僕はびわ湖のカイツブリ

滋賀県の風景・野鳥・蝶・花などの自然をメインに何でもありです。
“男のためのガーデニング”改め

「輝く個性! こだわりストたちの世界」-たいぞう×Abeille'sアーティストコラボ展-~近鉄百貨店 草津店~

2024-12-06 07:18:18 | アート・ライブ・読書
 芸術家プロダクション“アベイユ”は、障がいのあるアーティストのマネージメント・プロデュースを行い、アーティストたちの社会参加をサポートする会社です。
この秋に長浜市で開催されたアート・イン・ナガハマでアベイユの存在を知った際に近鉄百貨店 草津店で原画展が開催されると教えてもらい、近鉄百貨店にやって来ました。
今回の美術展では吉本興業とアベイユのコラボ展となっており、吉本興業の“たいぞう”さんとアベイユ所属の8人の33作品が展示販売されています。

アベイユでは作品の展示販売だけでなく、作品を使ったグッズの販売しており、収益から作家にデザイン使用料が入る仕組みを作られているそうです。
たいぞうさんは、以前は吉本新喜劇などで活躍されていたお笑い芸人だったといい、現在は画家としての活動がメインになっているようです。



会場は近鉄百貨店 草津店2Fのアカリスポットというスペースで開催されており、会場内には原画やアーティストのグッズが並びます。
作品はそれぞれのアーティストの個性豊かな作品が並び、コンセントをデザインしたスペースの印象も良く、明るい感じのする美術展でした。



展示されている原画は各アーティスト3~4点といったところで、楽しい感じのする絵が多かったように思います。
作家さんの中にはイラストレーションなどを学ばれた方も居られますので、アールブリュットの定義で括られない自由な表現の作品揃いです。



カラフルで精密な絵を描かれる“あん”さんは、まだ20代前半の女性で絵以外にも詩を創作され、両部門で賞の受賞歴があるそうです。
左の「コレクション オブ パーソナリティ」と題された大きな絵には無数の花が描かれ、様々な個性のものが凝縮されているような作品です。



一方で「コーヒー豆」という作品では膨大な量のコーヒー豆が画面いっぱいに描き込まれています。
中央にある“coffee”と書かれているのはコーヒー豆の入ったカップでしょうか?なんか気になるパーツですね。



モチーフの中に升目状にカラフルな色を塗り込んだりする作品はアールブリュットの作品感を感じてしまいます。
「たけのこ!」という作品は、たけのこというよりも違う物体にも見えますが、タイトルに「!」が付いていて元気よくはじけた感じを受けます。



奥山優さんという作家さんも20代の若い方で、幼い頃から動物をモチーフにして絵を描いてこられたという。
独特の明るい色彩を使った漫画チックな感のする絵からはほのぼのとした優しさを感じます。



左はバクの絵と思われ、タイトルは「素敵な夢をあなたへ」。右のフレンチドッグも何とも言えない愛嬌とデザインの良さを感じます。
真ん中の絵は「赤✖黒」という絵で、ヤギのような動物を対照的な色使いで描き分けられています。



今回、もっとも楽しみにしていたの長谷川良夫さんの絵で、3点の原画が展示されていました。
長谷川さんは重度の障がいを抱えられているため、元々は全身が硬直して筆を持つことが出来なかったので最初は足に筆を挟んで描かれていたのだという。
現在は少し手が動かせるようにはなったが、机などに置いた肘と同じ高さで手先だけを動かして描かれているそうです。



上の絵は「ごろ寝」という絵で猫?がまどろみながらごろ寝していますが、目はこちらを見ていて、のんびりとして安心した様子が伺われます。
舌は「無題」という絵で、長谷川さんは絵本では社会の不条理さや自分では思うようにならない憤りを絵と言葉で表現されています。



力強くもユーモラスな感じがするのはキリンの絵のようです。
このキリンがどういう心境なのかは、見るこちらの方の心理状態によって大きく変わるのかもしれませんね。



同じキリンの絵でも羽戸康貴さんの描くキリン(写真一番左)は同じキリンでも全く印象が異なります。
右のアニマルの「アムール」「ルームア」絵は表裏になっていて、表側には像の前にトラやライオンがいて、裏側にはワニがいる。
キリンとカバが表裏で部分的に見えるのも面白い構図ですね。



羽戸さんは幼少の頃に岡本太郎の「太陽の塔」を見て衝撃を受け絵を描き始められたそうですが、「怒」という作品は“芸術は爆発だ!”と力強い。
羽戸さんは力強くラフな感じのする絵から描写力のある絵まで幅広い作風の方のようで、好きな音楽アーティストのジャケットデザインを手掛けるのが目標のようです。



たいぞうさんのコーナーには極彩色の色鮮やかで可愛い感じの作品が並びます。
たいぞうさんは大人になってから発達障がいであると診断されたといい、大阪府障害者芸術・文化大使を務められているそうです。



今回展示されていた作品はケースに納められているので白紙の部分がありますが、普段は白紙部分を埋め尽くすように描かれるといいます。
展示作品でも横側(厚み側の面)にもびっしりとマークのようなものが描かれており、その傾向が伺われます。



さて、美術展を見終えた後はもう一つ楽しみにしていた「551蓬莱」で遅めの昼食を取りました。
以前から食べに行きたいと思いつつ縁がなかったのですが、やっと食べれた蓬莱では「海鮮飯」を注文。もちろんお土産に豚まんも購入です。



