hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

山崎ナオコーラ『あきらめる』を読む

2024年10月31日 | 読書2

 

山崎ナオコーラ『あきらめる』(2024年3月30日小学館発行)を読んだ。

 

小学館による紹介

登山で頂上まで行く? 途中で降りられる?
「『あきらめる』って言葉、古語ではいい意味だったんですってね。『明らかにする』が語源らしいんです」

近所の川沿いを散歩するのが日課の早乙女雄大。
入院中の愛する人との残り少ない日々の過ごし方や、
ある告白をきっかけに家を出てしまった家族のこと、
あれこれと思い悩みながら歩いていると、親子風の二人組に出会う。
親に見える人は何やら思い詰めた表情で「自分の人生をあきらめたい」と言う…。

ふとしたきっかけで生まれた縁だったが、
やがて雄大は彼らと火星に移住し、「オリンポス山」に登ることを決意する…!?

「あきらめる」ことで自らを「あきらかにしていく」――
火星移住が身近になった、今よりほんの少し先のミライが舞台の新感覚ゆるSF小説。

 

成熟者:年を増やしたプラス面が引き立つ、高齢者に代わる流行りの言葉。

火星移住:12期の火星移住を募集中。地球での生活に行き詰まりを覚えた人に希望者が多い。成熟者と7歳未満の子どもとその家族は優先。

 

登場人物

早乙女雄大:「孤独散歩」が日課。「あきらめる」が口癖。想いを打ち明けた親友が病院にいる岩井で、大学に勤める長女が塔子

博士:雄大の息子。小学生から高校生までひきこもり、20歳で大学に入り、絵を楽しみ、細々と暮らす。分身ロボットを火星に移住させ、自身は地球に残る。あきらめたと考えても、評価に対する拘泥が深く根を下ろしていることに気が付く。

弓香:3年前に岩井への気持ちを告白してから、連絡が取れない妻。1年前火星に移住。

秋山輝(あきら)美人。恋愛できないが、育てたい人間。

龍:輝と同居。輝の元パートナー英二の連れ子。5歳。感覚過敏で、指示に従うことができない性質なので、特別支援学級に入れないので、療育に通う。絵を描くのが好き。

雪山雪:ネグレクト気味のシングルマザー。息子はトラノジョウ。「いつか誰かが私を断罪してトラノジョウを救うんだろう」と思っている。

雪山トラノジョウ:雪の息子。5歳。物を組み立てたりするのが好き。

 

 

私の評価としては、★★☆☆☆(二つ星:読むの?  最大は五つ星)

 

様々な生きづらさを抱えた人が登場し、独自の世界を展開する話を、硬い言葉、直球メッセージで語るので、読んでいてくたびれる。さらに、話しが執拗で長い。例えば、雄大の岩井との夢や、博士の恨み節が延々10頁も続きうんざり。

 

多様性が妨げられているという著者の主張が生に近い形で、強く出ていて、楽しく読めない。

 

数人の登場人物たちが、章ごとに代わって語り、また違る面が汲み取れる構成は良かった。

 

火星移住、身代りロボットが、ただ登場するだけでほとんど物語との絡みが少ない。SFの要素は感じられない。

 

 

「小説丸」の山崎ナオコーラ『あきらめる』」で山崎さんの言

いや、みなさんには、あきらめたくないこともいっぱいあるでしょう。知っています。あきらめない方がいいこともありますよ! でも、あきらめたっていいことも、実は結構あるんです。

 今の社会は、あきらめずにがんばった人ばかりが受け入れられる社会ではありません。あきらめた人も生きていけます。そういう小説です。

 あなたも、何かをあきらめてみませんか? あきらめて、あきらめて、あきらめた先に、小さなキラキラした光が見えるかもしれません。実はこの社会、わりと優しいんですよ。あなたを受け入れます。

 

山崎ナオコーラの略歴と既読本リスト

本書の著者紹介にはこうある。

作家。性別非公表。2004年にデビュー。

目標は、「誰にもわかる言葉で、誰にも書けない文章を書きたい」。

他の著書に、『美しい距離』『母でなくて、親になる』『ニセ姉妹』『ミライの源氏物語』など。日常の社会派。趣味は育児、

火星に持っていきたいものは、タブレット。

 

 

メモ

 

・人を嫌いになりそうなときは離れるのが一番だ。距離は人を好きにさせる。(p86)

 

 

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熊木淳『フィクションのなかの警察』を読む

2024年10月25日 | 読書2

 

熊木淳著『フィクションのなかの警察 目にはみえない「組織」とそこで働く「個人」』(2024年8月5日笠間書店発行)を読んだ。

 

笠間書店による長~い紹介

日本の警察小説において、警察の描かれ方はどう変化してきたのか?
ドラマ・映画など映像化されてきた警察小説の歴史…

事件は「現場」だけで起きてるんじゃない!!

日本の警察小説において、警察という組織の描き方は大きく変化した。
1990年代後半、横山秀夫の出現をさかいに、警察小説は多様化し、様々な警察組織の在り方を描くようになり、それらはドラマやアニメなどにも波及していった。
本書では、横山秀夫の作品を出発点として、警察小説における冤罪というテーマ、2000年代以降出現した公安警察を舞台とした公安小説、そこから派生した監察部門を描いた小説を扱うことで、現代日本の警察小説の全体像を浮かび上がらせる。
●強烈な個性を持つ刑事はなぜ描かれなくなったのか?
●冤罪はなぜ起こるのか?
●公安警察官が組織に歯向かう理由とは?
●組織への帰属意識はどのように生まれるのか?

日本の警察小説において、警察の描かれ方はどう変化してきたのか?
『震度0』『死亡推定時刻』『外事警察』『禁猟区』……多くの作品がドラマ・映画など映像化されてきた警察小説の歴史を紐解く論考。

下記のような方へおすすめ
○警察ドラマや映画、小説などが好き
○警察小説を書いている/書きたい
○文芸批評や表象文化論に興味がある
警察関係者も必読! 警察小説・ドラマ・映画がよりわかり、楽しめる文芸批評!

 

警察小説の歴史は、小説の中での警察組織の対象が、刑事部だけでなく、公安部、監察と広がっていき、同時に組織間の対立、組織悪の謎、などと深みを増して、より広範に、より深化してきた。

 

 

第一章 組織と負荷――横山秀夫

「警視庁」には、警視総監と副総監のもと、「総務部」「警務部(人事(監察))」「交通部」「警備部(機動隊等)」「地域部」「公安部(公安・外事)」「刑事部(捜査1~3課・鑑識課)」「生活安全部(少年事件等)」「組織犯罪対策部」「犯罪抑止対策本部」の各部と「警察学校」「方面本部」「102の警察署」がある。(警視庁 組織について

基本的に、自治体警察の本部長(トップ)・警務部長(人事・会計トップ)は警察庁キャリアの国家公務員の席で、警備部長は警察庁準キャリアの席、刑事部長・生活安全部長・交通部長は地方採用のノンキャリアの席だ。しかし、実際の人事実務をまとめるのは地元ノンキャリアの警務課長であり、キャリアは2年で異動していってしまう。

