赤坂山登山その2~粟柄峠-山頂-明王の禿のピストン~

2024-06-12 05:55:55 | 御朱印蒐集・仏像・磐座・巨樹・古墳・滝・登山
 快晴の赤坂山登山も約半分くらいの位置になる粟柄峠までやってきました。
ここからは気持ちの良い稜線歩きになるものの、風が強いのでこの季節にも関わらず寒くなってきてウインドブレーカーを着て帽子をリュックに入れます。

粟柄峠から先に続く赤坂山の稜線は日本海側と琵琶湖側の分水嶺にあたり、風を遮るものは何もありませんから、逃げようのない風に吹きつけられます。
粟柄峠の分岐は、麓のマキノ高原・赤坂山・福井県美浜町に分かれており、寒風や大谷山へのルートの分岐にも近い場所にあります。



かつて粟柄峠は、日本海側と琵琶湖側の物流ルートとして人の行き来があったといいます。
峠の福井側には複数の馬がいたと思われる馬場という集落があったとされ、かつての馬に荷を積んで峠を越えていく物流の姿が想像されます。
そのためなのでしょう、巨石をくり抜いた中には馬頭観音(馬の無病息災の守り神)をお祀りしています。





赤坂山に限らず山頂への稜線が美しい山というのがあり、息を切らしながらも登っていく稜線歩きは実に楽しい。
早く着きたいような、もっと楽しみたいような微妙な気分を味わいながら最後のロードを登ります。



とはいえ稜線歩きは楽しいだけでなく、急登を登る苦しさも同時にあって、心の中ではあと僅か、あと僅かと念じるように粘る気持ちで登ります。
マキノ高原から2時間弱、今日は山頂から「明王の禿」まで行きますので少し休憩したいが、風に煽られて寒くて休む場所がない。



最後の急登を登りきると標高823.8mの山頂です。
岩陰で休憩されている方も居られるが、立っているだけで寒さに耐えられないほど強風にさらされてしまいます。



三角点は四等三角点。
三角点の近くには似たような形状の図根点標石があり、林野庁が国有林の測量のために設置した標石設置だそうです。



山頂からは琵琶湖が良く見えており、裸眼だと琵琶湖の湖岸線が湾曲しているのが分かります。
山の麓から見える琵琶湖は近く、福井県美浜産の塩や木炭・海産物を滋賀県海津から湖上輸送するに適した街道(峠)だったことが伺われます。



反対方向は美浜町の雲谷山を経て、向こう側には若狭湾があるはずだがこの位置からは見えません。
寒風まで行く途中には若狭湾と琵琶湖が右と左に見える場所がありますので、両方を見るのなら寒風ルートでしょうか。



赤坂山山頂から向かうのは写真に見える三国山の右にある風化した奇岩が聳え立つ「明王の禿」です。
一旦下ってから登り返すルートになり、更に進めば三国山まで行けますが、戻ってくるのが大変なので明王の禿まで行って折り返します。



赤坂山から明王の禿への道は、低木の茂みの鞍部を通り抜けるような道ですので熊さんに出会わないか不安な道。
しかし、この日は歩いている人が多いので安心して進めます。
最後の登りを終えると目の前には荒涼とした石灰岩の崩壊地。何度見ても圧巻です。



中央に聳える岩は通称「モアイ岩」または「マントヒヒ」と呼ばれる。
麓からも見えるこの崩壊地の崖側の危険個所にはチェーンが張られていて、崖側まで近づくと強風で煽られて滑落しそうで怖い。



奇岩の向こう側には田植えの終わった水田と琵琶湖が見える。
麓から2時間ほどで来れる場所とは思えないほど、この景色は凄い。



明王の禿から木段を登って振り返ればこの景色。
奇岩は今も崩壊したり風化したりしているのでしょうか?
降雪量の多そうな地域ですので、少しづつ風景は変わっているのかもしれません。



明王の禿のピークは標高780m。
高島トレイルのコースに入っており、トレイルの12の分割コースではコース2の黒河口~マキノ高原になります。





ピストンですので明王の禿から赤坂山へ戻りますが、遠い距離ではないけど景色で見ると遠そうに見えるのが山の不思議。
赤坂山山頂までの最後の急登がなかなかシンドイんですよね。