普段スーパーで買い物をしますので、デパ地下(1階だけど)で買い物する機会はあまりありませんが、購買意欲をそそるような食品が多いのに驚きました。
もちろんお値段もそれなりの値が付いていますので、買えずに通り過ぎましてけどね。


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ボーダレス・アートミュージアムNO-MA20周年企画 vol.2 ボーダレス ー限界とあわいー

2024-11-30 07:20:20 | アート・ライブ・読書
 ボーダレス・アートミュージアムNO-MA美術館の20周年企画のvol.2は『ボーダレス ー限界とあわいー』展でした。
今回の企画展はフォークシンガーの小室等さんが企画され、詩人・谷川俊太郎さんの詩と音楽がミックスされた美術展となっています。

会場内に流れて、ヘッドフォンによるリスニングも出来る音楽は谷川賢作さんの音響デザインによるもので、常時流れている詩の朗読は佐野史郎さん。
普通の美術展とは少々趣向の異なるこの企画展には7人の作家の絵やオブジェが展示され、多様性に富んだ音・絵・言葉が交差する空間になっていました。



入館して最初のスペースには辻勇二さんの絵「心でのぞいた僕の街」と谷川俊太郎さんの「死んでから」という詩が展示されています。
「死んでから」はもう一つの詩と口語に会場内で繰り返し朗読され、環境音楽のような音楽も流れている。



辻勇二さんは、記憶と空想が混在したような架空の街を鳥瞰図で精密に描かれます。
5点の絵は制作年代は違うものの、全て「心でのぞいた僕の街」というタイトルが付いていて、夢の中で鳥になって見た風景とでもいうような作品群です。



西岡弘治さんは、楽譜を模写することで作品を生み出されているというが、描き進むにつれ絵は歪みはじめて、独特の構図の絵になっていくようです。
絵と一緒に展示されているのは「ジョン・レノンへの悲歌」という詩で、死を前にしたジョンへの悲しみを感じる詩です。



描かれた譜面がどんな音を奏でるのかは分かりませんが、どことなくユーモラスな五線譜作品からは可愛いさが伝わってきます。
譜面を模写する際に好きな音楽の楽譜を選んだりされるのか気になるところですが、音符を読むというより、音符の流れの美しさで選ばれているのかもしれませんね。



さて、個人的に一番の目玉作品は、塔本シスコさんの大作3点です。
塔本シスコさんは本格的に絵を描くようになったのは53歳で、その後92歳で亡くなるまで描き続けられました。

シスコという名は、養父が自身のサンフランシスコ行きの夢を託して命名された名で、大正時代にしてかなりモダンな名前です。
家庭の事情から小学校を中退して20歳で結婚、46歳の年には夫が急逝するも53歳より絵を描き始めます。



絵は幼少期の故郷の思い出や家族(夫と過ごした日々や一男一女の子供や孫たち)、近所の公演や自宅で見た花や生き物たちが色鮮やかに描かれる。
「私の窓からのながめ(1995年)」は、シスコ・パラダイスとでも呼べる華やかな対策ですが、阪神・淡路大震災の余震が続く中で描かれたという。

「アロエの花(2004年)」は晩年を迎えたシスコさんが描いた絵。
この当時、91歳を迎えたこともあって絵の華やかさや力強さはなくなって、アロエの花が最後の命が燃えているような印象を受ける絵です。



「自分で植わったカボチャ(1998年)」は、自宅の庭か家庭菜園かで勝手に育ったカボチャを絵にしています。
花々が咲き誇り、身近なパラダイスのような絵ですが、実になったカボチャの上にはカマキリの姿が見えますね。



絵を見て音楽が耳に入ってくるなかで詩が朗読されているが、詩は詩を効くというより断片的に言葉が響いてくる感じです。
あちこちに詩が文字として描かれていますので、絵を見るように詩を読む。



2階への階段には古賀翔一さんの立体作品が並べられています。
古賀さんは最初に新聞紙で体のパーツを造って、セロハンテープで貼り固めて人形のオブジェを制作されるそうです。
作品は階段の隅などに置かれてあり、妖しい気配を感じるとそこにオブジェがあるといった感じです。





2階の和室にはソファが3つ用意されていて、ヘッドフォンで音楽や絵本の朗読を聞きながらくつろげる空間です。
絵本は平和や人の死がテーマとなっており、音楽を聴きながら谷川俊太郎さんの詩と3人の絵本作家の絵に埋没していってしまう。



信楽青年寮に暮らす村田清司さんの絵は、パステル調の色彩で暖かさを感じるやさしいタッチの絵です。
村田さんは田島征三さんと何冊か絵本を出版されているそうです。



村田さんの絵は展示されていた10点ともタイトルは「無題」ですが、なんともいえない味わいのある絵を描かれます。
思いのまま、心の赴くまま筆を進めて描いた結果、こういう絵になったと思われ、そこに作為的なものはないのでしょう。



紙をホッチキスで留めて立体的な家を作るのは後藤拓也さん。
自宅をリフォームした時に内装・外装・水回りの工程を見たことが作品制作のきっかけになったという。
子供の頃に頭の中に描いた設計図で紙工作をした記憶が蘇る作品です。





NO-MA美術館では小室等さんらが出演するイベント(ライブやトークショー)が企画されているようです。
以前に大津プリンスホテルで開催されたアールブリュットのイベントで小室等さんと東大の教授の福島智さん(盲ろう者)のトークイベントの記憶が蘇ります。