警察組織の記述に初めて本格的に取り組んだのが横山秀夫だ。

 

第二章 運命から「あざなえる縄へ」――冤罪小説

冤罪をいかに描くかによって、警察組織のありようを浮かび上がらせることができる。

 

第三章 刑事小説のオルタナティブ――公安小説

刑事は事件が起こってから動くが、公安は事件が起こる前にすでに動いている。証拠を積み上げて犯人を特定していく刑事部捜査と違い、公安部はある程度見込みで犯人に目星をつけた後、徹底的な視察・内偵で証拠を積み上げる。時には証拠をでっちあげてもテロを防ぐ。

 

第四章 問われる帰属――監察小説

監察(監督査察)は、警察内部で不祥事などが発生した場合、取り締まりや調査などを行い、いわば警察内スパイとも言える。公安警察と関りが強い。

 

 

私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで、最大は五つ星)

 

警察小説のファンには、対象となる警察組織を拡大することで発展してきたその流れが良く分かり、なるほどと感心するかも。数多くの警察小説が登場するのも楽しみだ。
警察小説に対しての横山秀夫の素晴らしい貢献については、納得だ。

 

直接、警察組織の説明をした方がわかりやすいだろうが、この本では、あくまで警察小説の中での警察機構の説明に限定されているので、間接的でわかりにくいこともある。

 

様々な警察小説の解説が語られるが、警察組織に関係する部分に注力しており、登場人物のキャラ、話の筋などには触れていない場合が多く、各小説の紹介、批評としてはもどかしい。

 

 

熊木淳(くまき・あつし)
獨協大学外国語学部フランス語学科准教授。専門はフランス文学。

主な著書に『アントナン・アルトー 自我の変容――〈思考の不可能性〉から〈詩への反抗〉へ』(水声社、2014年)、『戦後フランスの前衛たち――言葉とイメージの実験史』(水声社、2023年、分担執筆)など。

 

 

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キャサリン・ライアン・ハワードの略歴と既読本リスト

2024年10月20日 | 読書2

 

キャサリン・ライアン・ハワード(Ryan Howard, Catherine)

1982年、アイルランド・コーク生れ。フランスやオランダで旅行関係の仕事をしたり、アメリカのディズニー・ワールドのホテルで働いたりしつつ、小説やノンフィクションを自費出版する。


2016年、初のミステリ作品にしてデビュー作でもある『遭難信号』は、英国推理作家協会新人賞(ジョン・クリーシー・ダガー賞)を受賞し、アイリッシュ・ブック・アワードの最優秀クライム・フィクション部門で最終候補となった。
2018年『The Liar's Girl』は、MWA最優秀長篇賞の最終候補に選ばれる。
2020年、『ナッシング・マン』は、CWA賞イアン・フレミング・スティール・ダガーの最終候補となった。
2021年『56日間』は、ついに「アイリッシュ・ブック・アワードの最優秀クライム・フィクション部門賞」を受賞し、「ニューヨーク・タイムズ紙が選ぶベストスリラー10」と「ワシントン・ポスト紙が選ぶベスト・スリラー&ミステリー10」に選ばれた。

 

キャサリン・ライアン・ハワードは、アイデアを、Excelシートを用いてストーリーを作り、プロットの要所を埋めていく。そのExcelシートは時間と共に密度が増していき、また、カラフルになっていく。そんなExcelシートとテキストを行ったり来たりしながら、作品を完成させる。(村上貴史による)

 

 

高山祥子(たかやま・しょうこ)

1960年、東京生れ。成城大学文芸学部卒業。バロン『世界一高価な切手の物語』、ドーソン『アメリカのシャーロック・ホームズ』、チャールズ『あの図書館の彼女たち』、ソログッド『マーロー殺人クラブ』、キャサリン・ハワード『遭難信号』『ナッシング・マン』『56日間』など訳書多数。

 

 

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キャサリン・ライアン・ハワード『56日間』を読む

2024年10月19日 | 読書2

 

キャサリン・ライアン・ハワード著、高山祥子訳『56日間』(新潮文庫ハ59-1、2022年10月1日新潮社発行)

 

裏表紙にはこうある。

新型コロナウイルスが猛威をふるうなか、ダブリン市内の集合住宅で身元不明の男性の遺体が見つかる。遡ること56日、独身女性キアラは謎めいた男性オリヴァーと出会っていた。関係が深まるにつれ二人には、互いに明かせぬ秘密があるとわかるが……。遺体発見の現在と過去の日々を交互に描き、徐々に明かされる過去。そして待ちうける慟哭のラスト。コロナ禍に生まれた奇跡のサスペンス小説。

 

本書は、「コロナ禍」背景として、現在である「今日のパート」と、56日前を起点とする「過去のパート」の2つのストーリーが交互に語られる。

 

「今日のパート」集合住宅で発見された遺体を、アイルランド警察の女性刑事リーと部下のカールが捜査する物語で、遺体は誰か、事故か、事件か、死因は、と捜査は難航する。

 

「56日前」で始まる「過去パート」は男女の出会いの物語で、女性視点と男性視点で語られていく

女性主人公のキアラは、スーパーのレジ・カウンターの行列に加わろうとしている魅力的で、身なりの良い男から声をかけられ、店を出たところで再び男は、キアラのスペースシャトルの絵がついたトートバッグを、「いい袋だね」と声をかけてくる。
オリヴァーと名乗った男が提案し、コーヒーを買って、堤防に座って一緒に飲み、語り合い、月曜に、アポロ計画のドキュメンタリー映画を一緒に見に行かないか誘われる。

 

キアラとオリヴァー、二人ともに何か謎が感じられる彼女と彼の関係はどうなっていくのか? そして、「今日のパート」の腐敗した遺体の謎は? 二つのストーリーはどんなふうにリンクするのか?

 

 

私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め、 最大は五つ星)

 

「今日のパート」の少しずつしか進まない遺体の捜査状況と、56日前から現在に向けての「過去のパート」での男女の出会いとためらいながら進展する恋愛の話が、交互に進んで、最後に両方が一致するという話の構成が面白い。

 

何かいかにも罪の意識に悩む男と、何かがありそうな女が互いに好きになっていく過程で、思わせぶりな謎?(伏線?)が、歯に詰まった何かのように気になりながら、不安を秘めて進んで行く。しかし、ありがちな余分な挿入される話はなく、二人の話はストレートに語られ、愛が深まると同時に不安が増していく。

 

アイルランドでのコロナに対するロックダウンの実状も、実生活の視点から実感をもって描かれて、興味を引いた。さらに、人と人が会えなくなるというコロナ禍の進展と、二人の恋愛の進展が関連を持って進行するのも巧みに描かれている。

 

決してベテランではないのに、著者・キャサリン・ライアン・ハワードの語り口は見事だ。私には、中ほどで謎はだいたい推測がついてしまったが、それでも面白く読み切った。

 

キャサリン・ライアン・ハワードの略歴と既読本リスト

 

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スティーヴン・キングの略歴と既読本リスト

2024年10月18日 | 読書2

 