赤坂山の山頂に戻った後、稜線を下って粟柄峠を越えた辺りで寒風への分岐に差し掛かります。
快晴ですので稜線からの景観は素晴らしいと予想されるものの、強風が吹く稜線をずっと歩くのが難点ですので立ち寄らずです。
とはいえ、登り下りする人の姿はチラホラとありました。



マキノ高原に下山しますが、朝と比べてもそれほどテントは増えてはいないようです。
キャンプ場を下りながらテントを見ると、テントのキャノピーの部分が風に煽られて大変そうでしたよ。



花の話に戻りますが、明王の禿の近くにもドウダンツツジが咲いていたものの、これぞ紛れのないサラサドウダンという花には巡り合えずでした。
やはり明王の禿から三国山へ足の延ばすか、黒河峠から三国山を目指すかなんでしょうね。
では日を改めて黒河峠から三国山の山頂へ行ってみよう!


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赤坂山登山その1~サラサドウダンと春の花を探せ!~

2024-06-09 17:35:35 | 御朱印蒐集・仏像・磐座・巨樹・古墳・滝・登山
 赤坂山は山と渓谷社により「花の百名山」に選ばれており、滋賀の山では霊仙山・鎌ヶ岳・伊吹山・武奈ヶ岳なども選ばれています。
山と渓谷社の元となっているのは田中澄江さんの「花の百名山」で、そちらに選ばれている滋賀の花の百名山は三上山・藤原岳・霊仙山・御池岳だという。

赤坂山は福井県と滋賀県の境界に立地して琵琶湖と若狭湾の分水嶺になっており、景観の素晴らしさと豊かな自然に恵まれた山です。
そろそろサラサドウダンの花の季節でどの山に行こうかと迷いつつ、勝手知ったる赤坂山に登ることにしました。



赤坂山をマキノ高原から登る場合、東屋のある「武奈の木平」までが約半分で樹林帯の中を通ります。
「武奈の木平」から「粟柄越」を経て山頂までの稜線歩きが残りの半分。
最初は木段が続き、体がまだ十分に目覚めていない朝一の木段は結構シンドイのですが、登りきるとフラットな道を歩けます。



ただしフラットな道もあるものの、岩がゴロゴロした道もあり、景色が見えない道でもあるので早く「武奈の木平」に着きたくなります。
登山道では標高の低いところではツツドリの声が聞こえ、途中からキビタキの囀りが聞こえるようになり、標高が高くなるとホトトギスがにぎやかになる。



ところで、過去に登った時には気付かなかったのですが、三角点の案内板があるのを発見。
下りるのが大変そうな急登を登らないといけないけど、上がどうなっているのか気になり見に行くことにする。



登ってみると確かに三角点があり、これは「栗柄越の三角点」(等級種別:四等三角点、基準点名:栗柄越、標高:483.4m)でした。
何度か登った赤坂山ながら新発見となりましたが、整備されていない急登を登ったので慎重に下りないと滑りそう!



そうこうしている間に「武奈の木平」に到着。
天気は晴れていて登山日和とはいえ、強い風が吹いていましたので、リュックに入れておいたウインドブレーカーを脱いだり着たりです。



山頂まで約半分というところまで来ましたので、この辺りまでに見かけた赤坂山の花になります。
フワフワとした白い花をたくさん付けているのはタンナサワフタギでしょうか?



タンナサワフタギは、赤坂山では中間的な標高のところで咲いているのを見かけましたが、花の名前が合っているかは確かではありません。
この種にはタンナサワフタギとサワフタギという類似種があるといい、見分けるのも難しそうです。



低木の枝先に沢山の白い花が房になって咲いているのはカマツカの花でしょうか。
花の識別に迷うのは数を見ていないからで、野鳥を探し始めた頃も最初のうちは同定できなかった記憶があります。



コアジサイは登山道の道筋に多いが、まだ花を咲かせているものは少なく、標高の低いところに生えているものが咲いている感じです。
これから一斉に花を咲かして登山道がにぎやかになると思いますが、その頃はササユリの季節を迎えています。



「武奈の木平」から少し登ると堰堤と沢沿いの道があり、そこから徐々に景色や植生が変わってくるようです。
堰堤から水が落ちて流れる清流に沿って歩きますのでヒンヤリと気持ちが良い場所で、このルート唯一のロープ場で堰堤を乗り越えます。



