川上広美著『東京日記4 不良になりました』(2014年2月平凡社発行)を読んだ。
『東京日記 卵一個ぶんのお祝い』、『東京日記 卵一個ぶんのお祝い』『東京日記2 ほかに踊りをしらない。』『東京日記3 ナマズの幸運。』に続く日記シリーズ第4弾。
この東京日記は、「WEB平凡」に現在も連載中。
ちょっと不思議だけど、いかにもありそうで、不思議でもないか、という川上ワールドが一杯。
いろんなところに童話風のイラストが挿入されていて、文とともにとぼけた味を出している。描いている門馬則雄さんのホームページもなかなか。noriomonma.com/index1.html
相変わらずご近所ネタがそこかしこに。
菅直人の家の警護SP(首相のときは異常に太ったSPだった)。吉祥寺駅前の三菱東京UFJ銀行(いつも待たされる)。井の頭公園の白鳥のボートの首の部分を外して洗っていた(見てみたい)。
外国に行って、お酒を飲むと、急に外国の言葉を聞き取ったり喋ったりできるようになることがわかった。翌日、同行の日本人が言った。「カワカミさんって、ジェスチャーが上手なんですね。ことにお酒をたくさん飲んだ後では、動きがますますなめらかに」と。
皮膚科でピアスの穴をあけて、こどもに自慢する。こどもは小さな声で、「かあさん、不良になったんだ」とつぶやいた。これが本のタイトルに。
「いれずみ、ことに青いいれずみをしていると、その部分がMRIで熱く焼けてしまうのですよ」と技師の人が教えてくれた。(調べてみると、鉄分を含むいれずみは火傷、変色の可能性があるようだ)
初出:「WEB平凡」2010年5月~2013年3月
私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで)
特に何があるわけでもなく、ホント?というという話がつづく。何かズレた話を読んでいるうちに、のんびりした気持ちになる。現実との乖離ぐあいが最近は小さくなって、日常の中で話が終わるようになってきた。良いような悪いような。
あとがきの最後には、「2014年初春 武蔵野にて」とあり、前作にも「2010年師走 武蔵野にて」、前々作にも「2007年晩秋 武蔵野にて」とあり、杉並区の図書館で借りた本にも、武蔵野市の図書館で借りた本にも、川上の印が。多分寄贈本だろう。
おそば屋の店主が言う。
「そばのつゆなんてものは、ほんのぽっちりつけて一気にすすりこむ、それがそばの食いかたってもんだよ・・・」
これで落語のネタを思い出した。つゆをつけずにそばを食べて、通だと自慢していた人が、死ぬ間際に、一度たっぷりつゆをつけてソバが食べたいと言う。
川上広美は、1958年東京生まれ。
雙葉中高から、お茶ノ水大学理学部生物学科へ。田園調布雙葉中学校に勤務。結婚、専業主婦に。身長176cm。
1994年デビュー作「神様」でパスカル短編文学新人賞、
1996年「蛇を踏む」で芥川賞、
1999年「神様」でドゥマゴ文学賞、紫式部文学賞
2000年「溺レる」で伊藤整文学賞、女流文学賞、
2001年「センセイの鞄」で谷崎潤一郎賞、
2007年『真鶴』で芸術選奨文部科学大臣賞を受賞。
芥川賞、谷崎潤一郎賞、三島由紀夫賞、野間文芸新人賞の選考委員。
その他、『夜の公園』『どこから行っても遠い町』『東京日記2 ほかに踊りをしらない。』『これでよろしくて?』『東京日記3 ナマズの幸運。』『神様2011』『此処彼処』『ニシノユキヒコの恋と冒険』『なめらかで熱くて甘苦しくて』