スティーヴン・キング(Stephen King)
1947年メイン州ポートランド生れ。貧しい少年時代から恐怖小説を好む。高校教師、ボイラーマンといった職業のかたわら執筆を続ける。

1974年に『キャリー』でデビューし、好評を博す

以後『呪われた町』『シャイニング』『IT』『ミザリー』『デッド・ゾーン』など、次々とベストセラーを生み、“モダンホラーの帝王”と呼ばれる。

ホラー以外でも、『スタンド・バイ・ミイ』、『グリーン・マイル』、『ダーク・タワー』シリーズ、『書くことについて』などがある。

全米図書賞特別功労賞、O・ヘンリ賞、世界幻想文学大賞、ブラム・ストーカー賞など受賞多数。

 

日本でもっとも愛される映画の一つ「シーシャンクの空に」は、『ゴールデンボーイ 恐怖の四季 春夏編』の中にある「刑務所のリタ・ヘイワース」が原作。
無実の罪で囚人となった元銀行家アンディーは、理不尽に叩かれ続けるが、壁にリタ・ヘイワースの写真を飾るなど小さな幸せを見つけて、不屈の心で、冴えた生き様をし、そして、30年後に・・・。

 

12歳の4人の少年が噂を信じ、死体を探して2日間の旅をする映画(と主題歌)は『スタンド・バイ・ミー 恐怖の四季 秋冬編』の中の「スタンド・バイ・ミー」が原作。
悲惨な家庭を抱える4人の少年の友情と冒険を、作家となった主人公が描く半自伝的作品。

 

 

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スティーヴン・キング『書くことについて』を読む

2024年10月17日 | 読書2

 

スティーヴン・キング著、田村義進訳『書くことについて』(小学館文庫キ4-1、2013年7月10日小学館発行)を読んだ。

 

裏表紙にはこうある。

「われわれ三文文士の多くもまた、及ばずながら言葉に意を注ぎ、物語を紙の上に紡ぎだす技と術に心を砕いている。本書のなかで、私はいかにして『書くことについて』の技と術に通じるようになったか、いま何を知っているのか、どうやって知ったのかを、できるだけ簡潔に語ろうと思っている。テーマは私の本業であり、言葉である」(本書「前書き」より)
 モダン・ホラーの巨匠が苦闘時代からベストセラー作家となるまで自らの体験に照らし合わせて綴った自伝的文章読本。『小説作法』の題名で刊行された名著の待望の新訳版。

巻末には新たに著者が2001年から2009年にかけて読んだ本ベスト80冊を掲載。

 

 

ベストセラー作家の自伝的文章読本。

  • 履歴書 ドラッグとアルコール漬けの作家生活38歳までを語る半自叙伝の回想
  • 道具箱 書くために必要となる基本的なスキルの開陳
  • 書くことについて いいものを書くための著者独自の魔法の技
  • 生きることについて 「書く」と「生きる」ためのスティーヴン・キングの人生観

補遺 その1 短篇原稿見直しの実例(第1稿と第2稿)

補遺 その2 ここ3,4年の間に強く印象に残った本のリスト100冊

補遺 その3 2001年~2009年で読んだ本のベスト80冊

 

 

私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め、 最大は五つ星)

 

前半の約半分は、キングの自叙伝で、彼のファンなら面白く読めるだろう。しかしファンでなくても、書くことが好きな少年が貧しいなかで、なんとか浮かび上がり、作家への道を、あれやこれやと懸命に探る話は興味を持って読めるだろう。ちなみに、米国では新人賞受賞からの作家デビューという道はないのだろうか。

 

後半の小説を書くコツについては、抽象論、精神論でなく、具体例を挙げて説明しているので、理解しやすい。もちろん、ミステリーやホラーとは違った恋愛物や、純文学などを書く場合は適合しない部分もあるとは思うが。

「補遺 その1」には、短篇原稿の第1稿(日本語訳)と、どのように見直したかの第2稿(第一稿の英語を訂正したものと日本語訳)が実例で示されていて、アメリカ人のプラグマティズムに感心する。

 

 

スティーヴン・キングの略歴と既読本リスト

 

 

 

以下、私のメモ

  • 小説のアイデアはどこからともなく湧いてくる。また、二つが合体して新しいものが生まれることもある。我々がすべきなのは見つけ出すことではなく、目の前に現れたときに気づくことだ。

  • 気分が乗らなかったり、イメージが湧かなくなったからといって、途中で投げ出すのはご法度だ。いやでも書き続けなければならない。…そんなときに、いい仕事をしていることはけっこうあるものだ。

  • 作家になりたいのなら、絶対にしなければならないことがふたつある。たくさん読み、たくさん書くことだ。私の知るかぎり、そのかわりになるものはないし、近道もない。

  • 出来の悪い小説は、してはいけないことを教えてくれる(例、『マディソン郡の橋』)。逆に、『怒りの葡萄』は文体、品格ある叙述、プロットに展開、立体的な人物造形、誠実な語り口など多くのことを教えてくれる。

  • できれば初稿はワン・シーズンつまり3カ月以内で仕上げたい。どんなながいものでもそうだ。一日の目標は10ページ、二千語。三か月なら18万語になる。読者が夢中になって読むのにちょうどよい長さだ。

  • 週に一日は休んでもいい。だが、それ以上は駄目だ。ストーリーが間延びしてしまう。

  • 仕事場に電話はない方がいい。TVやゲーム機は論外だ。窓にはカーテンをしておく。

  • 小説は3つの要素からなる。ストーリーをA地点からB地点に運び、最終的にZ地点まで持って行く叙述、読者にリアリティを感じさせる描写、そして登場人物に声明を吹きこむ会話だ。プロットを練ると、ストーリーが自然に生まれなくなる。作家がしなくてはいけないのは、ストーリーに成長の場を与え、それを文字にすることだ。

  • 登場人物の顔や体形や服といったものは、読者の想像に任せておけばよい。それを細々と描いたら、そこに読者が入り込む余地はなくなり、両者の相互理解のきずなは失われる。

  • 1次稿は、ドアを閉めて、誰の助けも借りず(あるいは邪魔も受けず)、自分ひとりで書かなければならない。プレッシャーはあった方が良いのだ。

  • 1次稿の原稿は最低6週間寝かせた方がよい。

  • 1次稿の見直しは、気づいたことを片っ端からメモにとっていく。ただし、スペル・ミスは矛盾箇所の訂正といった事務的な作業の範囲内にとどめておいた方が良い。

  • 素性の妖しい代名詞、説明不足箇所、副詞を削除する。ストーリーの首尾一貫性をチェック。

 

 

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アントニイ・バークリー『毒入りチョコレート事件』を読む

2024年10月13日 | 読書2

アントニイ・バークリー著、高橋泰邦訳『毒入りチョコレート事件』(2009年11月13日新版初版、東京創元社発行)を読んだ。

 