土砂降りの雨で蔵へ行くのにも難儀しましたが、中庭に展示されていた詩は駆け足で蔵に行ったので読み切れず。
蔵では展示されていた絵の画像と詩の朗読とエンドロール風に流れ、静かに響く音楽が暗い蔵の中で今日の復習のように空間を作っていました。



会場に置いてあった3冊のうちの1冊が販売されていたので購入。(文:谷川俊太郎、絵:noritake)
平和な時と戦争の時をシンプルな絵と言葉で表現されており、どんな状況(戦争でも平和でも)にあっても人も赤ちゃんも太陽も同じであると訴える。
描かれた絵と短い言葉に心が締め付けられるような作品です。

 

ところで、『ボーダレス ー限界とあわいー』展に訪れたのは谷川俊太郎さんの訃報を聞く前でした。
まさか開催中にお亡くなりになるとは誰も考えてはおられなかったでしょう。

詩と絵本、音楽とアールブリュット。
シンプルな言葉が訴えかける力や深みやその余韻。
楽しさやわけの分からなさも含めて、もう少し谷川さんの詩を感じてみたいのでもう一冊読んでみる。




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「人生はボーダレス! 作家たちの今と回想録」~ボーダレス・アートミュージアムNO-MA20周年企画vo.1~

2024-11-21 06:06:06 | アート・ライブ・読書
 ボーダレス・アートミュージアムNO-MA美術館は開館から20年を迎えるといい、滋賀県とアールブリュットの深く長い歴史が感じられます。
当方は2015年にぶらりと立ち寄ってNO-MA美術館を知ってアールブリュットの魅力にとりつかれて以来、沢山の作家さんの素晴らしい作品に出会うことが出来ました。

今回の企画展はキュレーターだった「はたよしこ」さんに同行していたカメラマンで、現NO-MA館長の大西暢夫さん始めとする方々の作家との出会い・再会の軌跡でもあります。
かつて出会い撮影した作家たちが20年の間どのように過ごしてきたかを聞きたいと企画た本展では、過去に取り上げられてきた7人の作家の現在と過去を見つめます。



館内は1F・2F・蔵の3ヶ所に分かれていて、それぞれの作家がブースのようにコーナーを構えて、作品展示やプライベート的な写真が展示されています。
入ってすぐの場所にブースのある宮間英次郎さんは自分自身が作品と化すパフォーマーといえます。
またガラクタ(愛着があるモノなのでしょう)を集めて並べたオブジェの数々。



大きな帽子にド派手な衣装。人形やら花やらを付けて横浜の街を疾走する姿は、街を歩く人の度肝を抜くような存在感があります。
それは人を驚かせて奇をてらいつつも、すれ違う人が思わず微笑んで思わず和ませるようなパフォーマンスのように感じられます。
今回の取材では89歳になられた宮間さんのインタビューをされているが、高齢になられた宮間さんはもうパフォーマンスを卒業されているそうです。



吉澤健さんは街で見た企業名や看板をノートに記録しながら歩かれているという。
ノートはかつては表と裏表紙に雑誌誌や新聞・広告などの切り抜きでコラージュしてセロハンテープで封印していたといいます。
現在はコラージュも封印もされていないとのことですが、作品の制作は続けられているようです。



ノートを埋め尽くすように書かれている文字は何て書いてあるか読めないが、吉澤さんには意味が分かっているはず。
吉澤さんはもう還暦近いはずですが、両親と暮らしながら30年近く仕事も制作も続けられているという。



喜舎場盛也さんはカラフルなドットで紙一面を埋め尽くします。
喜舎場さんも吉澤さんのように最初はアルファベットや漢字を書き込んでおられたそうですが、その後にカラフルなドット画に変わっていったそうです。



喜舎場さんに取材で会いに行かれた沖縄は4月にも関わらず25度を超えていたという暑さだったそうです。
制作現場での喜舎場さんは、急に姿が見えなくなったり、気が付くと自分の席で描いていたりするらしい。
毎日新聞を取りに行くのが日課で、図書館に行くと熱心に本に見入っておられたとか。



佐々木早苗さんには制作のブームがあり、紙に書かれた丸や四角、縫い込まれた刺繍作品などバラエティに富む。
2017年頃からは“丸”をモチーフにした作品が多いそうですが、多様な変化は続いているという。



佐々木さんを訪問された時の様子に“佐々木さんの制作風景を観察していて、喜舎場さんがそれに気づくと手は止まってしまう。”
“見ていた人たちは一斉に目を逸らして、他の人の作品を見たり、空を見たりする。そんな光景がおもしろかった。”とある。
その言葉だけでもシャイな佐々木さんと訪問者の暗黙のやりとりが目に浮かぶように思います。



西本政敏さんは札幌市内を走る実在のバスを木材で製作されていて、そのバスは細部に至るまで現物を再現しています。
バスの車体の側面にゴジラこと松井秀喜の応援の言葉が書かれていましたが、今なら大谷翔平なんでしょうね。
ちなみにバスは2005年の作品でしたのでニューヨーク・ヤンキース時代のゴジラ松井への応援です。



西本さんのバスの模型も面白かったのですが、個人的には腕や足、指などの関節まで動かせるほど精巧に作られた女の子の人形に魅かれます。
人形にはそれぞれフルネームで名前が付けられていて、調べるとタレントや声優など実在する人物がモデルになっているようです。



以前の人形作品は関節まで動くように作られていたとのことですが、現在は一枚板で製作されているようです。
髪の毛も以前は糸を骨組に編み込んでいたようですが、今は彫刻刀で彫られています。