堰堤の上にも清流は流れており、登山者は右の岩の道を登ります。
右の道にも水が流れているので、足元注意の道です。



沢沿いの道から尾根筋に出るとタニウツギやヤマツツジの花を見かけるようになります。
タニウツギは一定の標高の辺りから生えていて、先日別の山で見たタニウツギより花の状態が良いのは環境の違いによるものか。



赤坂山にイワカガミが咲く時期に登ったことはないのですが、花期の終わったイワカガミの多さに驚きます。
4月下旬から5月にかけての赤坂山の花は今とは違った植生になっていると思いますが、今の季節はベニやサラサのドウダンツツジにカメラを向けている人が多い。



咲いていたのはほぼベニドウダンで、赤い実が沢山実ったような赤い花が見頃になっています。
花や野鳥は写真で撮ると実際より大きく写りますので、記憶の中の花と一年振りに見る花のサイズの違いに驚く。



ベニドウダンとサラサドウダンの識別って結構悩んだりして一緒に撮影していた方々も識別に迷われていました。
“これはベニドウダンです”と言い切れる花は多いのですが、サラサドウダンと言い切るには躊躇われるものが多い。





ベニドウダンには真っ赤な花と薄い色合いのものがあるようですので、見誤るケースもあるとのことです。
おそらくは見ている人にはサラサドウダンへの想いがあるので、花を見た時の期待値が高くなってしまうのが迷う原因か。



結局、サラサドウダンっぽいのもあったものの、これぞサラサドウダンと言い切れる花は見つからずでした。
一緒に撮影していた人の情報によると、サラサドウダンは黒河峠から三国山のトレイルに多いということでした。



足を伸ばしてみても良かったのですが、思い付きでコースを変えるのは止めておき、「明王の禿」まで行って戻ってきます。
次は別の日に改めて今度は逆コースになるマキノ町白谷の黒河峠から三国山ピストンで行ってサラサドウダンを探しに行きたいと思います。


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「四白展」(やまなみ工房)~湖のスコーレ~

2024-06-07 05:48:48 | アート・ライブ・読書
 長浜市のJR長浜駅から黒壁スクエアを歩いて行ったところに「湖のスコーレ」というカフェやショップの入った商業文化施設があります。
滋賀の特産品の鮒ずしにちなんで発酵食品をテーマにしたお店が入り、チーズ製造室で作られたチーズの販売やチーズを使った喫茶店などが入っている。

また文化棟には今では絶滅の危機にあるようなサブカル系の本屋さんがあり、棚にはセレクトされた新刊書籍と古書が並びます。
文化棟2Fには滋賀県甲賀市のアートセンター&福祉施設「やまなみ工房」の作家の作品が展示・販売されている。
展示されているアールブリュット作家は定期的に入れ替わり、いつでもアールブリュット作品を目にすることが出来ます。



現在、展示・販売されているのは「やまなみ工房」の四白さんの作品で、カラフルな色彩で書き殴ったような作品と綺麗に塗り分けられた作品に傾向は分かれる。
下は「オランウータン」という作品でサイケデリック調の色彩鮮やかな迷路の中にコミカルタッチのオランウータンが笑っているように見えます。


「オランウータン」

四白さんは、幼少の頃から自然の中で遊ぶことが好きだったが、青年期を迎え、行き場のないエネルギーをパンク・ロックなどのサブカルチャーに求めるようになる。
その後、大学でアートを学ぶようになるが統合失調症を発症し、大学を中退して放浪。
友人のイベントに参加した際に「やまなみ工房」を知り興味を持ち入所されたとあります。(会場の案内板から)

「マッドシティ」という作品では、描き込んだ「オランウータン」とはカラフルな色使い以外は全く傾向の違う作品になっています。
四白さんは、70~80年代辺りのロック・アーティストをモチーフとした作品も描かれいて、影響を受けたロックアーティストが伺われる。
5/11には湖のスコーレでライブ・ペインティングのパフォーマンスがあったそうです。


「マッドシティ」

3人のロッカーの絵は、一番左がゴッドファーザー・オブ・パンクとも呼ばれるイギー・ポップ。
絵は Lust For Lifeを地で行くようなジャンキー・タッチの絵。