本書見開きにはこうある。

ロジャー・シェリンガムが創設した「犯罪研究会」の面々は、手掛かりがわずかしかなく、迷宮入り寸前の難事件に挑むことになった。被害者は、新製品という触れ込みのチョコレートを試食したベンディックス夫妻。チョコレートには毒物が仕込まれており、夫人は死亡、ベンディックスは一命を取り留めた。しかし、そのチョコレートは知人のペンファーザー卿に送られたもので、ベンディックスはそれを譲り受けただけだったのだ。会員たちは独自に調査を重ね、自慢の頭脳を駆使した推理を、一晩ずつ披露する――。誰がこの推理合戦に勝利するのか。本格ミステリ史上に燦然と輝く、傑作長編。

 

杉江松恋氏の本書巻末の解説によれば、

『毒入りチョコレート事件』の優れた点は、この「多重解決」という小説のありようを読者に呈示したことにある。……

ところが(著者)バークリーは、犯人を推理するという推理の工程自体を特権的なものとして採り上げた。実際の犯人が誰であろうと(極言すれば犯人なぞいなくとも)推理は可能であるという可能性を示したわけですね、これがミステリという小説ジャンルを、純粋な知的遊戯として解放するための第一歩となったのである。

 

 

事件の発端は、ロンドンのクラブに、女癖の悪い男爵であるユーステス・ペンファーザー卿宛ての一箱の小包が届けられた。送り主はメイスン父子商会で、新製品のチョコレート・ボンボンの詰め合わせをご試食いただきたいと手紙が添えられていた。

同席していた実業家のグレアム・ベンディックスが、卿がいらないというチョコレートの箱をもらって帰宅し、摘まんだが舌を刺す味がして2個で止めた。妻・ジョウンは7個食べ、死亡した。警察の調べではニトロベンゼンが注射されていた。

 

作家で探偵でもあるロジャー・シェリンガムが、会長を務める「犯罪研究会」の6名を前に新しい提案をする。警察が未解決のままお蔵入りさせた上述の毒殺事件について、メンバー6名が独自に推理、あるいは調査して、翌週毎日一人ずつ推理を発表し、推理合戦することを提案し、賛成が得られた。
そこで、スコットランド・ヤードのモレスビー首席警部から事件について報告を受ける。

提出された推理は、警察と合わせると、計8件となる。

 

 

本書は、1971年10月22日初版、2002年3月8日27版、2009年11月13日新版初版発行。

英国で1929年に発表。日本では「新青年」の1934年8月号に「毒殺六人賦」の題名で掲載。

 

 

アントニイ・バークリー/フランシス・アイルズ

1893年イギリスのハートフォードシャー生まれ。第一次世界大戦に従軍後、ユーモア作家として〈パンチ〉誌で活躍。
「?」名義で『レイトン・コートの謎』を著して以降、『毒入りチョコレート事件』『第二の銃声』『ジャンピング・ジェニイ』など、従来の探偵小説に対する批判を織り交ぜた実験精神あふれる作品を発表。英国本格ミステリ黄金期を代表する作家としてその地位を不動のものとした。
他の作品に、フランシス・アイルズ名義で発表したサスペンス『殺意』『レディに捧げる殺人物語』などがある。1971年没。

 

 

私の評価としては、★★☆☆☆(二つ星:読むの?  最大は五つ星)

 

ミステリー小説の歴史の一つとして読んで置かねばと我慢して読んだが、次々に展開される推理は、前の推理の欠陥を指摘し、勝者を誇るが、次の者に凹まされるという、多重構造で、話しは行ったり来たりで、もどかしい。

しかも、前の椎理者を傷つけないようにと、もってまわったバカ丁寧な遠回しな表現で、これが結果的に慇懃無礼な英国ハイソサエティの長演説となるので、うんざり。

TV観戦、昼寝、散歩等々で多忙な私は、俺はそんなに暇じゃないんだと、イライラしてしまった。古き良き時代の英国の古典ですね。

 

 

犯罪研究会メンバー

  • ロジャー・シェリンガム:犯罪研究会の会長、作家。バークリーのシリーズ探偵のうちの一人。
  • チャールズ・ワイルドマン卿:刑事弁護士
  • フィールダー・フレミング:劇作家
  • モートン・ハロゲイト・ブラッドレー:推理作家
  • アリシア・ダマーズ:小説家
  • アンブローズ・チタウィック:バークリーのシリーズ探偵のうちの一人

 

 

 

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上野千鶴子『こんな世の中に誰がした?』を読む

2024年10月07日 | 読書2

 

上野千鶴子著『こんな世の中に誰がした? ごめんなさいと言わなくてもすむ社会を手渡すために』(2024年1月30日光文社発行)を読んだ。

 

序章より

この三〇年間で、結婚してもよいしなくてもよい、子どもを産んでもよい産まなくてもよい、フルタイムで働いてもパートタイムで働いてもよい、と女性の生き方は多様化しましたが、そのいっぽうで格差が拡大し、低所得のシングル女性が増えています。彼女たちは努力が足りなかったわけでも人生の選択を誤ったわけでもありません。わたしたちは一歩間違えれば貧困に陥るような、危うい社会を生きています。
 この本では、女の人生を「仕事」「結婚」「教育」「老後」の四つのステージにわけて、何が起きて、その結果、女たちの人生はどうなるのか、これからどこへ向かうのかを解説しています。

 

 

私の評価としては、★★★★★(五つ星:読むべき、 最大は五つ星)

 

いつもにも増して明快な論理で、わかりやすい。細かい点で「そうかな?」と思う点はあっても大方は納得。喧嘩腰の論争も控えめであり、読みやすい。

 

上野さんが、過去戦ってきた構造的な女性差別問題から、近年取り組んでいる介護問題を端的に解説し、変革してきたこと、現在の課題をわかりやすく、説得力をもって主張している。

 

上野さんの最新作で、簡潔、概略版ながら代表作だと思う。

 

 

上野千鶴子の略歴と既読本リスト

 

 

以下、私のメモ

 

 

「仕事」

  • 日本の15歳~64歳の女性の就業率は 74.3%(OECD平均は65.8%)
    正社員でも給与水準は男性の77.6%。女性の半数以上が非正規で、約6割は年収200万円未満

  • 非正規労働者は、男性は65歳以上が最も多く、女性は45歳~54歳の中高年女性が最も多い

  • 1990年に881万人だった非正規雇用者は2016年に2千万人を超えた

  • 2010年の30代男性の結婚確率は正規雇用者で 69.3%、非正規で24.4%

  • 男女雇用機会均等法が成立し、企業はこの影響を最小限にするために、「コース別人事管理制度」を導入し、女性は一部の総合職と大多数の女性の一般職に分断した。結局、均等法は男並みに働きたいという少数の女性に門戸を開いただけだった。
    均等法で評価できるのは、1997年の改正で事業主にセクハラ防止と対応を義務化したこと。

「結婚」

  • 50歳時の未婚割合は、70年代には男女とも5%を切っていた。2020年には、男性が 28.3%、女性が17.8%
    20代の独身男性の4割近くが、これまでの恋人の数もデート人数も0
    男の初婚年齢の平均は31歳で、30代男性の既婚率と年収はきれいに相関している。

  • 貧しい二人が支え合う結婚は増えていない

 

「教育」

  • 2019年の調査で、算数・数学の平均点は、小学4年はともに593点、中学2年生は男子595点、女子593点とほぼ男女差はなかった。女子に数学の苦手意識が高まるのは後天的な理由からでしょう

