NHKスペシャル取材班著『老人漂流社会 他人事ではない“老後の現実”』(2013年12月主婦と生活社)を読んだ。
菊池寛賞受賞『無縁社会』から3年後のニッポンはいま―。反響を呼んだNHKスペシャル待望の書籍化!歳をとるのは罪ですか? 高齢者が体調を崩して自宅にいられなくなっても、病院や介護施設は満床で入れない。短期間だけ入れる施設を転々とし、そのうち貯金は底をつき、行きつく先は生活保護。それでも安住の地は簡単には見つからない…。住まいを追われ、“死に場所”を求めて漂流する高齢者が、いまあふれ出している。(「BOOK」データベースより)
豊かとは言えないまでも普通の生活をしていたOさんが、急に奥さんが亡くなり、生きる張り合いを無くし、体が弱り、引きこもりになる。自治体のスタッフから声をかけられても、世話をしてもらうことには抵抗があり、「大丈夫、ちゃんとやっていますよ」と答えてしまう。熱中症で倒れ、入院、寝たきりになり、自宅での生活は困難になる。病院から退院を督促する電話を受けた基幹地域包括支援センター担当者は、身内などの身元保証人がおらず、入所費用の支払いが困難なOさんを、短期でも受け入れてくれる施設探しに苦労する。
親身になる身内がなく、金もない老人が、終の棲家もなく短期宿泊施設や精神病院を転々と漂流する。
「普通に生きてきて、最後、何でこんな人生になったんだろうね・・・」
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「社会に必要とされたい。どんなささいなことでも、必要とされる居場所(=つながり)が欲しい」・・・「迷惑をかけるだけの自分」を受け入れがたく思っているようだった。
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「社会に必要とされたい。どんなささいなことでも、必要とされる居場所(=つながり)が欲しい」・・・「迷惑をかけるだけの自分」を受け入れがたく思っているようだった。
Yさんがいつもベッドの上に大切に置いている一枚の小さなメモ。そこには娘と息子の携帯電話の番号が書かれていた。子供たちを心配させたくない、迷惑をかけたくないと結局電話できなかった。何度も開いたり、たたんだりしてくしゃくしゃになったメモ用紙。脳梗塞で入院している息子、がんで闘病している娘のことが気がかりなのだが。
NHKスペシャル「終の住処はどこに 老人漂流社会」2013年1月20日放送
私の評価としては、★★★★(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)
久しぶりの四つ星だ。五つ星にしたいが、あまりにも悲惨な報告であり、しかも現実なので四つ星にとどめた。
この本は最後に、良心的経営者による高齢者共同住宅「ぽらりす」を紹介して希望をつなごうとしているが,いかにも危く、一般化できると思えない。
序章のタイトル「歳をとることは罪なのか」という問いかけは重い。長年地道に努力し、我慢してきた、真面目な人ほどつらい目に合う。こんな国が「美しい日本」であるわけがない。
資産もあり、年金もたっぷりもらって、余裕のある年寄りも確かにいる。しかし、単身世帯の公的年金受給額が年間100万円未満(月8万3千円)の人は42%。特に都市部ではこの年金だけで終の住処を見つけるのは容易でない。
結局、「金は十分貯めとけ」ということになる。なんたる結論か。
第1章 “終の住処"を選べない時代
第2章 死に場所さえ持てない!
第3章 「漂流死」する高齢者たち
第4章 知られざる「認知症漂流」
第5章 どうすれば老後の安心は得られるのか
第6章 “老人漂流"を食い止めるために