磯崎憲一郎著『終の住処』2009年7月、新潮社発行、を読んだ。
芥川賞を受賞した「終の住処」と書き下ろしの「ペナント」が収められている。
「終の住処」
お互い、別の相手との20代の長く続いた恋愛に敗れた後、30過ぎてから出逢った男女が結婚する。妻は常に不機嫌で、楽しいことは何も無い夫婦の生活を描く。子どもが産まれ、遊園地へ行って、なぜか突然、妻は11年間何も話さなくなる。彼は家で食事しなくなる。
男はしずかに淡々と語っていくが、妻自身の思いはまったく描かれず、不気味で謎の存在のままだ。主な舞台は家庭なのに、いっさい詳細は描かれない。
男の会社は製薬会社で、彼が発案したコンタクトレンズ使用者に絞った目薬が大ヒットする。メインテーマに無関係なこの話だけがやけに具体的でアンバランスだ。会社では活躍する男性が家庭では無力な典型なのだろうか。
「ペナント」
ペナントが壁一面に貼られた部屋に忍びこむ少年の話と、まったく関係がないと思われるボタンをなくした男が探し歩く話が続く。
初出:「終の住処」新潮2009年6月号、「ペナント」書き下ろし
磯崎憲一郎は、1965年千葉県我孫子市生れ。早稲田大学商学部卒。
2007年「肝心の子供」で文藝賞受賞、
2008年「眼と太陽」で芥川賞候補、
2009年本書「終の住処」で芥川賞受賞。
三井物産の人事総務部部長代理。
私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで)
芥川賞を受賞するくらいだから面白くない小説だろうと思っていたが、予想を裏切らなかった。当然、ストーリーに意味はなく、主人公の感じる情景の描写には、なるほどと思う上手さがある。物言わぬ奥さんが不気味で、どこにでもある家庭を誇張してうまく表現している。
よく理解できないが、著者が描きたいのは“時間”だそうで、芥川賞受賞後のインタビューでこう答えている。
芥川賞を受賞した「終の住処」と書き下ろしの「ペナント」が収められている。
「終の住処」
お互い、別の相手との20代の長く続いた恋愛に敗れた後、30過ぎてから出逢った男女が結婚する。妻は常に不機嫌で、楽しいことは何も無い夫婦の生活を描く。子どもが産まれ、遊園地へ行って、なぜか突然、妻は11年間何も話さなくなる。彼は家で食事しなくなる。
男はしずかに淡々と語っていくが、妻自身の思いはまったく描かれず、不気味で謎の存在のままだ。主な舞台は家庭なのに、いっさい詳細は描かれない。
男の会社は製薬会社で、彼が発案したコンタクトレンズ使用者に絞った目薬が大ヒットする。メインテーマに無関係なこの話だけがやけに具体的でアンバランスだ。会社では活躍する男性が家庭では無力な典型なのだろうか。
「ペナント」
ペナントが壁一面に貼られた部屋に忍びこむ少年の話と、まったく関係がないと思われるボタンをなくした男が探し歩く話が続く。
初出:「終の住処」新潮2009年6月号、「ペナント」書き下ろし
磯崎憲一郎は、1965年千葉県我孫子市生れ。早稲田大学商学部卒。
2007年「肝心の子供」で文藝賞受賞、
2008年「眼と太陽」で芥川賞候補、
2009年本書「終の住処」で芥川賞受賞。
三井物産の人事総務部部長代理。
私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで)
芥川賞を受賞するくらいだから面白くない小説だろうと思っていたが、予想を裏切らなかった。当然、ストーリーに意味はなく、主人公の感じる情景の描写には、なるほどと思う上手さがある。物言わぬ奥さんが不気味で、どこにでもある家庭を誇張してうまく表現している。
よく理解できないが、著者が描きたいのは“時間”だそうで、芥川賞受賞後のインタビューでこう答えている。
デビューの時から小説で何ができるかを考えていて、それは時間を描くことではないかと考えていた。時間というのは、とらえどころがないもの。時計の針が進んだという時間はわかるが、実際に自分たちがその中にいるところの時間は、直線的な時間とは別のところにある。それを言葉で表すとしたら、それが唯一、小説にできることなのではないか。