 

「老後」

  • 有料老人ホームは、売買するのが所有権ではなく居住権で、資産が残らないので子どもが反対することがある

  • 介護保険制度はホームヘルパー資格制度を作って、介護を家族でなく、有資格のプロが行うことにした。家族のなかに第三者の目が入ることになり、虐待などを防げるようになった。

  • そろそろ死ぬと思えば、別れと感謝は死ぬ前になんどでも言っておけばよい。一人で死んでも、家族への連絡はあとからでも十分だ。

  • 70年代には日本はOECD諸国にうちトップとボトムの所得格差がスウェーデンに次いで下から2番目に小さい国だったが、ネオリベ改革により2010年代に入って、アメリカに次いで大きく社会になった。

 

「これからのフェミニズム」 略

 

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草笛光子『きれいに生きましょうね』を読む

2024年10月03日 | 読書2

 

草笛光子著『きれいに生きましょうね 90歳のお茶飲み話』(2024年5月30日文藝春秋発行)を読んだ。

 

文藝春秋BOOKSの紹介

今年で芸能生活75年目となる草笛光子さん。

……

本書は、その草笛さんが、3年あまりにわたって「週刊文春」に連載したエッセイをまとめたもの。
女優として出演した舞台や映画について、また森繁久彌、三木のり平、勝新太郎、高峰秀子、市川崑といった往年のスターや映画監督などとの思い出を振り返るとともに、日頃の生活や食事、健康法、服装やオシャレなど、さらには老いてゆく日々に思うこと、感じることについて触れています。

 

マネージャーをしていた母が言った。

「光子ちゃん、私たちはきれいに生きましょうね」
何があろうと、嘘をついたり、他人を押しのけたりするのはやめましょう。卑怯な仕打ちや理不尽な目に遭っても、そこに塗(まみ)れることなく毅然としていましょう。

 

年と共に億劫になって、自分を甘やかしてしまいます。それでも身体を鍛えるトレーニングは週1回2時間、自宅にパーソナルトレーナーに来てもらって運動しています。

 

草笛さんは、高峰三枝子、朝倉摂、吾妻徳穂、兼高かおるの死化粧をした。

問題は、私が死んだときです。誰に相談しても私より化粧が上手な人はいないというから、仕方がない。「もうすぐご臨終です」と告げられたら、自分でお化粧をしてから死ぬしかありませんね。

 

松竹歌劇団に入るためのステップである松竹音楽舞踏学校の60倍の競争率を勝ち抜いて合格した。入学式で宣誓文を読んだのが有名な画家の娘だと知り、「よし、卒業するときは、私が一番になってみせる!」と雑草の負けん気に火が付いた。卒業するときは1番になっていた。

 

 

本書は「週刊文春」2021年3月11日号~2024年3月21日号掲載の「きれいに生きましょうね」に加筆修正したもの。

 

 

私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め、 最大は五つ星)

 

多くの有名な俳優、監督などとの思い出話が次々に出てくるので楽しく、スイスイと気楽に読める。

 

草笛さんはのんびり、ゆったりした雰囲気があるのに、本書を読むとかなりな負けず嫌いだ。そうでなければ、長年、競争が厳しい業界でトップを走り続けていなかっただろう。

また、舞台での芝居の仕事は、体力勝負でもあり、この本では自分は怠け者であるかのように語っているが、重ねた歳に適した節制や運動を怠っていない。
さらに、監督、演出家などに可愛がられて良かったなどと述べているが、人間関係に賢く配慮するなど頭も良いのだろう。

さらにさらに、常に新しいことにチャレンジし続けていることが若さの秘訣なのだろう。

私も、厳しい芸能人の世界に入る可能性が、もともとなくて良かった。

 

 

草笛光子(くさぶえ・みつこ)

1933(昭和8)年生まれ、横浜市出身。

1950年松竹歌劇団に入団。
1953年「純潔革命」で映画デビュー。
主な出演映画に「社長シリーズ」『それから』『犬神家の一族』『沈まぬ太陽』『武士の家計簿』など。

2016年のNHK大河ドラマ『真田丸』では真田信繁の祖母役を務めた。

日本ミュージカル界の草分け的存在で「ラ・マンチャの男」「シカゴ」などの日本初演に参加。

舞台・映画・テレビと幅広く活躍し、芸術祭賞、紀伊國屋演劇賞個人賞、毎日芸術賞、日本アカデミー賞助演女優賞など受賞多数。

1999年に紫綬褒章、2005年に旭日小綬章を受章。

著書は、1992年『光子の扉を開けて』、2012年初の自伝『いつも私で生きていく』、2018年『草笛光子のクロ―ゼット』、2023年『草笛光子90歳のクロ―ゼット』
2024年、本書『きれいに生きましょうね

2024年6月21日、90歳の草笛光⼦さんが100歳の主⼈公・作家 佐藤愛⼦を演じる『九⼗歳。何がめでたい』が全国公開。

 

 

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内田舞、浜田宏一『うつを生きる』を読む

2024年09月25日 | 読書2

 

内田舞、浜田宏一著『うつを生きる 精神科医と患者の対話』(文春新書1463、2024年7月20日文藝春秋発行)を読んだ。

 

表紙裏にはこうある。

アベノミクスのブレーンとして知られる経済学者の浜田宏一氏。その活躍の裏側で長らく躁うつ病に苦しんできた。さらに回復の途上、実の息子を自死で亡くす。人生とは何か。ともにアメリカで活躍する小児精神科医の内田舞氏を聞き手に波乱に満ちた半生を語る。

 

「文藝春秋BOOKS」の本書の紹介に、【5分で聴く♪文春新書】内田舞&浜田宏一著『う… がある。

 

 

浜田さんは、すらすらと勉強していたのが、東大に入って、極めて優れた人が現れて戸惑って、「自分はノイローゼだ」と言ったことを覚えている。うつ症状の発端は、このあたりかもしれない。

 

浜田さんは医者を変え、薬を変え、認知行動療法も受けたがうつは改善しなかった。入院中に、医師から問われ、落ち込む前に攻撃的になったことを思い出して伝えると、躁うつ病のうつ状態にも効くリチウムを処方された。
飲んだ翌日から「何かいい方向にむかっている」と確信できた。以後、30年間うち病の再発が心配になったことはまずなくなった。

 

 

私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで、最大は五つ星)

 

浜田宏一という有名な学者の話ではあるが、ひとりの躁うつ病患者の、病の発端、様々な治療課程、改善後といった詳細な経緯、良かったこと、悪かったことなどが詳細に語られるのは凡人の私にも参考になる。

 

浜田さんも、医者の内田さんも、超エリートではあるが、極めてアメリカ流に率直に話し、難しい話も要領よくやさしく話してくれる。

 

アベノミクスを提唱者の一人なので仕方ないのだが、浜田さんは、安倍さんの経済政策の欠点に触れてはいるが、肯定する部分が多く、読み飛ばした。

 

 

内田舞(うちだ・まい)

