半世紀ほど前の東京でも畑がまだ残っていたが、私には畑仕事の経験はない。先に述べたように結婚してまもなく、ベランダで菊作りして植物を育てる楽しみと、土いじりが癒しになることを知った。
もう30年も前のことだが、東京から三浦半島の先っぽの方に引越したとき、農家で一坪農園を貸していることを知った。同じく東京育ちの奥さんに相談すると、一度畑仕事をしてみたいと言う。さっそく、一区画借りて、農家の人に教わりながら、トマト、キュウリ、ナスなど野菜つくりを始めた。
初回の種まき、苗植えのときは農家の人が要領を教えてくれた。堆肥と化成肥料をバンバン撒くので驚いた。畑の土も肥えているので初年度は立派な収穫があった。2年目は畑に通う回数が減って、多少出来が悪くなり、3年目は月一回程度になって肝心なときに苗を植えられなかったり、収穫の時期を逃したりした。なにしろ、場所が自宅から遠く、毎土日にきちんと通うのが大変で、3年であきらめた。
ただ、子どもはなかなか思うようにならないが、植物は手をかければかけるだけ、それに応えてくれることは実感した。
近くに自宅を建てたときに、長年の夢を実現するために、狭い庭いっぱいに2m*10mほどの畑を作った。さえぎるものない南向き土地にコンクリートで囲いをつくり、中に畑用の土を入れてもらった。これで毎日、たとえ夜でも、野菜の面倒が見られる。狭いながらも楽しい畑である。
奥さんにも、「これからは野菜が欲しいときは、庭に出れば新鮮そのものの野菜が手に入るぞ」と大見得をきった。