2Fには西本さんの作品が展示されていて、次は蔵へというところだったのですが、外は雨足が強くなってきた。
焦って雨の中、中庭を歩いていく必要もありませんので、展覧会カタログや専門書籍などが置いてあるライブラリーで一休み。
ライブラリーにも宮間さんのコレクションが展示されてありました。



そうこうしているうちに雨が小降りになりましたので中庭を通って蔵の中へ。
蔵の中には伊藤喜彦さんの粘土作品が展示されています。

伊藤さんは信楽青年寮で約60年生活し、30年に渡って粘土作品を制作されていた方だそうです。
伊藤さんは松茸を取りに山へ行って、山の中で亡くなられたといい、それは2005年のことだったそうです。



最近、アールブリュット作品とコラボした商品やパッケージをお店やネットで目にする機会が増えました。
それは斬新なデザイン性や色彩の組み合わせの美しさが商品にマッチして、目にした人が興味深く魅かれるということなのではと感じています。
また、自分の作品が世に出ることで、新たな作品作りへの意欲につながるといいですね。


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浄厳院 現代美術展2024~現代美術編~

2024-11-16 06:10:10 | アート・ライブ・読書
 「浄厳院 現代美術展2024」では国内外のアーティスト36名が作品を出展しており、個性豊かで多様性に富んだ作品が寺内全域に展示されています。
開催期間中には座談会・舞踏・ライブ音楽・太鼓演武・ジャズ・舞・演劇・落語・お茶会など数々のイベントも開催されているようです。

前回は「観音堂」「釈迦堂」の現代アートの仏像と「本堂」の仏像群を見て回りましたが、今回は本堂・庫裡・書院・春陽院・方丈池の展示作品を見て回ります。
インパクトのある作品、思わず顔が緩むようなユーモラスな作品が展示され、作品は様々なれど作家の作品作りにかけるエネルギーが伝わる美術展だったと思います。



《わたしのなかの、わたし。》というシリーズの作品を展示されていたのは佐藤紘子さん。
動物の皮に描かれた絵は可愛らしいタッチではあるものの、顔は笑ってはいません。

“自分の中に、自分とは違う自分がいるような感覚。”、“何かをかぶったような、他人を演じているような自分。”
ここに“自分”は本当にいるのか、いないのか・・・そんな言葉が添えられていた。



深尾尚子さんは「食」や「ペット」などをテーマにインスタレーションを制作されている作家さん。
今は使われていない「おくどさん」や「井戸」のある台所にスペースインベーダーが侵入してきています。
アンマッチな違和感が独特の空間を作り上げていますね。



二部屋をぶち抜きでインパクト大の作品を展示されているのは中根隆弥さんの「ムスベルヘイムと7年7日」と「へや|ROOM」。
中根さんはジャン・デュビュッフェの言葉から「生(なま)」の芸術を体現させたいと作品を制作されているとある。



中根さんは“人間に内包されている本能”をテーマに「ドローイングマシン」という筆が付いたドローイングを行うための道具を使用するという。
それはアールブリュットの生の芸術をマシンによって生み出そうとするような道具でもあるようです。



部屋の一番奥には、不規則な線や墨の飛沫が描かれた紙の裏に「地蔵菩薩」が隠されていた。
この地蔵が何を意味するか分かりませんが、意外とも思える組み合わせもインスタレーションのひとつの部分を構成しているのかもしれません。



佐々木知良さんの「ねじれた寓話」は着物を着た狸と猿が神妙な顔をしてカルタに興じている作品で、通りがかる皆さんが微笑んでおられました。
佐々木さんは子供の頃に親しんだ昔話の世界が、記憶の中で攪拌され融合してできた「ある街」という作品を制作されていて今回の作品もその一部だとか。
カルタの言葉を見忘れましたが、なにか愉快なことが書かれていたのでしょうか。



「浄厳院 現代美術展」の主宰者という西村のんきさんの作品は書院二間ぶち抜きで「時代 era」というインスタレーション作品を展示されている。
作品は大きな屏風が5つ展示されており、全て5枚の作品を集めて「時代 era」という作品になっているとのことです。



作品は表と裏で違った世界観があり、上は「+」という作品を裏側から見たもので、天井には「∞」という作品が吊られている。
下の「-」という作品は裏に回ると何と庭が作られています。
裏側に回って見ないと分からない作品で、この作られた庭とその向こうの外にある庭との対比も面白い。



表側から見ると、縁側に置かれた鏡に反射した太陽光がそれぞれの作品の上を通り過ぎていくようになっている。
そんな時間を感じながら見て欲しいと書かれてありましたが、時間をおいて見に来ると光の位置が変わって作品の印象が異なって見えます。



浄厳院では庫裡(本坊)・書院・本堂と渡り廊下でつながり作品が展示されており、書院に面した方丈池や竹林にも作品が展示されています。
竹林にひっそりと展示されていたのは春成こみちさんの「祈」という作品です。
ひっそりとした祈りの作品のある竹林の竹が風に揺れてコンコン鳴るのが少し怖くもあり雰囲気もある。



寺院境内の一番裏側、方丈池の更に裏にはワダ コウゾウさんの「~風にふかれて~(デベソ)」という作品が展示されていた。
“ゆらゆらゆれる デベソを 楽しんで 頂ければ 幸いです。”とのコメントがあったけど、夜は怖くて一人では絶対行けないような場所に展示されています。