真ん中は言わずと知れたローリング・ストーンズのキースリチャーズ。ヘビースモーカーのキースが煙草をくわえてギターを弾く姿は恰好がいい。
四白さんのキース・リチャーズは前回湖のスコーレで展示されていたキースの絵とは全く違うのが興味深いところです。

右はザ・クラッシュのフロントマンのジョー・ストラマー。
London Callingはバンドでコピーした記憶があります。


「イギー・ポップ」「キース・リチャーズ」「ジョー・ストラマー」

デイビット・ボウイをモデルにした2枚の絵は、全く個性の違う描き方になっています。
勝手に想像するなら、左が80年代初頭の「レッツ・ダンス」のような都会の垢ぬけたロック・スターのような感じ。
右はジギー・スターダスト時代のグラム・ロックか、ドラッグからの更生をしたベルリン三部作時代へのオマージュみたいな感じ。


「デイビット・ボウイ」「デイビット・ボウイ」

ロックアーティストは他にもトム・ウエイツやニック・ケイブを描いた絵があります。
両方のアーティストともに名前のみで音楽に馴染みはありませんが、下のニック・ケイブの絵はインパクトがあって魅かれる作品です。


「Nick Cave」

他府県でも同様かもしれませんが、アールブリュットへの理解や共感が高まってきており、作品に接する機会が増えてきています。
滋賀県では街の中やお店や商業施設やホテルのロビーなどでアールブリュット作品を目にすることがあります。
何度も見る作家さんが居られれば、初めて目にする作家さんも居られて、その奥行きの広さには驚くばかりです。


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つくる冒険 日本のアール・ブリュット45人 ―たとえば、「も」を何百回と書く。~滋賀県立美術館~

2024-06-05 06:52:22 | アート・ライブ・読書
 滋賀県立美術館では「つくる冒険 日本のアール・ブリュット45人『―たとえば、「も」を何百回と書く。』と題したアールブリュット展が開催されています。
この美術展は45人の日本のアールブリュット作家の作品が約450点展示される大規模な美術展で、多様性に富んだ作品が鑑賞出来ます。

美術展の構成は「1 色と形をおいかけて」「2 繰り返しのたび」「3 冒険にでる理由」「4 社会の密林へ」「5 心の最果てへ」で構成されます。
滋賀県では馴染みのある作家や書く都道府県で活躍されている作家、既に製作を止めてしまわれてる作家など多様な作家の作品が集められています。



「第1章 色と形をおいかけて」では伊藤善彦さんの粘土細工の作品「鬼の面」「鬼の顔(土鈴」が気にかかる。
伊藤さんは30年に渡って粘土作品を制作されていたといい、生前“人間の、奥の奥には、鬼が棲んでいる”と発言されていたといいます。



畑中亜未さんの「一灯式青い蛍光灯」「一灯の裸電球」「二灯の裸電球」「赤ちょうちん」...などの作品は灯りに興味を持った作品群です。
絵の中に作品名を書き込んでいて、ごくシンプルなクレヨン画ですが味わい深い。



舛次崇さんの絵には「きりん2」「ノコギリとパンチとドライバーとトンカチと左官」「うさぎと流木」などのタイトルが付いている。
絵とタイトルはパッ見ると合っているように見えないが、それはモチーフを独自の視点で見ているからなのでしょう。



「やまなみ工房」の作家の中でも有名な鎌江一美さんの作品「かお」は、ヒダのような突起物で作品が覆われるまでの初期の作品とのこと。
突起物に覆われた「まさとさん」とは少し違う鎌江さんの作品の源流ともいえる作品群です。



カラフルな色彩の楽しそうな絵を描かれるのは八重樫道代さんで、作品は「ダンス」と「チャグチャグ馬コ」です。
チャグチャグ馬コってなんぞやというと、岩手県滝沢市の蒼前様(農業の神・馬の守り神)の祭りに登場する馬たちのようです。



「第2章 繰り返しのたび」では繰り返し反復するミニマル・ミュージックのような作品が並び、齋藤裕一さんの作品はその典型的なものになります。
タイトルは「ドラえもん」や「はみだし刑事」なのですが、ドラえもんは「も」の反復で描かれ、「はみ」の反復ははみだし刑事のこと。



色鮮やかなマーカーの反復で描かれるのは上田志保さんの「こゆびとさん」。
小人?小指?恋人を連想させるキャラクターは上田さん独自のイメージの世界で、現代アートの作品のようにも見えます。



