ポイント。


俺のサンバーは、660の初期型で、点火系統にコンタクトブレーカー、いわゆるポイントを使っている。
これはサンバーのポイントキット。
このポイントで点火コイルの一次側を開閉することで、二次側に高電圧を誘起するのだ。
ポイントはディストリビュータ、いわゆるデスビの中に入っている。
デスビは日本語にすれば分配器とでもいうのか、適切な点火位置でカムによりポイントを開くと同時に、点火コイルの二次側に発生したの高電圧を、点火順序に従ってスパークプラグに分配するのだ。
サンバーのデスビは、カムシャフトにドグカップリングでつながっている。したがって、回転方向はエンジンと同じ、回転数はカムシャフトと同じになる。


デスビのキャップがこのようなクリップで固定されていれば、ポイント式だ。
この後の型ではデスビは一体のフルトラ式になっていて、デスビキャップはネジ止めされている。


後註になるが、ポイントキットのパッケージ裏面。
スバルの型番は「22186KA030」。
もうひとつの品番「029350-0850」で調べると、ダイハツのポイントであると記された海外のサイトが引っ掛かるが、なにぶんネットの情報のこととて、真偽のほどはわからない。


ポイントのメンテは、デスビを外せばラクに行なえる。
デスビを外すには、まずポイントの配線を外す。黄色い線が1本だけだ。
フルトラタイプでは、黄色と黒の2極のカプラになっている。


バキュームアドバンスのゴムホースを外す。
エンジンの吸気負圧で負荷をモニタし、高負荷のときにこのバキュームアクチュエータで点火時期を進めるのだ。


デスビキャップの2本のクリップを外すと、キャップが外せる。


キャップの中央に刺さっているコードだけを、キャップから抜く。
このコードは、イグニッションコイルにつながっている。


他の4本のプラグコードの付け根には、対応するシリンダ番号が振ってある。
見づらいかもだが、右上が1で、そこから左回りに3,4,2だ。キャップ側から見れば、エンジンは左回りなのだ。


キャップを外すと、赤っぽいロータが見える。
ロータの、この写真で奥になる先端に、電極がある。
コイツが回転して、キャップのプラグコードに高圧を飛ばすのだ。


ハッチ側から見た#1は、手前の上側になるから・・・。


クランクシャフトを回して、ロータをこの向きにすれば、#1の点火位置あたりになる。


クランクプーリーのタイミングマーク。
コイツは1回転に1回、タイベルカバーのポインタに合う。そのとき、上死点になっているのは、#1か#4だ。
デスビのロータがこっち向いてれば、#1。
タイミングマークは、下からTC、BTC6°、10°、14°だ。この写真はTC、すなわち上死点。
#1の上死点あたりでデスビを外す。


デスビのフランジのボルト2本を外せば・・・。


デスビを抜ける。
長いこと触ってないデスビだと、サビで固着してるかもしれない。


デスビのドグカップリングには、#1上死点で脱着するとき手前になる側に、ラインが刻まれている。
いわゆる合いマークだ。


カップリングを軸側から見ると、こんな形。
180°逆にも付いてしまいそうだが、合いマークがあるから合わせれば間違いないし、よく見ると噛み合いがビミョーにオフセットしているので、裏返しに付けようとしてもまず付かないようになっている。
ただし、バカ力の持ち主ならムリヤリ付けれてしまうかもしれない。どっか壊れるだろうけど。


外したデスビから、ロータを引っこ抜く。


ポイント登場。


ゴムキャップをかぶっているのが一次線。


ポイントの一次線は、デスビターミナルの内面側にクワガタ端子で刺さっているので、ナットを緩めてやれば、ナットを完全に外さなくても抜ける。


ポイント本体は2本のネジで止まっている。左側のネジにはポイントのアースが共締めされている。
ネジ2本外せば、ポイントが外せる。


ポイントを新品と比較。
矢印の部分は、デスビのカムの起伏を受ける「ヒール」で、ベークライトかなんかでできている。
新品と比べるとかなり減っているのがわかる。
ここが減ると、バルクリ開きすぎのときと同じく、リフトが小さくなるからポイントギャップが狭くなり、ポイントが開くタイミングが遅れる。
点火時期が遅れてくるし、最悪ポイントが開かない状態になって、エンストする。