小児精神科医、ハーバード大学医学部准教授、マサチューセッツ総合病院小児うつ病センター長、3児の母。

2007年北海道大学医学部卒、2011年イェール大学精神科研修修了、2013年ハーバード大学・マサチューセッツ総合病院小児精神科研修修了。日本の医学部卒業者として史上最年少の米国臨床医。

著書に『ソーシャルジャスティス 小児精神科医、社会を診る 』(文春新書)、『REAPPRAISAL 最先端脳科学が導く不安や恐怖を和らげる方法』(実業之日本社)、『まいにちメンタル危機の処方箋』(大和書房)。

 

浜田宏一(はまだ・こういち)

1936年生まれ。アベノミクスのブレーン。元内閣官房参与、イェール大学タンテックス名誉教授、東京大学名誉教授。

専攻は国際金融論、ゲーム理論。

主な著作に『金融政策と銀行行動』(共著、東洋経済新報社)、『国際金融の政治経済学』(創文社)、『エール大学の書斎から』(NTT出版)、『アメリカは日本経済の復活を知っている』『21世紀の経済政策』(ともに講談社)。

 

 

メモ

 

  • うつは患者のエネルギーが回復する治りかけが最も自殺のリスクが高く、危ないから油断してはならない。
  • 「希死念慮」:自殺妄想というと、非現実的なことを考えているようにとられてしまう。
    ただ死にたいと言う考えだけでなく、その状態から救ってくれる人のあらわれることを実は願ってもいる複雑な状態だった。
  • 自殺衝動があるときには、地に足がついている感じをもってみること(grounded)。まずは屋外に一歩出て日光を浴びたり、風を感じて見たり、シャワーを浴びたり、ランニングをしてふるい落とす。

 

 

  • 評価には、自分自身が納得できるか、生き甲斐を感じられるか、と言う「内的評価」と、成績や賞や人からの注目といった外からの「外的評価」がある。
    患者は「内的評価」を育てることが大切。自分が何をしたか、自分が誰であるか、また自分の価値というのは誰かとの比較や評価で変わるものではない。
  • ネガティブな感情を自分がなぜ抱いているのかがはっきりすれば、その感情が負担にならなくなることもある。感情やその背景にむきあることで、気分を変えようとする、このプロセスが認知行動療法です。
  • ベッドに入りすぐ寝られるが、夜中に目が覚めてしまいいろいろ考え始めてしまう。そんなときは、オーディオブックや音楽を聴いて一箇所にアテンションをかけると寝られる。どうしてもと言う時は薬を飲むのも良い。毎昼食後、1時間前後の昼寝を眠れても眠れなくてもするのも良い。

 

 

  • うつ病、躁うつ病、不安障害、ADHD、自閉症スペクトラムなども遺伝する。ただし、親が躁うつ病である場合でも子どもに躁うつ傾向の症状があるのはわずか10%ぐらいだと言われている。
  • インポスター impostor :本当の自分ではない他の誰か偽物を演じている、ペテン師といった意味。他人が思う自分と自分自身の能力が一致していないと不安を覚える症状を表す。
  • アメリカ人は褒める部分を見つけてそこを的確に褒める
  • うつになっても、IQの意味での知能は落ちないが、情報処理能力(実行機能、遂行機能)やそのスピードは影響を受ける。

 

 

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森浩美の略歴と既読本リスト

2024年09月20日 | 読書2

 

森浩美(もり・ひろみ)

放送作家を経て、1983年より作詞家。男性。

現在までの作品総数は700曲を超え、荻野目洋子「DanceBeatは夜明けまで」、田原俊彦「抱きしめてTONIGHT」、森川由香里{SHOWME]、スマップ「青いイナズマ」「SHAKE」「ダイナマイト」、KinkiKids「愛されるより愛したい」などの数々のヒット作を手がける。

2006年、初の短編小説集『家族の言い訳』を発表。

その他、掌編小説集『推定恋愛』『推定恋愛twoーyear』『家族の見える場所』『こちらの事情』、『家族のかたち』、長編小説『夏を拾いに』など。

近年は「家族」シリーズを軸にした朗読劇「家族草子」を主宰し、日本各地で公演を行っている

 

 

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森浩美『家族のかたち』を読む

2024年09月19日 | 読書2

 

森浩美著『家族のかたち』(双葉文庫も12-11、2023年9月16日双葉社発行)を読んだ。

 

裏表紙にはこうある。

家族とは、自然に「ある」ものではなく、「なる」ものではないか。人間の一人一人が持つ希望や悩み。そこには、家族の数だけドラマがあり、笑いもあれば涙もある―。一貫して「家族」のあり方を描いてきた著者の作品から、選び抜かれた7編を収録。ときに切なく、ときにあたたかく。多くの読者の涙を誘った「家族」シリーズのベスト版。

 

シリーズ累計55万部を突破した著者の「家族」シリーズから、著者が主宰する朗読劇で上演される作品をセレクト。家族がテーマの7編の泣かせる短編集。

 

 

底本:『家族の言い訳』、『家族の分け前』、『小さな理由』、『家族の見える場所』、すべて双葉文庫

 

森浩美の略歴と既読本リスト(明日UPします)

 

私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで、最大は五つ星)

 

泣かせの伝統芸。子供を出汁にして、あざといと反発しながらウルウルするお爺さん。
とは言ったが、既読本(『家族の言い訳』、『家族の見える場所』)と同じ話が4篇もあると、さすがに三つ星。

ごちそうさまでした。

 

 

以下、ネタバラぎみのメモ。

 

「ホタルの熱」(『家族の言い訳』より)

夫が失踪し、お金もなく、追い詰められた和香子と6歳の息子・駿。体が弱い駿は、この日も旅の途中で発熱してしまう。困る親の姿を見続けた駿は「ママ、ごめんね」と繰り返す。覚悟を決めて電車に乗ったはずなのに、……どうせもっと“遠い場所”へ連れて行ってしまうつもりだったのに……。
親切な民宿の女将さんに助けられ、布団に寝かされた駿は和香子にしがみついた。

身体の弱い子供に、「ボクさ、……今度……生まれてくるときは元気な子に生まれてくるから……そうしたらまた……ママがボクを産んでくれる?」と言われたら、貴女はどうする?