美術展ではウクライナ・ドイツ・スペインのアーティストたちが寺で共同生活をしながら取り組んだ「アーティスト・イン・レジデンス」の作品が展示されています。
境内にある春陽院は浄厳院の塔頭のひとつで、そこに「アーティスト・イン・レジデンス」のニコ・バイシャス(スペイン)さんの作品がありました。
床の間や額や障子に無数の手の写真が貼り付けられており、その手の形はそれぞれ違った形をしている。



部屋に吊り下がる不気味な物体は「舌」のようである。
野尻恵梨華さんの「引き延ばされた記憶」という作品は、何か辛い記憶がどこまでも延びて存在しない姿をあらわにしたかのような不気味さを感じます。



春陽院の一番奥の間まで行くと、天井裏から収納ハシゴが降りてきている。
何か展示がしてあるので見に登れという合図ですので登ってみると、狭い屋根裏に砂漠に太陽と三日月が描かれている絵があった。
北村瑞枝さんの「サハラ」という作品のようでしたが、“月の~砂漠を~はーるばると~♪”という童謡を思い出す。



気になった作品を取り上げましたが、書いていることはあくまで当方の主観を書いており、作者の意図するところと関係はありません。
これだけ多種多様な作品を見ると想像力の世界/表現の世界は無限だなぁと実感出来ます。


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「浄厳院 現代美術展2024」~仏像の過去と現代~

2024-11-13 17:17:17 | アート・ライブ・読書
 安土町にある浄土宗寺院の浄厳院で毎年恒例となっている「浄厳院 現代美術展2024」が開催されました。
美術展には国内外のアーティストが持ち寄ってきた作品が、寺の御堂や境内・庭など至る所で作品を見ることが出来ます。

「浄厳院」は、かつて佐々木六角氏頼が建立し、当地の地名にもなっている天台宗・「慈恩寺」があった地に織田信長が建立した寺院とされます。
寺院には重要文化財に指定されている「本堂」「楼門」があり、御本尊の「阿弥陀如来坐像(平安期)」など何点かの重文指定の仏像や寺宝があります。
以前は事前連絡しないと内部拝観出来ない寺院でしたが、「浄厳院現代美術展」が開催されるようになったことにより仏像群が拝観できるようになりました。



「浄厳院楼門(重文)」は室町時代後期の建造物とされ、佐々木六角氏の慈恩寺の楼門として建立されたものが浄厳院創建にあたり楼門が遺されたという。
楼門はもとは屋根が入母屋造だったそうですが、1889年の台風により2階部分が壊れたため、切妻造の屋根になったといいます。



楼門には阿形・吽形の仁王像(金剛力士像)が睨みを効かせており、表情からも体からも力強さを感じる仁王像です。
よく仁王門に仁王像が安置されているのを見ますが、参拝者としては嬉しい反面、屋外に保管されていて仏像が傷まないのか気になる時があります。





「本堂(重文)」は室町時代後期の建築物とされ、もとは近江八幡市多賀町にあった天台宗・興降寺の本堂だった弥勒堂を移築したものだという。
信長は、かつて天台宗だった寺院の遺構を再利用しながら寺院を建立したようで、合理主義者の一面を感じると共に、それまでの信仰を上書きしていった印象を受けます。

浄厳院は仏教論争の「安土宗論」が行われた寺院として知られており、信長の命により浄土宗と日蓮宗の宗論が行われたという。
宗論は日蓮宗の敗北となったというが、裁定には信長の強い政治的意思があったといいますので、信長によるある種の宗教弾圧があったともいえます。



浄厳院の境内には楼門・本堂・釈迦堂・観音堂・鐘楼・庫裡・書院・春陽院など多くの堂宇がありますが、現在の観音堂には仏像がありません。
過去に盗難に遭って仏像が失われたそうですが、現代美術展によって「観音堂」に仏像が蘇りました。



立体曼荼羅を蘇らさせたのは松山淳さん。金箔・色箔のカラフルな作品群です。
松山さんは乾漆技法と箔押し技法を用いて作品を制作されているそうで、中央の観音菩薩像はキンキラ金に輝いています。



観音像の横の脇侍には「ダイエット菩薩」が安置され、四隅に「モデル四天王」が観音さまを守護しています。
ダイエット菩薩は左がbeforで右がafterでしょうか。冗談半分のちょっと気持ち悪い感じの菩薩さんです。



逆にモデル四天王はというと、モデル体型でルックスも良さが際立ち、全く作風が違うかのような作品です。
金色の小さな仏が床面に並んでおり、須弥壇にはまた違った作風の仏?が安置されて曼荼羅を構成しています。



「観音堂」と同様に「釈迦堂」にも釈迦はおられないのですが、釈迦堂には毎年、釈迦が幻のように姿を現します。
今村源さんという作家の方がカラーワイヤーを使って製作された釈迦像ですが、やや荒んだ釈迦堂の中にぼんやりと浮かび上がる姿はある意味神々しい。



ここまでは「仏像の現代」でしたが、本来の姿である「仏像の過去」を本堂で拝観します。
浄厳院の御本尊である丈六の「阿弥陀如来坐像」は平安後~末期につくられた定朝様の仏像で、像高273cmの堂々たる座像です。



この「阿弥陀如来坐像」は愛知郡二階堂から移されたとも伝わり、大半の部分が当初のものであるとされているという。
ただし、光背の頂点部分は建立当時に御堂に入らなかったため先端が切り取られているとのことです。



「浄厳院 現代美術展2024」に感謝したくなるのは、数々の現代美術作品が見られるのもさる事ながら、仏像拝観が可能になったことです。
以前は事前連絡という敷居の高い条件がありましたが、美術展のおかげで後陣の仏像まで拝観出来るようになりました。



