hiyamizu's blog

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林真理子「下流の宴」を読む

2010年08月14日 | 読書2

林真理子著「下流の宴(うたげ)」2010年3月毎日新聞社発行、を読んだ。

福原由美子は、若くして亡くなった父が医者で、自分も地元の国立大学を出て、わが家は品の良い中流家庭で、けして下流ではないと思っていた。
娘の可奈は見栄つぱりで、お嬢様大学を出てエリートとの結婚を目指し計算高く行動する。
悩みの種は息子の翔で、高校を中退し、フリーターで、上昇志向ゼロのプータロウ。由美子は表面的に理解を示し、あの手この手でともかく大学に行かせようとするが、まったくヤル気がない。そんな翔が突然「結婚する」と言う。相手は沖縄の離島出身のフリーター宮城珠緒だ。

中学入学時の高価なカバンを買いたいという珠緒に、その母が言う。「たった3年使うだけなのに値段は倍する。そんなことにこだわると、どうでもいい違いのために、倍働かなきゃいけない生き方になるよ」
沖縄の宮城家は、福原家とはまったく価値観が違う。

前半は由美子の学歴偏重、“下流”の人への差別感丸出しの言動のオンパレード。そして、娘の加奈の自分の限界をしっかり知った上での、ちゃっかりした上昇計画のいやらしさ。おもわず、あのセレブ生活を誇る林さんの本音だなどと思ってしまうほど、見事に反感を買うように書けている。

後半、珠緒が医大受験を目指すという現実にはありそうもない話になる。そこで、「6x2+11xy+4」の因数分解、SVOCだの、前置詞+関係詞など、受験というより高校1年?程度の勉強の話が出てきて、笑える。



そうそうと思った点を2つだけ。

・・・同級生と結ばれた女というのは、すぐに“女”を怠けるようだ。若い時からの仲間で、お互いを知り抜いているという安心感からか、身のまわりをぞんざいにしている女のなんと多いことだろう。

「あなたっていつも、他人ごとのように言うのね」
こういう時の女の習性として、過去に記録されていることが、パソコンなみの速さで由美子の脳に甦る。しかも十倍の恨みと怒りを帯びて。
「翔のときもそうだったわ。あの子が・・・」



謝辞に、林さんのお友達で精神科医の和田秀樹さんに受験のアドバイスをもらったこと、同じく作曲家の三枝成彰さんに沖縄のことを聞いたことに感謝している。そして、実際に受験通信教育を必死に受けた毎日新聞社記者の方にお礼を書いている。なにかで読んだ(ブログ?)のだが、この通信教育は最初、林さんが受けたのだが、数学?に歯が立たず、担当の方に押し付けたと記憶している。有名作家のお世話もつらい。

初出:毎日新聞連載 2009年3月1日~12月31日



私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで)

426ページもある長編だが、文章は平易だし、飽きさせない話題や、反感を刺激する差別的言動がちりばめなれ、すらすら読める。

福原家の、母由美子、翔や可奈の性格、行動は、極端に書かれていて、いささか漫画チックで、さめて見てしまう。
共感するとすれば、翔だろうか。翔は言う。「オレ、頑張っている人たち見て、すごい、とは思うけど、憧れたり、そうなりたいって思ったことはないワケ。」「努力する人って、重苦しいんだ。」
こんな言葉に、「俺にもそんな傾向あるな」と思ってしまう私がなさけない。「頑張る」という言葉が昔から嫌いで、珠緒みたいに何かに一生懸命になったことがないまま一生を終わりそうなのだ。


林真理子の略歴と既読本リスト









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