新川帆立著『帆立の詫び状 おっとっと編』(幻冬舎文庫、し50-2、2024年6月10日幻冬舎発行)を読んだ。
裏表紙の作品紹介
目が覚めると、身体に異変があった。やる気がみじんも湧いてこない。3年で10冊の本を刊行してきた著者は、ある日突然頑張れなくなった。ケンブリッジ、パリ、フィレンツェ、ローマ。旅しては書き、書いては旅する日々の中、気づくと活力はゼロに。文芸業界、執筆スタイル、己の脳に至るまで様々な分析を試み辿り着いた現在地。夫の解説付。
『帆立の詫び状 てんやわんや編』に続く新川帆立のエッセイ集第二弾。
なんで詫び状かというと、締め切りを破りまくっていながら、エッセイを理由に遊び回っているから。
第一章は、旦那さんについてロンドンに引っ越した帆立さんの「満喫! ヨーロッパ滞在篇」
第二章は、帆立さんが偏愛している腕時計などの「奔走! 偏愛編」
第三章は、帆立さんの小説を究めようとする「迷走! 小説修行篇」
あとがきは、帆立さんの素顔を紹介する旦那さんによる「夫のあとがき」
巻頭の8頁は、あくまで取材だと強弁するヨーロッパを満喫する帆立さんの写真など。
第一章「満喫! ヨーロッパ滞在篇」。
ケンブリッジのフォーマル・ディナー/初めてのオペラ/超高速な英国式回転寿司/‥‥
第二章「奔走! 偏愛編」
バッグ愛好家の腕時計探し(数百万円の時計を購入)/愛しのトマトパスタ
/ジェンダーをめぐる冒険(冒険ができるのは男性の中でもごく特殊な男性だけなのに、冒険は男のものというのはおかしい。運動音痴の帆立さんは作家・今野敏主宰の空手塾に参加し、ハマってしまった)
第三章「迷走! 小説修行篇」
私の脳のつくりについて(事務作業・スケジューリングが苦手な帆立さんはADHD(注意欠如・多動性障害))だと分かり、薬によりかなり改善した/‥‥
本書は2022年10月~2024年4月、幻冬舎plusで連載したものに、加筆・修正し、副題を付けたもの。
私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め、 最大は五つ星)
帆立さんは、頭がいいし、スポーツ以外は何でもできるが、今はたまたま小説を書いている人と思っていた。しかし、小説のことをとことん考え、文法や小説講座などで学び、当面はとにかく量を書くことを課し、力をつけたいと、真剣に努力をしていることが分かった。
また、事務作業やスケジュール管理に抜けが多くて悩んでいたが、学校の成績は良いし、人当たりも良いので、まったくADHDとは思ってみなかった。それとわかってスッキリし、納得できたという。
様々な事に対して、真正面から取り組んでいく。興味を持ったら学校や講座でちゃんと学ぼうとする向学心とフットワークの軽さが素晴らしい。バッグや腕時計にかける情熱には畏れ入る。ここでも徹底した情報収集。
アメリカのフォトグラファーに頼んだ著者近影が笑える。日本の女性を対象にして、やさしさいっぱいに撮ってくださいと頼んだのに。これ以上ない巨大な花飾りなどド派手な演出、自信満々のポーズ。この写真が著者近影だったら、見事に、めっちゃ反感かうで!