後陣に祀られている「薬師如来立像」は鎌倉期の造像とされ、珍しくも碁盤の上に御立ちになっています。
碁盤の上に乗る仏像は他にも例があるようで、京都の因幡堂(下京区)にも碁盤の上に安置された薬師如来立像があるようです。



同じく後陣には清凉寺式の「釈迦如来立像(南北朝期)が安置されており、縄目状の頭髪と衣文が波打ち首の下まで包み込むように彫られています。
「清凉寺式釈迦」は釈迦在世中にその姿を写した像として信仰を集め、鎌倉期には模像が多数制作されたといいますのでその1躰なのかもしれません。





さて、浄厳院では仏像の現代と過去を見てきましたが、次回は堂宇内に展示されている現代アートを見て回ります。
お庭を歩いているとジョウビタキの♂が姿を見せてくれました。
浄厳院は周囲を田圃に囲まれた自然の多い場所に立地しています...続く。




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『侍タイムスリッパー』を見逃さないで!

2024-10-19 19:46:15 | アート・ライブ・読書
 最近、映画のタイトルを短縮して呼ぶのが流行りみたいで、『カメラを止めるな!』は「カメ止め」、『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』は「エブエブ」だったりする。
今回観に行った映画の『侍タイムスリッパー』は「侍タイ」で通じるようですが、それで会話が成立するのは映画ファンの間だけかもしれませんね。

『侍タイムスリッパー』はインディーズ発の低予算映画で、最初は1映画館のみで一般公開されていたが、人気をよんで全国309館で上映されているという。
監督は安田淳一さんという“米農家 兼 映画監督”の方で、映画を撮影するまでは結婚式などのビデオ撮影業を営んでおられたといいます。(映画は3本目)
映画は安田監督の脚本に感銘を受けた東映京都撮影所の全面協力によって製作されたといい、それによる本格的な殺陣の様子など低予算映画にはない質の高さを感じます。



映画は山口馬木也演じる幕末の会津藩士が現代の京都の時代劇撮影所にタイムスリップして騒動を起こす。
現代にやってきた高坂新左衛門は、斜陽の時代劇業界の斬られ役のプロ集団「剣心会」へ入門し、斬られ役として暮らすようになる。

映画の舞台設定としてはよくあるようなテーマのように受け取られがちですが、ここから思いもよらない方向へとスト-リーは展開していきます。
主役の高坂新左衛門役の山口馬木也さんの真面目で感動屋さんながら時折見せるとぼけた演技に面白さがあり、奇想天外なスト-リー展開に引き込まれていきます。



当方は映画を劇場で観るのは年間何本か程度ですが、『侍タイムスリッパー』は邦画を中心に年間50本以上観ている人から面白かったと教えてもらった映画です。
実際に映画館に観に来ている人も多く、評価の高さからSNSなどで話題になって大ヒットにこぎ着けた映画なんだと実感することが出来ます。

時代劇が好きな人で典型的な時代劇スターってやっぱ恰好いいなと思える人。いい意味での(蒲田行進曲的な)日本映画の良さが詰め込まれた映画でした。
役柄としての悪役の演技以外には悪人が一切登場しないのも好感が持て、観ている人が安心感を感じられる時代劇の良さに感じ入ります。



予告編で公園で斬られる演技の練習中(普通の人から見たらおかしな人に見える)の山口馬木也さんを見た小さな子供連れのおばさんの焦ったような驚きよう!
“ちょっ、あかん!あかん!見たらあかん!行こ!”と子供の手を引いて即座に消えていくシーンなんかは爆笑あるあるですね。


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小倉宗さん(アトリエ笑)と長谷川良夫さん(アベイユ)の偶然!~アートインナガハマ~

2024-10-06 17:39:39 | アート・ライブ・読書
 「アートインナガハマ」は湖北・長浜市の市街地に全国から芸術家や作家が集まり、持ち寄った作品を展示販売される年に一度のイベントです。
AIN(アートインナガハマ)は今年で38回を迎え、すっかり長浜の地に根付いた芸術の秋の始まりを告げるイベントになっています。

当方が最初にAINを訪れたのは、当時習っていた陶芸の先生の作品を見にいったのが始まりで、その頃は圧倒的に陶芸作家の出展が多かったように記憶します。
2007年に小倉宗さんというアクリル画家を知ってからは、毎年お会いして作品を見たり買ったりするのがAINの楽しみのひとつになっています。



まだイベント開始前で準備中の小倉さんのブースに押し掛けたのですが、それには理由があります。
「まどろみ」という作品がもし出店されていたら押さえてしまいたかったからでした。

最初に小倉さんの作品や個展の情報をUPされているnorikoさんのインスタで「まどろみ」を見ていい作品だなぁと魅かれる。
「まどろみ」は大阪は高槻市の「ギャラリーからころ」で開催された小倉さんの個展で実物を見て増々気に入り、AINで再会できるのを熱望していました。
小倉さんのブースに「まどろみ」があるのを見つけて、速攻で購入を申し出て待望の入手となった次第です。



とてもゆったりとした時間を過ごす女性と猫は、小さな子供と母親が和やかで優しい時間を過ごしているように見え、その絵からは愛情が溢れているように感じます。
小倉さんの絵画には幾つかのシリーズがありますが、こういう穏やかで優しい作品もよく描かれるテーマのひとつかと思います。



今年はもう1枚購入しており、「くるりん」という絵を購入しました。
これは新居祝いのプレゼント用に買ったのですが、初日の午後の段階でかなりの絵が売れていて、再訪した時は残り数枚となっていて人気の高さに感心します。