「第3章 冒険に出る理由」では木村茜さん、伊藤峰尾さん、佐々木早苗さん、石野敬祐さんの制作風景が動画で流されます。
それぞれの作家の日常の製作風景は、生活の一部のように日常に融け込んでいます。
まだ半分とはいえ、たくさんの作品を見て疲れたので、会場の中にある額縁のような枠の奥にある庭園を望むソファーで一息入れる。



「第4章 社会の密林へ」でインパクトがあったのは、宮間栄次郎さんの「横浜の金魚の帽子おじさん」シリーズでしょうか。
宮間さんは横浜の繁華街を自転車に乗って回遊するパフォーマンスをされていたといい、その奇抜で派手な服装から「帽子おじさん」と呼ばれるようになったそうです。





作品の横には宮間さんご自身が写るスライドが流れています。
ご本人の姿も楽しそうですが、映像に移っているギャラリーも笑顔です。



木工で精密なバスやトラックや車を作られているのは西本政敏さんは、メーカーのロゴまで再現した完成度の高い作品です。
この精密な表現は、通所する福祉施設で木工を担当して得た技や知識が役に立っているようです。



太い線でデフォルメされた平野信治さんの作品は「志村けん(子役)」「舘ひろし」「モナ・リザ」「ライオン」のタイトルが付いている。
平野さんは志村けんに特別な想いがあったといい、縁あって志村けんに直接バカ殿を描いた作品を渡す機会に恵まれたそうです。
しかし、その翌日から絵を描かなくなってしまったといいます。



みんなほっぺがピンク色の人物画を描かれるのは大久保寿さんで、実際に人物名が付いている絵と無題の絵があります。
平野さんは46歳から絵を描き始められ、大胆な線でサッと描いたように見えて、実際はとてもゆっくりと指を動かして描かれていたそうです。



ペーパークラフトで角ばった女の子たちを作るのは石野敬祐さんでタイトルは全て「女の子」ですが、イシノ52のような作品群です。
製作風景は第3章で見ることが出来ますが、とても手早く器用に女の子たちを作り出していかれます。



「第5章 心の最果てへ」では記憶や精神疾患によって見ることの出来たモチーフを作品にしたものが多く登場します。
内山智昭さんは聴覚障害があって意思表示が困難だった頃、粘土造形を始めて精神的に落ち着きを得ていかれたそうです。



上は「遠い国の人」、下は「花を抱いた女」。
内山さんは5~6年間に300点近い作品を製作されてそうですが、手話を身に着けて施設を退所して以降、作品は全く製作されなかったそうです。



昭和の時代には封切り映画がやってくると、映画の宣伝用の看板が描かれることがあり、蛭子能収さんも「ガロ」でデビュー前に看板店で絵を書いていたそうです。
木伏大助さんは、小学校の時に映画館や街角に貼られた映画のポスターを毎日眺めていて、福祉施設に入ってから映画ポスターそっくりの絵を描き始められたそうです。
役者の名前まで正確に書かれていますので、その記憶力たるや恐るべしです。



富塚純光さんの「青い山脈物語111万円札と花を貰ったの巻」「青い山脈物語8おっかけられたの巻」は彼の記憶を絵と言葉で描いたもの。
壁一面に貼られた記憶のメモから月一回の絵画クラブで1枚を選び、渾然一体の作品となっていくという。



美術館では図録が販売されていましたので購入して、各作家の詳細を知り、参考にさせて頂きました。
滋賀県立美術館はアール・ブリュットを収集方針に掲げる国内唯一の公立美術館で、世界有数のアール・ブリュットのコレクションを有する美術館となったようです。



アールブリュット作品には現代アート作品を感じさせる作品や現代アートへ影響を与えたと感じられる作品があります。
現代アート系の作品は作為的に意味を求めるような作品がありますが、アールブリュット作品は無作為なところに魅力があるのかもしれません。


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Borderline~ボーダレス・アートミュージアム NO-MA

2024-06-03 06:31:31 | アート・ライブ・読書
 NOMA美術館の案内文によると、Borderlineという言葉には「境界」「境目」とい意味があると同時に「どちらともいえない」「曖昧な」という意味を含むとあります。
今回の美術展では使用用途を思わせるのに用途がない作品、使用用途をなくして作品にしてしまった作品など境界の不明瞭な作品が展示されています。