 

「ママ、みーつけた」(「家族の分け前」より)

子供が巣立った夫婦だけの家に姪から、「公子おばちゃん、渉をお願いします。明日香」と手紙が来て、鍵と地図が同封されていた。地図の家に行くと、渉という男の子がいて、ママはいるけど、かくれんぼしているんだという。

公子は「ひとりぼっちでかくれんぼしていたのはこの娘だったのかもしれない。誰かに捜してほしいとずっと願っていたのではないのか」と思う。

 

「渡り廊下の向こう」(「小さな理由」より)

「ねぇパパ、コンサートに行ってもいーい?」と母親に反対された高校生の娘が甘えてくる。

田舎町で中学のときに好きになった川村とコンサートに行ったことを思い出した。

 

「いちばん新しい思い出」(「小さな理由」より)

15年以上会っていない娘から突然電話があった。再婚した元妻が娘と会わせようとしなかったのだ。娘は結婚式に……。

 

「後出しジャンケン」(『家族の見える場所』より)

母を事故で亡くした姉妹は父がカタールに滞在せざるを得ず、伯父夫婦に預けられ、苛められる。25歳の妹は結婚で別居する前の晩、小言は言っても肝心なことは言わない6歳上の姉に、けじめをつける。

 

「イブのクレヨン」(『家族の言い訳』より)

正洋は5歳の誕生日でクリスマスに母・冨美子にクレヨンを買ってもらい、母の似顔絵ばかり毎日描いていた。祖父母の家に行って、朝、目が覚めると母はいなくなっていて、大切なクレヨンも行方不明になった。母はそれ以来音信不通だった。今はイラストライターをしながら、妻・里香子の連れ子のエリカと仲良く暮らしている。今年のイブのプレゼントの包装紙の中からクレヨンの箱が現れた瞬間、手だけでなく身体からすべての動きが失われた。……。

 

「最後のお便り」(『家族の見える場所』より)

入社30年、TVからラジオへと流れて来たベテランアナウンサー寺田武は、地味な番組だが「こころの焚火」を4年7ヶ月担当してきた。最後の放送の開始前、入院中の母が危篤だと電話が入る。武は子どもの頃から飽き性で、母には「お前は物事を全うしたことがない」とよく叱られた。
痩せて節くれだった指に触れる。まだ温もりがある。きっと魂はまだ近くにいるのだ。窓の外に目を向けると、何かの鉄塔の先端に光が点滅していた。まるでオンエアーの赤いランプが点いているようだ。「母さん、いいかい…」私はベッドに上体を載せると、母の耳元に口を近づけた。「それでは、最後のお便りを紹介しましょう。・・・」

 

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森浩美『こちらの事情』を読む

2024年09月17日 | 読書2

 

森浩美著『こちらの事情』(双葉文庫、も12-02、2009年9月13日双葉社発行)を読んだ。

 

裏表紙にはこうある。

愛の消えた生活、ままならぬ人生……でも、人は努力する。そこに、ドラマが生まれる。「どの物語にも最後は“光”を残した。“救い”と言い換えてもいい」(著者あとがきより)。
『晴天の万国旗』は数々の試験問題に、そして『荷物の順番』『短い通知表』『福は内』はラジオドラマの原作に選ばれた、珠玉の短編集。
「人生捨てたもんじゃない」――平凡かつ楽ではない毎日の中に希望を見いだす、真正面からの家族小説です。

 

見返しには、

「こちらの事情を口にするとき

 それは身勝手な言い分になってしまうかもしれない

 でも察してほしいときがある」

 

 

初出:「小説推理」2006年7月号~2007年2月号。2007年4月、双葉社よりハードカバーで刊行。

 

 

私の評価としては、★★★★★(五つ星:読むべき、 最大は五つ星)

 

ひねくれているくせに、根が単純で、最近は何見てもほろりとしてしまうお爺さんは五つ星。

タモリと用水がラジオで、「年取ると涙もろくなるよね」と話していた。「地生えの松、あれは泣けるね!」「泣ける、泣ける。けなげだよね!」「自分の枝を持ち上げられなくなって、棒で支えてもらっても、それでも必死に枝を伸ばしているんだからね」。あのふざけたタモリと用水だからこそ、笑えた。

 

まあ、試しに読んでください、森浩美(男性、放送作家、作詞家)の家族物。

森浩美の略歴と既読本リスト (9月20日にUPします)

 

以下、私のためのメモ(ネタバレ注意

 

泣かせどころを心得た手練れの森浩美。あれこれ思い出してほろりとなるようになってしまったお爺さんは、概要を2行づつ書くつもりがつい長くなってしまったので、内容紹介はメモとして最後に回した。

 

「晴天の万国旗」

息子の光平はクラス対抗リレーの選手に選ばれていたのに「オレ、リレーに選手、降りようかな……」とこぼす。母の美代は「お母さん、昔さぁ……逃げちゃおうかなって思ったことがあるんだ」と、昔話を始めた。
美代のライバルは、意地悪な大家の娘・晶子だったが、練習で転んだのを美代のせいにし、親とともに美代の家に怒鳴り込んできた。借家を追い出されることを恐れた美代は、運動会の当日……。

 

「葡萄の木」

小3の遼太郎のお気に入りは種無しピオーネで、一家4人で勝沼に葡萄狩りに行くことになった。前日、仕事で何かあった夫がイライラして帰って来た。食事中に掛かってきたケータイに返信メールを打ち、夫に注意されても挑むように止めない娘・夕夏に怒って夫はケイタイを壊してしまった。

それでも葡萄狩りに行って、息子は1本の木の、隣り合った房ばかりにハサミを入れる。「この葡萄はさぁ、たぶん家族なんだよ。だから別々にしたら可哀想じゃん」。

 

「甘噛み」

メグという名の犬を飼う子供のいない夫婦。妻と、どうしても一緒に住まない妻の母がメグを連れて旅行に行く。最初の結婚で子ができないようにされた母は再婚し、姉の子を養女にして育てたのだった。妻はメグには子供を産ませたい。だから、母に一緒に住んで欲しいと頼む。

 

「短い通知表」

家族4人で互いに通知表を作って、大晦日に交換し合っていたが、妻・潤子が今年の春、突然亡くなってしまった。妻の部屋を整理していると、“明日やること帳”と書いたノートが出てきた。
中に“頼んだケーキ買い忘れ、しかも開き直る、ー10点”、“検診に行けと言われる。気遣いあり、+10点”などと書いてあった。

 

「福は内」

出張の帰りに正月にも帰らなかった実家に寄り道した。何も話さなかったのだが、父も母も弟も、お金に困っていると察していたのではないだろうか。帰宅後しばらくしてから母から荷物が届いた。

 

「靴ひもの結び方」

大型開発の実務責任者になって住民説明会が紛糾し、暗礁に乗り上げて赤木は苦しい立場になっていた。娘・紗香の弟が無事産まれることができず、そのことを抱え続けていた赤木は妻とも娘ともうまくいかなくなっていた。ふと見かけた一人ぼっちの足の悪い周くんに、妻や娘に隠れて、野球を熱心に教えることになる。

 

「妻のパジャマ」

私は子会社に出向で仕事はヒマになり、娘は結婚し、息子は京都で就職した。そして、もう自由になりたいと妻・紀代子から離婚届けを渡された。翌朝、紀代子はぎっくり腰になり、入院した。

 

「荷物の順番」

妻と5歳の娘を連れて、15年振りの生まれ故郷のローカル線の終着駅へ。旭川の実家への予定を変更したので妻のご機嫌は斜め。兄弟いずれも時間が取れなくて、おふくろを施設に入れるのに末っ子の私が駆り出されたのだ。
このまま母と一緒に東京へ帰るかと心が迷う私に母は言う。
「人は生きていれば色んなことがある。でも、人の手はふたつしかないからね」「…荷物を持つにも順番があるんだ。…欲張ればそれは“お荷物”になるだけ。お前がちゃんと抱えてあげなきゃならないのは家族と仕事。親に育ててもらったら、今度は子供を育てる。世の中は順番なんだから。それが一番の親孝行になるんだから。…」

「おふくろは、お荷物のはずがない。おふくろはおふくろだ……」

 

 

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佐藤文隆『物理学の世紀』を読む

2024年09月07日 | 読書2

 

佐藤文隆著『物理学の世紀』(講談社学術文庫2819、2024年5月14日講談社発行)を読んだ。

 

講談社BOOK倶楽部の内容紹介

「物理帝国」の栄光と黄昏
アインシュタインの相対性理論、量子力学、そして原爆を生んだオッペンハイマーのマンハッタン計画から、コンピュータ、ニュートリノへ――。物理学が科学のみならず知・経済・社会のあらゆるシーンにおいて「王者」として君臨した時代を、自身も一線の物理学者として活躍してきた著者がダイナミックに活写。
「黄昏」も囁かれる時代の転換期、「ものの見方」を探究する物理学の現状とあるべき未来をも示す、無二の証言にして提言の書!