ブースにCDがあったので何か聞いてみると、小倉さんの1975年と1977年のライブの音源なんだそうです。
オリジナルで小倉さんが作詞作曲されていてボーカル&ギターを担当されています。
10代?の頃の若い声は随分と印象が異なりつつも、多才さが伝わってくる音源です。



街中を巡りながら何度か足を運んだのは「アベイユ」という障がいのあるアーティストのマネジメント・プロデュースを行う芸術家プロダクションです。
お話を伺うと、障がい者の支援施設ではなく、アーティストとしての社会進出をサポートしてプロの芸術家への道を支援しているプロダクションだそうです。

多様で個性に溢れる絵画を中心にTシャツやカバンや小物などのグッズも販売されており、8人のアーティストの作品が展示。
精密に描かれた絵やカラフルに塗り込まれた絵、力強くもほのぼのさを感じさせる絵など表現は多岐に渡り見応えがあります。



絵本も販売されており、長谷川良夫さんの「日だまりのアイロニー」を手に取ってみると、個性的な絵の面白さと添えられている短い文章に感じ入る。
言葉は思わず笑ってしまうものや、本のタイトルにあるようなアイロニーが込められた言葉もあり、その言葉の感覚から伝わってくるものは大きい。

ブースにおられた方が今日長谷川さんがAINに来られているということでしたので、ダメ元でもし戻られたらサインをもらえませんかとお願いしてみる。
不躾なお願いにも関わらずサインを頂くことができ、無理なお願いをして申し訳なかった気持ちと苦心しながら書いて頂いたサインに感動する気持ちが交差していました。



エ~そんなことあるの!?と驚いたのは、PE袋に入った長谷川さんの本をぶら下げて小倉さんのブースに行くと、以前に長谷川さんと小倉さんは二人展をしたのだと言われます。
同じ本を持っているよ!とのことでしたが、アベイユの数おられる作家の中から選んだ作品(本)を巡る偶然に驚くばかり。

AIN 2日目の話...
新居祝いに小倉さんの絵をプレゼントした処、小さな額に入った絵も一緒に並べたいと更に2枚追加で購入したとのこと。
禿ユミンの「きっとね」のミニ版でとても綺麗な作品です。



もう一点は浮酔絵師の小倉さんらしく「のんべえ」。
小倉さんの絵が我が家から別の家へと増殖し始めています。





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芥川賞受賞作『バリ山行』松永K三蔵を読む

2024-09-01 18:16:31 | アート・ライブ・読書
 山登りをされるほとんどの方は、その山の登山ルートから自分が登る(登りたい)登山道を選んで登るのが一般的な山行かと思います。
しかし、中にはバリエーション・ルートという地図に載ってもなく、登山道でもない道を登るスタイルを好まれる方がいるそうです。

小説の中心人物の波多は、前の会社で業務外の面倒な社内のお付き合いを断っていた結果、「総合判断」でリストラされた経験がトラウマとなっている。
波多には共働きの妻と幼い子供がいることから、会社の人とうまくやって会社員を続けて家計を守ることを気にしている。

もう一人の主要人物の妻鹿は、誰かと徒党を組むこともなく、自分の仕事をやるだけと周囲からは孤立している。
しかし、それは苦にもならず、儲けにならないような仕事まで引き受け、週末は毎週のようにバリ・ルートで山行している。



山行では整備された登山道を行くのが正しいコース、街(会社・家庭など)では人とうまくやってお付き合いしていくのが社会人としての正しい生き方とされる。
正しそうなルートから外れることの不安は誰もが感じているが、反面外れていないと思いつつも不安を感じているのが現代人ではないでしょうか?

多数の人が感じている不安感は、バリ山行によって緩衝されるのか?一時的な現実逃避なのか?
山の中で一人ぼっちになることは、時に怖いこともありますが、そこにはとても満たされる何かがあると素人低山トレッカーの当方も感じることがあります。

この小説には文章のあちこちに山好きのアイテムが折り込まれ、登山初心者が廉価品の服でスタートして、海外ブランドの服にアップグレードしていく描写には苦笑い。
登山アプリのハンドルネームがハタゴニアだったりタモンベルだったりするのもあるよなぁ~と和ませる。
また、会社の同僚の女性に谷口さんがいたり、明るい性格の後輩の栗城くんや服部課長や植村部長、妻鹿の同僚の花谷さんなどオヤ?と思わせる名前が出てきます。
花谷さんは、2013年に第21回ピオレドール賞を受賞された花谷泰広さんを連想させます。

日本人のピオドール賞では、これまで3度受賞された平出和也さん(2008年は谷口けいさんと受賞)と平出さんと一緒に2度受賞された中島健郎さんがおられます。
K2西壁を登攀中の滑落事故はとてもショッキングな事故で、危機にも冷静に判断される二人に起こった事故は大変残念なことでした。

最後に、芥川賞のような純文学小説の世界に登山小説はアリか?
その回答はこの小説が語ってくれます。


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最恐ホラー映画「サユリ」~根岸季衣にジャニスが降臨?~

2024-08-27 05:55:55 | アート・ライブ・読書
 暑い日が続いていますのでホラー映画でも見てゾッとしてやろうと思い、「サユリ」という映画を鑑賞しました。
映画館のあるモールのお店に注文した商品が届いていて取りに行く用事があり、せっかくなので映画でもと思い、面白そうな映画を探して見たのが「サユリ」でした。

