試すな危険!!
同僚が、間伐の際に発見していたケブカスズメバチの巣を、巣ごと捕ってくるという暴挙に出た。
命知らずにも程があるというものだが、彼はちょうどクワガタの土を山に戻しに行ったところだったらしい。
通りがかりに巣を見たら少し壊れていて、近づいてみたがハチは出てこなかったので、空き家になったかと思い、巣にクワガタのケージを逆さにスポッとかぶせたらしい。
とたんに巣からハチが大量に出てきたので、あわててケージの蓋を下から差し込んでパチンと閉じ、ひっくり返してそのまま持ってきた、とのこと。
読者諸兄は、命が惜しかったら、決して真似してはいけない。
巣の中には幼虫がぎっしり。
スズメバチのウジだ。でかい。
ケブカスズメバチは、キイロスズメバチの北海道亜種だ。名前のとおり、胸から腹が短い毛で覆われている。
キイロスズメバチはこのところ、各地で刺傷被害をもたらしているな。
被害に遭われた皆様にはお見舞い申し上げる。
中には亡くなった方もおられると聞いている。スズメバチによる死者は、毎年数十人単位にのぼるという。
日本で一番恐ろしい野生生物は、毒ヘビでもクマでもない、スズメバチ類なのだ。
凶悪そのもの、といった感じの面構え。
これらは働きバチで、すべてメス。卵を産めないメスで、産卵管が毒針になっている。
アマゾネス軍団だ。
卵を産むのは女王バチだけで、女王バチは巨大だが毒針を持たない。
オスは女王に受精したら役目が終わり。それだけの生き物だ。
ケージの中で羽音が不気味なハーモニーを奏でる。
山仕事の俺たちを凍りつかせる、恐怖の唸りだ。
ケージには雨水が溜まっているが、昨日からの雨で水がいっぱいになっていたのだ。
幼虫のおそらく大半は、巣から出て溺死していた。
しかし、水を捨てたら成虫が巣から出てきて、このとおり激怒しながら飛び始めたのだ。
怒りのあまりか、ハチ同士で刺し合いをしてるやつもいた。
絶対にケージの蓋は開けれねえ。
雨の前には、巣からこぼれ落ちた幼虫が、肉団子にされているのを見た。
成虫は、他の虫を捕らえて肉団子にして、幼虫に与える。幼虫は肉食なのだ。
成虫は樹液や花の蜜を食べる。だから、飲みかけのジュースや化粧品などの香料にはハチが集まってくる。
気付かずにハチ入りジュースに口をつけて、唇を刺される事故も多い。
この時期山に行くなら、十分気をつけなければならない。