湖東三山(西明寺・金剛輪寺・百済寺)といえば有名な紅葉の名所で、紅葉の季節には大勢の観光客が訪れる観光スポットとなっています。
紅葉もいいんだけど、大勢の観光客と一緒では寺院をゆっくりと見て回ることは出来そうにありませんので、混雑を避けて春の西明寺へ参拝をしてきました。
西明寺は正式には『龍応山(りゅうおうざん)西明寺』といって、天台宗の寺院で平安時代の初期(834年)に仁明天皇の勅願寺として三修上人(慈勝上人)に命じて創建されたと伝えられているそうです。
縁起の概略は、『三修上人が琵琶湖の西岸を歩いていた時に、突如として琵琶湖東方の彼方より、紫雲が現われ光がさしてきた。「光の源をたずねれば、きっとすばらしい霊地があり、重大な使命が下されるに違いない」との霊感に打たれたこと』が始まりだそうです。
国道307号線に面して西明寺の総門がありますが、これは非常に新しいものに見えます。
調べてみると痛みがひどかったため再建して、平成27年9月6日に落慶したとのことでまだ1年も経ってはいないようですね。
参道の途中で名神高速道路の上を渡っていくのはご愛嬌でしたが、参道の横には苔が一面に広がっていて新緑の緑とともに美しい光景となっておりました。
苔のことはよく分からないものの、よく見ると何種類もの苔があるようです。苔に詳しい方なら分類できるのでしょうけどね。
西明寺の本堂は国宝に指定されており、鎌倉時代の初期に建立されたもので釘を1本も使わず建てられたものだそうです。
織田信長の時代に例に漏れず焼き討ちされた時に、寺僧の機知で本堂の前方に位置する房舎を激しく燃やし、全焼したように見せかけて本堂の焼失をまぬがれたそうです。
本堂の中に入ってまず驚くのは仏像の多さでしょうか。
本尊の薬師如来像(平安時代 重要文化財)は須弥壇上の厨子の中に安置されていて秘仏のため姿を拝むことはできません。
この薬師如来像は秘仏で住職一代につき一回のみのご開帳だそうで、現住職はすでにご開帳を済まされていることから次のご開帳はかなり先の事になりそうですね。
須弥壇(しゅみだん)には秘仏の薬師如来像を挟むようにして日光菩薩と月光菩薩が本来は配置されていたそうですが、お寺の方の説明では日光菩薩の方は痛みが激しいため現在は京都で修復作業中ということでした。
お寺の方は非常に丁寧な説明をしてくださる人で十二神将、日光・月光菩薩、四天王像などについて講義を聞くように説明をしていただくことが出来、非常に分かりやすかったと思います。
(十二神将 巳)絵葉書より
十二神将は十二支と結びつき頭上に干支の動物を乗せてあり、それぞれの干支にちなんだ神将が守り本尊となるそうです。
12体の仏像が左右に6体づつ並び、更に4隅には四天王像が配置されていて強いパワーに満ちています。
本堂でお寺の方から三重塔の内部が期間限定で特別公開中で、これは一見の価値がありますよと勧められる。
拝観料が1000円ということでしたが滅多にない機会なので拝観することにする。
この三重塔も国宝となっていて、この内部拝観では国宝の中に入って内部を至近距離で見られるという通常ならありえない拝観でした。
世話方の人が“狭い場所ですが10分くらい説明します”とおしゃってましたが、実際は興がのって30分程話を聞かせてもらうことが出来ましたので諸々の話を堪能できましたよ。
内部拝観は春と秋の一時期だけの特別公開をされていて、雨の日は湿気で痛むので国宝保護のため拝観はしていないそうです。
この日は晴天ということで縁があって拝観することが出来ましたが、中の装飾や絵は本当に素晴らしい!
お寺のパンフレットからの写真ですが、極彩色に彩られた内部の様子が伝わると思います。
三重塔のパンフレットより
総門から入った後に庭園の方へ行ったため、後先が逆になりましたが二天門を通って帰ることにしました。
この二天門は、室町時代に建立されたもので重要文化財に指定されています。
仁王様の前に大きな草鞋が祀られていますが、これは仁王様が夜になると草鞋を履いて立ったまま休まれるという話からきているようですよ。
お寺を出て駐車場まで戻った時に時計を見ると、2時間以上もお寺にいたようです。
本堂と三重塔でいろいろな話が聞けて面白かったので、時間がたつのをすっかり忘れていたようですね。