hiyamizu's blog

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後藤直義・森川潤『アップル帝国の正体』を読む

2014年05月09日 | 読書2

後藤直義・森川潤著『アップル帝国の正体』(2013年7月文藝春秋発行)を読んだ。

アップルは、今や時価総額50兆円、年間売上12兆円、純利益3兆円をほこる巨大メーカーに変貌した。

個性的な言動のジョブズ、美しいデザイン、斬新なアイディアで、多くのファンを持つアップルの企業としての正体は、利益やコストへの偏執狂的なこだわりから、下請けメーカーを冷酷非道に締め上げるブラック企業だ。かつての日本の栄光企業、ソニー、シャープ、ヤマダ電機などがアップルに追い詰められていく姿を明らかにする。

著者は、アップルと取引のある大手企業のビジネスマン・エンジニア、町工場の社長、デザイナーなどの証言から、アップルの獰猛で過酷な支配の実態を明らかにした。

アップルはiPhoneの筐体やボリュームボタンといった、部品ひとつひとつにまで事細かく購買責任者をつけている。部材不足で生産が滞ったらもちろんすぐにクビ。コスト削減の取り組みの結果が出ないだけでも、1年足らずで解雇される可能性が高い。・・・アップルの購買担当者は命懸けでコスト削減を求めてくるのだ。

シャープ亀山工場も今やアップル専用のラインを設けさせられ、納期もコスト削減もアップルの意のままに操られ、しかも次回の取引は保証されず、突然の打ち切りもある。家電量販店の雄、ヤマダ電機も、通信キャリアのソフトバンクも、音楽業界も、アップルに利益をとことん搾り取られている。最先端の技術を持つ町工場も工程をビデオに撮られ、人件費の安い国の企業にとって代わられる。
一般的な家電の流通マージンは、お客に販売する価格の30%ほどが相場だとされている。しかし、「アップルは10~5%未満」のケースすらあるという。そこで、家電量販店側は、・・・高い利益率を誇る周辺機器やアクセサリー類・・・を必死で売らなくてはいけない。


私の評価としては、★★★★(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

さすが週刊誌記者、アップルの下請け企業(シャープ、ソニー、ヤマダ電機など)支配にポイントを絞って明快に書いている。
確かにiPhoneなどあれだけの圧倒的売れ行き、支配力があれば、30%近い売上利益率を確保するために、納入業者に強く当たれるだろう。狭い世界(日本)にとらわれず、共存共栄でなく、搾り取ってからまた次の企業に移るグローバル企業のアップルのやり方は、良し悪しでなく、資本主義の原理なのだ。

現在では、サムスンや中国企業に追い上げられ、これまでの圧勝状況変わりつつある。どの勝利企業も陥るこの危機にアップルがどう対処するか、楽しみだ。


目次
プロローグ アップル帝国と日本の交叉点
第1章 アップルの「ものづくり」支配
第2章 家電量販店がひざまずくアップル
第3章 iPodは日本の音楽を殺したのか?
第4章 iPhone「依存症」携帯キャリアの桎梏
第5章 アップルが生んだ家電の共食い
第6章 アップル神話は永遠なのか
エピローグ アップルは日本を映し出す鏡


後藤直義(ごとう・なおよし)
1981年東京都生まれ。週刊ダイヤモンド記者。
青山学院大学卒、毎日新聞社入社。2010年より週刊ダイヤモンド編集部へ。
家電メーカーなど電機業界を担当。著書に電子書籍『ヤメソニーに訊け!!』

森川潤(もりかわ・じゅん)
1981年ニューヨーク州生まれ。週刊ダイヤモンド記者。
京都大学文学部卒業後、産経新聞入社。2011年より週刊ダイヤモンド編集部へ。
エネルギー業界担当。著書に、電子書籍『誰が音楽を殺したか?』
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