境界線を引くわけではないけど、ボーダーレスアートの名にふさわしく、出品者はアールブリュット作家が4人、美術家が2人、企画デザイン会社1社の内訳となる。
ボーダレスは境界がないこと、ジャンルに分けられないことの意味で、ボーダーラインを曖昧にしてカテゴリーに当てはめることができないものが並べられる。



昭和初期の町屋をリノベーションしたNO-MA美術館の前庭では、山田浩之さんの陶芸作品「壁を取りはずして向こうを見る」という大きな作品が出迎えてくれます。
山田浩之さんは、信楽の陶芸作家で陶歴は約30年。数々の陶芸展で受賞歴のある作家さんのようです。



山田浩之さんの作品を検索すると、酒器やぐい呑や皿、急須や花器などオーソドックスな陶器から個性的で独創的な作品まで幅広いようです。
展示されていた「CAVE340 コメット」は得体の知れない生き物のような作品で、「CAVE340 BIG FOOT」の方はデフォルメされた足。
作品は全て陶器にスピーカーが埋め込まれており、BIG FOOTは実際に音楽を聴くことが出来るようになっていた。





現在67歳になるという山ノ内芳彦さんは、鳥取で生まれて「田舎で死にたくない」という気持ちで東京に出て15年暮らしたといいます。
田舎で暮らしたくないという18の頃の気持ちはよく理解できる話で、同じ思いで都会へ出て行ったのは当方も同じでした。



その後、30歳を過ぎた頃に帰郷されて、そこで木の中に生命の形を感じ取り、木の仕事をするようになったといいます。
材料はその辺にある伐られた庭の木や捨てられた木などを使い、声がかかればもらったり伐りに行ったりするそうです。



上は「クスノキの椅子」で下は「イチョウの寝台椅子」。
イチョウの椅子には腰かけてみると、何とも言えない落ち着いた気分が味わえて木の優しさに包まれます。
作品は元あった木の形が想像できない姿に彫り出しており、樹齢の長い木の持つ生命感のようなものを際立たせています。



下田賢宗さんは、15歳の時にイクラの柄のポスターが欲しくなったけど、探してもそんな柄のパジャマは売っていなかった。
そこで、白い服をマジックや絵の具と一緒に下田さんに渡すと、彼はあっという間にイクラの絵を描き上げて欲しかったパジャマを手に入れたといいます。

下田さんは「自分が大好きなものに包まれて眠りたい」という思いを叶えるため、オリジナルのパシャマを制作されてきたといいます。
作品は「イクラのパジャマ」「かぼちゃのてんぷらのパジャマ」「はだいろおちんちんのパジャマ」。



山崎菜邦さんは、カラフルな糸を繰り返し縫って一点物の服を仕立てていきます。
今年2月に滋賀大学で開催された「やまなみ工房」のアールブリュット展では全身が縫物のヒトガタになっていましたが、今回は「Yシャツ」が出品されています。



吊るされたYシャツは空調の風でゆっくりとゆらゆら動いている。
机の上に置かれたYシャツは機能を失った何者でもないものに変化していっています。



少しいびつな形をしたかわいらしい箱は、臼井明夫さんの「臼井BOXシリーズ」です。
臼井さんは箱を作っては周りの人にあげていたといい、箱はいびつですが工夫を凝らして丁寧に作られた作品です。



高丸誠さんは眼鏡を作り、ほぼ毎日自分で作った眼鏡をかけているそうです。
レンズはなく眼鏡としての機能は果たしていませんが、“形状は使用用途を思わせるのにその用途がない作品”ということになります。
展示は、眼鏡屋さんの商品が並べてある棚のように見えます。



geodesign〈ジオデザイン〉は株式会社ジオが企画・デザインした商品で、面白ろアイデア文具を商品化したもの。
レタスだけどメモパッドになる、食卓にあるねり梅やわさびやしょうがのチューブはカラーマーカー、割り箸がボールペン、豆腐パックが付箋紙。

鯛の形をした醤油のタレビンは、醤油の香りがするペンで、<ケチャップ香る>醤油鯛ペンなんてものまである。
どこまでから雑貨であり,どこからが雑貨ではないかという範囲設定が分からない不思議な製品カテゴリーにある文化・雑貨の世界です。




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