デスビの軸は、ロータの嵌まる先っちょ側は、一面をはつってキーにしてあり、奥は角の丸い四角になっている。
角の丸い四角はカムになっていて、デスビ1回転で4回、ポイントのヒールを押すようになっているのだ。


ポイントキットには、グリスの小袋が同梱になっているはずだ。
このグリスをカムに塗る。


新しいポイントを組む。
ポイントを調整で動かすとき、こっち側が支点になる。共締めのアースを忘れない。


カム山の頂点にヒールを乗せて、ポイントのクリアランスが0.5ミリくらいになるように調整する。
黄色で囲ったとこにマイナスドライバを入れて、ポイント全体を動かすのだ。
いいとこでネジを締める。
白いのは、カムに塗った添付のグリス。
このくらい付いてても問題ない。


一次線のクワガタをこっち向きに取り付けると、端子のカシメとケースがアースしてしまい、ポイントに通電できなくなる。
そうなると、なんぼやってもエンジン掛かんない。
ありゃ?なして?と悩むときは、こんなポカやらかしている。


クワガタを裏返して、こっちが正解。


軸は自由に回せるので、ロータをはめ込んだら、こっち向きになるようにしとく。
オーリングやパッキンは新品にするのがよい子だが、今回は悪い子。


デスビをエンジンに刺して、少しロータを揺すってドグカップリングを合わせれば、フランジまですんなり入る。
これがフランジまで入らないときは、たぶん軸が180°反対だ。


フランジボルトはフィンガータイトの仮付け。
外した一次線のカプラをつないでおく。


クランクシャフトを一度オーバーに逆転させてから、正転方向に回して、点火位置にあわせる。
これはキャブ車正規のBTC6°。


・・・なんだけど、今回は少し進めて6°と10°の間くらい、8°ってあたりにしてみた。
この程度進めても、よほどの低速高負荷でなければノッキングの心配はまずない。
だからって極端に進めると、ノッキングだけでなく排ガスが悪化する可能性があったりするから、まあこんなもんかな、と。


コイルに残っている高圧コードの一端を、どこか金属部分に近づけておく。
完全にくっつけないで、1ミリくらい離しておく。


キーをONにする。
セルは回さない。
この状態で、デスビをいったんオーバーに逆に回してから、ゆっくり正転させる。
このとき、クランクシャフトは動かさず、デスビ本体のほうを回すので、正逆はエンジン回転方向と逆になる。
デスビをキャップ側から見れば、デスビボディをいったん反時計回りに回してから、ゆっくり時計回りに回していくのだ。


奇跡的ショット。
デスビをゆっくり正転させていくと、ほんの一瞬だが、コードとエンジンの間にパチッとスパークが飛ぶ瞬間がある。
それがポイントが開く瞬間なので、慎重にその位置を確定して、デスビのフランジボルトを締める。
まさか、その一瞬をタイミングよく写せるとは思わなかった。ダメモトで1枚だけ撮ってみたんだよ。スゲーな俺。


ネジ締めたら、デスビが点火位置になってるはずなので、今度はクランクシャフトのほうをいったん逆に回してから、ゆっくり正転させて、スパークする位置を確認する。
8°あたりだな。よしよし。
これで点火時期のザックリ調整はできた。もっときちんと詰めたかったら、エンジンを指定の回転数で回しながら、タイミングライトでチェックしないと無理だ。
俺はいつもこれだけで合わせたことにしているが、特に問題はないようだ。


キャップを復旧して、高圧コードを挿す。
あと、バキュームホースも忘れず。
試運転して普通に走れればいんでないかと。
8°にセットすると、6°で合わせるより登坂はやや力強く感じるが、気のせいかもしれない。
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