 

アインシュタインの相対論は時間と空間の概念を一変させ、ミクロな世界を解明したハイゼンベルグらの量子力学は、見えている世界の常識を覆す新たな地平を拓いていった。この20世紀の物理学の驚異的な発展は、人類社会に絶大な影響を与え、物理学は、20世紀の知の王者として君臨し、原爆や、半導体、コンピュータを生み出し、諸々の分野を進展させてきたと言える。

 

21世紀はバイオなど「生物学の時代」と言われ、物理学の黄昏がささやかれる時代の転換期に、物理学の進展の歴史を振り返り、現状を確認し、あるべき未来を探す。

 

 

本書の原本『物理学の世紀――アインシュタインの夢は報われるか』は、1999年に集英社新書から刊行された。

本書執筆から四半世紀が経過した2024年2月、「文庫版へのあとがき」が追加されている。

 

 

私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで、最大は五つ星)

 

日本を代表する宇宙物理学者が書いた、大学での物理を真面目に勉強したか、少なくとも概説本をいろいろ読んで、おおよそに物理について知識のある人が、20世紀の物理の流れを把握するための本だ。

 

『物理学の世紀」ともいうべき20世紀の物理学を、駆け足で全て網羅し、説明している。それぞれの理論の基本のエッセンスだけは簡潔に説明しているので、詳しく知っている人は、それぞれの分野がどのように発展し、影響を与え合ってきたかを俯瞰的に把握できるだろう。
中途半端の知識があるだけの私は、難しい所はわかったつもりになって読み飛ばして、流れだけを汲み取るようにして読んだ。それでも、成る程と面白かった。

 

物理研究の成果がどのように影響しあい、積み重なって発展していったか、停滞し、そして爆発的に進展していったのかが良く分かる。

 

 

佐藤文隆(さとう・ふみたか)

1938年,山形県生まれ。1960年京都大学理学部卒業,1964年同大学院中退。1974―2001年京都大学教授,基礎物理学研究所長,理学部長を歴任。2001―2014年甲南大学教授。

京都大学名誉教授。専攻は一般相対論,宇宙物理学。

トミマツ・サトウ解の発見などの業績を上げるとともに,啓蒙書の執筆も多数手がける。

著書に『アインシュタインが考えたこと』『宇宙論への招待』『科学と幸福』『現代の宇宙像』『量子力学のイデオロギー』『職業としての科学』『佐藤文隆先生の量子論』『量子力学の100年』など。

 

 

メモ

核磁気共鳴は、核への恐怖を取り除くため「核」という言葉をわざと避けて、磁気共鳴イメージング(MRI magnetic resonance imaging)と名付けられた。

 

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新川帆立『帆立の詫び状 おっとっと編』を読む

2024年09月05日 | 読書2

 

新川帆立著『帆立の詫び状 おっとっと編』(幻冬舎文庫、し50-2、2024年6月10日幻冬舎発行)を読んだ。

 

裏表紙の作品紹介

目が覚めると、身体に異変があった。やる気がみじんも湧いてこない。3年で10冊の本を刊行してきた著者は、ある日突然頑張れなくなった。ケンブリッジ、パリ、フィレンツェ、ローマ。旅しては書き、書いては旅する日々の中、気づくと活力はゼロに。文芸業界、執筆スタイル、己の脳に至るまで様々な分析を試み辿り着いた現在地。夫の解説付。

 

帆立の詫び状 てんやわんや編』に続く新川帆立のエッセイ集第二弾。

なんで詫び状かというと、締め切りを破りまくっていながら、エッセイを理由に遊び回っているから。

 

第一章は、旦那さんについてロンドンに引っ越した帆立さんの「満喫! ヨーロッパ滞在篇」

第二章は、帆立さんが偏愛している腕時計などの「奔走! 偏愛編」

第三章は、帆立さんの小説を究めようとする「迷走! 小説修行篇」

あとがきは、帆立さんの素顔を紹介する旦那さんによる「夫のあとがき」

 

巻頭の8頁は、あくまで取材だと強弁するヨーロッパを満喫する帆立さんの写真など。

 

第一章「満喫! ヨーロッパ滞在篇」

ケンブリッジのフォーマル・ディナー/初めてのオペラ/超高速な英国式回転寿司/‥‥

第二章「奔走! 偏愛編」
バッグ愛好家の腕時計探し(数百万円の時計を購入)/愛しのトマトパスタ

/ジェンダーをめぐる冒険(冒険ができるのは男性の中でもごく特殊な男性だけなのに、冒険は男のものというのはおかしい。運動音痴の帆立さんは作家・今野敏主宰の空手塾に参加し、ハマってしまった)

 

第三章「迷走! 小説修行篇」

私の脳のつくりについて(事務作業・スケジューリングが苦手な帆立さんはADHD(注意欠如・多動性障害))だと分かり、薬によりかなり改善した/‥‥

 

 

本書は2022年10月~2024年4月、幻冬舎plusで連載したものに、加筆・修正し、副題を付けたもの。

 

 

私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め、 最大は五つ星)

 

帆立さんは、頭がいいし、スポーツ以外は何でもできるが、今はたまたま小説を書いている人と思っていた。しかし、小説のことをとことん考え、文法や小説講座などで学び、当面はとにかく量を書くことを課し、力をつけたいと、真剣に努力をしていることが分かった。

 

また、事務作業やスケジュール管理に抜けが多くて悩んでいたが、学校の成績は良いし、人当たりも良いので、まったくADHDとは思ってみなかった。それとわかってスッキリし、納得できたという。

 

様々な事に対して、真正面から取り組んでいく。興味を持ったら学校や講座でちゃんと学ぼうとする向学心とフットワークの軽さが素晴らしい。バッグや腕時計にかける情熱には畏れ入る。ここでも徹底した情報収集。

 

アメリカのフォトグラファーに頼んだ著者近影が笑える。日本の女性を対象にして、やさしさいっぱいに撮ってくださいと頼んだのに。これ以上ない巨大な花飾りなどド派手な演出、自信満々のポーズ。この写真が著者近影だったら、見事に、めっちゃ反感かうで!

 

 

新川帆立(しんかわ・ほたて)の略歴と既読本

 

 

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