「サユリ」は人気ホラー漫画を映画化したものですが、押切蓮介さんという漫画家さんは知らず、映画を撮られた白石晃士さんも知らない人と全く情報なしでの鑑賞となる。
夜に目が覚めて一人でトイレに行くのが怖くなるような映画かと思いきや、そう展開していくのか!と違った意味で楽しめる映画でした。

 

幸せ感いっぱいの家族が夢のマイホームを手に入れて引っ越してくるが、楽しい新生活とは裏腹に怪奇現象が次々と発生する。
大黒柱の父と母、長女・長男・次男の3人の子供に祖父と認知症の祖母だが、次々に命を落としていきますので仏壇には遺影が〇個も並ぶ。



この苦境に立ち向かったのは根岸季衣の演じる祖母で、認知症から突然覚醒して奪われた家族の復讐に立ち上がる。
覚醒した根岸季衣は、まるでジャニス・ジョップリンのような風体で力みなぎって霊サユリに立ち向かいます。
根岸季衣は覚醒後ずっとタバコを吸っていますが、タバコはジャニス愛飲のマルボロではないみたいですね。



最後の対決は奇想天外な展開となり、この後の現実世界はどうなるのだろう?とその後が気になりますが、しっかり話は落ち着く。
コミカルな展開やスラング、暴走していくスト-リー展開は、ミシェル・ヨーのエブエブ(エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス)が思い起こされる。



映画が終わった後にパンフレットを購入しようとすると、既に長蛇の列が出来ていて買うのに随分と手間取りました。
上映中の館内も当方が見に行くような観客がガラガラの映画と比べると観客が多く、こういう映画に人気が高いのかなとも感じる。



中学生の長男の彼女役を演じた霊感のある少女役の近藤華も重要な役割を演じていて、恋の物語の序章にもなっています。
怖いのを思い出して夜ひとりでトイレに行けなくなるような映画ではなく、最後はどうなるんだろうとハラハラするエンタメ感たっぷりの映画でした。


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映画「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」~アポロ11号の月面着陸はフェイクだったのか?~

2024-07-24 17:20:20 | アート・ライブ・読書
 世の中には陰謀論やフェイクの話が多く流れており、近年ではコロナの発生原因やワクチンにICチップが入っているなどの陰謀論が渦巻いていました。
直近では某大統領候補が銃撃されたのはヤラセだったといっている人もいる反面、公式に公開されている情報が一概に正しいと言えないのも事実ではないでしょうか。

人類は宇宙人とのファーストコンタクトは済ませており、地球上のあちこちで宇宙人が暮らしている説などは夢があります。
しかし、本当に重要な機密情報や争乱の元になる情報は決して公開されることはないでしょう。
そんな中、昔からアポロ11号の月面着陸は捏造ではないのか?ハリウッドで撮影した映像ではないか?といったムーンホークス(インチキ)説があるようです。



公開されたばかりの映画「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」ではそんな陰謀論を逆手に取って奇想天外なエンターテイメントに仕上げています。
時は1969年、アメリカは宇宙開発でソ連(現ロシア)に後れを取り、ベトナム戦争は泥沼化、是が非でもアポロ計画を成功させなければいけない時期です。

政府は、PRマーケティングのプロであるケリー(スカーレット・I・ヨハンソン)を雇い、スポンサーを集めメディアを巻き込んだイメージ戦略を展開します。
そのために、月面着陸に関わるスタッフにそっくりな役者を雇って演技させたり、予算を確保するために議員の懐柔などをしていきます。
最後はアポロ計画を失敗できないニクソン大統領の側近から“月面着陸のフェイク映像を撮影する”との極秘ミッションを受けるという難題に臨みます。



映画の内容は見てのお楽しみになりますが、この映画は予告動画を見た時に是非見に行きたいと思わせる仕掛けがありますね。

・予告動画にT.レックスのゲット・イット・オン のギターリフが流れて煽られる。
・NASAの発射責任者のコール(チャニング・テイタム)が着ている黄色いセーターが「宇宙大作戦(スター・トレック)」のジェームズ・T・カークを連想させる。
・同じく青いセーターはMrスポックを連想させ、トレッカーのハートをくすぐります。
・ジャズのスタンダード・ナンバー「フライ・ミー・トゥー・ザ・ムーン」は、クリント・イーストウッドの映画「スペース カウボーイ」エンディングでも流れる曲。
 (月に到達した宇宙服姿のトミー・リー・ジョーンズの後ろでフライ・ミー・トゥー・ザ・ムーンが流れ、アポロ11号の月面着陸の映像と思わず対比してしまう。)
・劇中のセリフで“キューブリック監督に任せればよかった。”とスタンリー・キューブリックの名を出して嘆くシーンが出てくる。
 (世界中に流れた当時の月面着陸の映像はキューブリックが撮ったという都市伝説がある)

映画を見る前にいろいろと思いを巡らせ、いい意味で想像を裏切られるのは楽しい事です。



アポロ11号の月面着陸は、陰謀論だの嘘だのフェイクだと散々言われながらも、映画ではNASAの全面的協力を得て撮られたそうです。
月面着陸を成し遂げるまで、政治的・経済的な問題と技術課題を克服しながらも、映画自体はラブ・ストリーになっているのがアメリカ映画らしい。

この日、観客は座席数102席に対して当方も含めて6人。
しかも隅の席にみなさん座られていましたので、ほぼ当方の貸し切り状態で映画鑑賞出来ました。
やはり映画は、映画館の大きな画面・大きな音響で見ると“映画を見た感”が高まって楽しい時間を過ごせますね。




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